年度末スペシャル!暦に関する知識を紹介! (その2・プルーンどころではありません!) | カタギリノエンレイソウ広報

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こんにちは。カタギリノエンレイソウ広報の管理者です。
本日は年度末スペシャル3月25日の記事に続いて、暦に関するさまざまな知識・情報をお送りいたします。

本日紹介するものは、時間に関する天文学的な知識です。
 

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こんな時期にプルーンがくることなんか!今はそれどころではありません!

時間の定義と歴史
1日を24時に分ける分割は、古代のエジプトで昼と夜をそれぞれ12の時間単位で区切っていたことに由来しています。古代のエジプトでは日の出の瞬間を1日の始まりとし、日没の瞬間を境に1日を昼と夜に分け、それぞれを12の時間単位で区切る不定時法が使われていました (季節によって昼や夜の長さが変動するため、それら時間単位の実際の長さは一定していなかった)。1時=60分、1分=60秒 といった分割は古代のバビロニアで使われていた60進法に由来するもので、実際に、1日の長さそのものを基に順次60分割して得られる単位 (現代の24分、24秒、0.4秒、1/150秒 などに相当)が使用されていた実例があります。

「1日=24時、1時=60分、1分=60秒」という分割は、西紀1000年に、ペルシア人の学者アブー・ライハーン・アル・ビールーニー (Abū Rayhān al-Bīrūnī)によってはじめて施され、新月となる週に、日曜日の正午を基準点とした「日、時、分、秒」、さらに秒より細かな2段階の区分を施しました。西紀1267年には、イギリスの哲学者ロジャー・ベーコン (Roger Bacon)が満月日の正午を基準に同様の区分 (1日を horae (時), minuta (分), secunda (秒), tertia, quarta の5段階に区分)を施しています。

時間の計測については、歴史的に、日時計、水時計、砂時計、機械時計などが使用されていましたが、現在では、原子核が持つ普遍的な現象を利用した原子時計によって精密な時間の測定が行われています。機械時計は11世紀以降に実用化されましたが、初期の機械時計はそれほど正確なものではなく、定期的に時刻の調整をしなければならなかったようです。しかも、近世に至るまでは、機械時計は極めて大型の装置であり、庶民にとっては高価なものとなっていました。近代以後、より正確な機械時計が普及しても、無線やラジオ放送などが普及するまでは、正確な時刻をもとに機械時計の時刻を合わせることも容易な作業ではありませんでした。さらに、精度や携帯性を求めて様々な改良が施され、振り子時計、ぜんまい時計 (クロノメーター)、電気式時計が製作されました。秒表示の正確性は、振り子時計の発明によって日時計による見かけ時間の表示 (視太陽時)から平均太陽時を表すことができるようになったことで向上しました。

原子時計による時間の計測は1950年代に始まり、現在では、実験施設向けの計時装置として普及しています。しかしながら、原子時計は高価で小型化が難しいため、一般向けの実用時計としては主に水晶振動子を使ったクォーツ時計が使われています。最初のクォーツ時計は1927年に作られ、1930年代に実用化され、1960年代以降に一般向けの実用時計として普及しました。原子時計は高精度のクォーツ時計と周波数標準器を組み合わせた構造で、水晶振動子の発振を周波数標準器で常に調整・修正する仕組みによって実現されています。

時間の単位である「」(second, 記号: s)の長さは、古くは1日の長さ (平均太陽日、昼夜の周期)を元に決めていました (1日=24時、1時=60分、1分=60秒)。しかし、地球の自転角速度は絶えず変動するため、時間の長さに関して厳密な定義にはそぐわないものと判断されてしまいました。そこで、地球の自転に依存しない計量単位としての「秒」の定義が1956年に初めて提示され、「1899年12月31日12時 (グリニッジ平均太陽時)における太陽年の長さの 1/31556925.9747 倍」とされました。太陽年とは、歳差により移動する春分点を基準に考えた公転の周期のことで、季節変化の周期であり、さらには太陽の赤緯変化の周期でもあります (2020年1月時点の値は 31556925.151秒 = 365日5時48分45.151秒で、1年間につき0.00528秒の割合で短くなっていく状況にある)。その後、1967年に「133Cs 原子の基底状態の2つの超微細準位の間の遷移に対応する放射の9192631770周期の継続時間」という、原子核が持つ普遍的な現象を利用した定義に改められました。

