月に生えるモクセイの巨木伝説。その色は…?

中国・桂林市。風光明媚な絶景のこの地は、「モクセイの里」でもあります

中国・桂林市。風光明媚な絶景のこの地は、「モクセイの里」でもあります
一方、中国でも「金」になぞらえられるのは、丹桂ではなく、黄花のモクセイ(金桂)でした。中秋の名月頃、月に生える桂花の巨木が花をつけ、その花色が月を金色に染めるという伝説があります。この桂花も金桂です。

後漢時代の『五経通義』(劉向撰)では、月に玉兎というウサギと、一匹の蟾蜍(ヒキガエル)が棲んでいると伝えられています。ウサギのほうは日本では餅つきウサギとして有名ですが(中国では薬草を突き砕いている)、ヒキガエルは射日神話(太古、複数あった太陽が弓で射落とされる、世界に広がる神話類型)の羿(げい)の妻で、夫を裏切り月の宮に逃亡した嫦娥(じょうが)が醜いヒキガエルに変じた、という神話(嫦娥奔月)から来ています。
また、『酉陽雑俎』(ゆうようざっそ 860年頃)には、こんな話が載っています。

「月の中には一本のモクセイの樹がある。高さ五百丈というとてつもない大木で、その樹の根元には呉剛(ごごう)という一人の美男がいて、たえずその樹を切り倒そうと斧をふるっている。しかし不思議な生命力で、樹は傷つけられた箇所がとたんに癒合してしまうので、いつまで経っても切り倒すことが出来ない。呉剛はもともと西河の人で、仙術を学んでいたがあるとき、師である仙人の怒りを買い、「月に生える大木を切り倒すまでは帰ってくるな」と命じられ、いつまでも樹を切り倒そうと苦闘しているといわれる。」

こんな呪われた呉剛と嫦娥が、別の伝説では月に棲む男神と女神に変じます。

「秋の夜、月に棲む嫦娥は宮殿から下界を見下ろしていました。美しい湖に月光が映えて非常に美しく、気分がよくなった嫦娥は舞いを舞い、夫の呉剛はそれにあわせて桂花の木の幹を打って合いの手を入れました。すると木の枝から大量の花と実が零れ落ち、地上にも落ちていきました。花の実はその地で根付いて、地上にも桂花の木がもたらされることになりました。」

この桂花の根付いた場所こそ、今の桂林(中華人民共和国・広西チワン族自治区桂林市)である、とされています。桂林は大河と石灰岩の奇岩がおりなす山水画そのものの風光明媚な地としてきわめて有名で、温暖湿潤な気候に恵まれた市内には40~50万本ともいわれる桂花(モクセイ)が生育し、花期には甘い花の香りで満たされるそうです。
一度は花期に訪ねてみたいものです。

秋の名月を眺めながら、その月面に咲くモクセイの花色を、想像してみるのもまた、楽しいかもしれません。

✿⌒✿🌼✿⌒✿🌼✿⌒✿🌼✿⌒