セシウム133 (133Cs、セシウムの唯一の安定同位体)を用いた原子時計によって秒の長さが定義されている形となっていますが、時間の厳密な計測に関しては、1997年に「秒の定義は絶対零度 (0K)の下で静止した状態にある 133Cs 原子に基準を置いている」という声明が出されました。絶対零度、静止状態、そして外部からの電磁波等を全く排除した理想的状態の原子に基準が置かれた形となったわけですが、現実にはそのような理想的状態を作り出すことは事実上不可能であるため、周波数標準器を使って理想的状態との差異を評価して適切な補正を加えるという方法がとられています。

原子時と世界時・恒星時
原子時計によって維持される時刻系は原子時と呼ばれ、現代の計時における標準となっています。一方、世界時と呼ばれるものは、地球の自転に基づいた時刻系で、グリニッジ天文台における平均太陽時に相当します。地球の自転には不規則な変動があり、さらには月からの潮汐力によって減速していく傾向があるため、1日の長さが長期的には徐々に長くなっていることが知られています。とはいえ、短期的 (10年~50年程度の年数)には、1日が常に長くなり続けているわけではなく、1970年代に 86400.004秒 あたりまで長くなっていた1日の長さが2000年~2005年には 86399.9989秒 ~ 86400.0017秒 の変動を示すようになり、遠日点通過の前後 (6月~8月)には86400秒よりも短くなる期間さえあるほどになっていました。

国際原子時
国際原子時 (TAI)は1958年1月1日0時0分0秒の瞬間 (世界時UT1をもとに自転角速度の季節変化分を除去して得られるUT2による)を起点に積算を始め、世界50か国以上に設置されているセシウム原子時計を数多く含む約300個の原子時計により維持されています。国際原子時の管理・運用はかつて国際報時局 (BIH、現IERS)により行われていましたが、1988年1月に国際度量衡局 (BIPM)に移管され現在に至ります。

一般相対性理論によれば、狂いのない理想的な時計であっても、それが刻む時刻は、その時計が過去にどのような重力場のなかをどのような運動をしたかによって、相互比較で差が生じることがわかっています (固有時)。そこで、相対性理論の効果を考慮した国際原子時の定義に関しては、1980年に「国際原子時は、回転するジオイド上で実現される SI の秒を目盛りの単位とした、地心座標系で定義される座標時の目盛りである。」という声明が出されました。地球ポテンシャルの影響として、時計の置かれている場所の標高 (ジオイドからの高さ)の違いに対応して、各時計の固有時は高度1kmあたり 1.1×10−13 の歩度差が生じるので、国際原子時の作成に寄与する原子時計は、地球の自転に伴って回転するジオイド (地球の平均海水面に良く一致するように定められた重力ポテンシャル面のこと)上のSI秒を基準に補正を行うこととなるわけです。

国際原子時の歩度については、1974年にその構成法についての研究が報告され、これまで7機関の独立な原子時系 (商用のセシウム原子時計)によって構成してきた国際原子時について、各時系の設定方法の違いや、時計の台数の違いなど問題が多かったため、国際報時局は個々の原子時計のデータを数多く集め統一した処理による新しい計算法 (ALGOSと命名)を開発し (1973年6月から実施)、かなり改善する見込みであると説明されました。そして、今後はセシウム原子一次標準器による較正値を取り入れた計算法の研究や、ロランCによる原子時計の比較において大陸間の時刻比較の精度向上に関する研究を促進することも勧告されました。時刻比較の結果、国際報時局が管理する国際原子時の歩度が、アメリカ合衆国の国立標準局 (NBS、現NIST)、カナダの国家研究会議 (NRC)、ドイツの国立物理工学研究所 (PTB)などのセシウム一次標準器の結果に照らして、わずかに短かったことが判明し、SI秒の定義に合わせるため、その歩度 (秒間隔)を従来の(1 + 1×10−12)倍に拡げることが勧告され、1977年1月1日0時0分0秒TAIの瞬間から適用されました。

世界時と恒星時
世界時 (UT)は、平均太陽時を世界中で一意となる形に定義した時刻系であり、0度経線 (本初子午線、グリニッジ子午線)上における平均太陽時に相当します。世界時は、地球の自転に基づき、各天文台で恒星や銀河系外電波源の日周運動の観測、あるいは月や人工衛星の継続観測によって決められています。また、自転軸の地理的位置がずれる極運動も同様の観測により決められています。まず、個々の天文台について、その天文台で採用されている経度の値に基づいて世界時UT0を求め、各天文台のUT0の相互比較によって極運動および世界時UT1を決定する形となります。世界時UT1は、UT0から観測地の経度に表れる極運動の効果を補正して計算され、世界中で一意となる形に調整されます。こうして、固定座標系に対する地球の真の回転角が定まります。

恒星時 (siderael time)は、恒星 (または銀河系外電波源)の日周運動の観測に基づいて計られる時間で、春分点を基準にして測られる赤経と時角の和として、どの天体に対しても一意に定まる時刻系です。すなわち、歳差および章動により移動する春分点の時角、あるいは、その時に子午線上 (真南または真北、天球上で最も高い高度に位置する側)に見える星の赤経として定義されます。歳差および章動による影響を除去して、固定座標系に基づいた地球の自転を考えたものは地球自転角 (Earth Rotation Angle、ERA)と呼ばれ、瞬時の春分点 (または秋分点)の付近に位置する恒星の時角に基づき、歳差および章動によって赤経がずれた分を補正したものと考えられます。世界時UT1と地球自転角ERAは、2000年1月1日12時0分0秒UT1の瞬間から1日単位で測ったものを tU とすれば、ERA = 2π (0.7790572732640 + 1.00273781191135448 tU) という関係で与えられます。グリニッジ恒星時 (GST)は、このERAに原点差 (EO、赤経の歳差分を積算したもの)と分点均差 (EET、春分点における赤経の章動に相当)による補正を施したものとして求められます。

協定世界時
協定世界時 (UTC)は、国際原子時 (TAI)に由来する原子時系の時刻で、世界時UT1に同調するべく調整された基準時刻のことをいいます。かつては世界時UT2 (UT1をもとに既知の季節変動を補正して平滑化したもの)に同調するべく歩度 (秒間隔)をSI秒の長さからわずかにずらして、UT2の歩度に近似させ、必要に応じて0.1秒単位のステップ調整を行う方式がとられていましたが、1972年1月1日からは秒間隔をSI秒の長さに固定し、国際原子時と整数秒の時差を維持しながら、世界時UT1とのずれを1秒単位のステップ調整 (閏秒)で0.9秒以内に調整する方式がとられるようになりました。

座標時
一般相対性理論によれば、狂いのない理想的な時計であっても、それが刻む時刻は、その時計が過去にどのような重力場のなかをどのような運動をしたかによって変わってくることが知られています (固有時)。この固有時に対して、座標時とは、共通の基準となる目盛りが時間と空間に与えられた座標系 (基準座標系、座標参照系)によって特定される時間のことをいいます。座標時の尺度は、相対論的効果を考慮する必要のある計算における時間座標として使用するために設計された時刻系であり、目的の対象物から無限に遠くに離れて静止している (重力による影響を受けていない)時計の固有時によって示されるものですが、現実にはそのような重力的影響から逃れることは事実上不可能であるため、いかなる物体も他の物体からの重力の影響を受けることになり、たとえ基準座標系に対して静止している場合であっても、それぞれの固有時は座標時より遅く経過するようになっています (重力の影響は物体が接近しあっている状況ほど大きくなる)。

この座標時の概念を天文学で扱うため、国際天文学連合 (IAU)によって以下の座標時尺度が定義されています。

・太陽系座標時 (TCB): 太陽系の重心と並進する座標系に基づく。太陽系内の物体の運動を扱うために用いられる。

・地心座標時 (TCG): 地球の中心 (重心)に並進する座標系に基づく。地球上または地球近傍の領域における各種の現象を扱うために用いられる。

・太陽系力学時 (TDB): 太陽系座標時の時間尺度をもとに、平均的な歩度がジオイド上の固有時とよく一致するように定められた時間尺度。

・地球時 (TT): 地心座標時の時間尺度をもとに、ジオイド上の固有時とよく一致するように定められた時間尺度。地球力学時 (TDT)ともいい、国際原子時 (TAI)とはある一定の時差がある。


太陽系座標時
太陽系座標時 (TCB)は、太陽系の重心と並進する座標系に基づいた座標時のことで、その歩度は地球表面の時計よりも速く (地球時の約(1 + 1.550505×10−8)倍の速さ)、1年間につき0.4893秒の割合で狂いが拡大していきます。一般相対性理論に基づいて定義された時間尺度であり、他の相対論的時間尺度との関係は、完全な一般相対論的計量テンソルに基づいて定義されます。

太陽系座標時の原点は、1977年1月1日0時0分0秒TAI = 1977年1月1.0003725日TCB とされています。0.0003725日 (=32.184秒)分のずれは、かつての暦表時 (ET)との継続性を保持するように設定されたものです。

地心座標時と地球時
地心座標時 (TCG)は、地球の中心に並進する (回転はしない)座標系に基づいた座標時のことで、その歩度は、地球表面の時計よりもわずかに速くなっています。地球が太陽系内を運動しており、しかも楕円状の公転軌道により地球 - 太陽間の距離が変動するため、地心座標時の歩度は太陽系座標時に対して歩度が遅く、かつ周期的な変動を示すようになっています。

地球時 (TT)は、地心座標時の時間尺度をもとに、ジオイド上の固有時とよく一致するように定められた時間尺度で、主に地球表面からの天文観測の時間測定のために使用されます。その歩度は、地球の表面における重力的影響を反映し、地心座標時の(1 − 6.969290134×10−10)倍の速さと定められています (1年間につき0.02199秒の割合で狂いが拡大していく)。

地心座標時および地球時の原点は、1977年1月1日0時0分0秒TAI = 1977年1月1.0003725日TCG = 1977年1月1.0003725日TT とされています。太陽系座標時と同様、かつての暦表時 (ET)との継続性を保持するように0.0003725日分のずれが設定されたものです。この関連付けにより、歩度がジオイド上のSI秒に一致する地球時は、実用的な目的において TT = TAI + 32.184s の関係が保持されています。

太陽系力学時
太陽系力学時 (TDB)は、太陽系座標時の時間尺度をもとに、平均的な歩度がジオイド上の固有時とよく一致するように定められた時間尺度で、現在、以下のような関係で与えられます。
 

TDB = TCB − LB × (JDTCB − T0) × 86400s + TDB0


ここで、LB = 1.550519768 × 10−8, T0 = 2443144.5003725, TDB0 = −6.55 × 10−5s は定義値、JDTCBは太陽系座標時によるユリウス通日 (西紀前4713年1月1日正午を起点に経過時間を日の単位で表したもの)である。

暦表時
暦表時 (ET)は、1983年まで使用されていた時刻系で、地球や月、その他の惑星の公転運動をもとに規定された、純理論的、純力学的な時刻系となっています。しかし、数々の修正すべき要素があったため、実際に天体観測を行ってから真の暦表時を求めるまでには数か月もかかっていたようです。

(最終更新日: 2020年3月29日)

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