正一位狐国稲荷神社 8話 御嬢狐団十郎狐と結婚 狐の嫁入り行列は宮中で 伏見稲荷大社の物語 97話

 狐が稲荷神社のお使いになったのは711年になるがそれより400年前には狐は邪馬台国の卑弥呼のお使いとなっていた。稲荷神社は当時湿地帯であった京都盆地の東山三十六峰の最後の山の伊奈利山になるが、邪馬台国はその真西の向日丘陵勝山の山裾(元長岡京)にあり、ここからは東山から日が昇り西山に沈む地になるが、卑弥呼がこの地に邪馬台国を造った理由は眼下の京都盆地の湿地がやがて水が引いて日本の中心の都が築かれると卑弥呼の亀卜占いで占っていたからだ。

 つまり、魏志倭人伝で伝わる邪馬台国の地は仮の地でやがて卑弥呼もこの京都盆地に都を築こうと思っていた。この卑弥呼の占いは400年間も受け継がれて平城京の桓武天皇は卑弥呼のようにこの邪馬台国跡に仮の都とするために長岡京へ引っ越しして京都盆地が湿地帯になった原因の鴨川右岸の堤防を築いてからこの地に都を築こうとしてその通りになっていた。

 その卑弥呼はこれを実現出来ないまま死去して卑弥呼は勝山中腹にある元稲荷古墳に埋葬されていた。その後、卑弥呼の跡目争いで戦争になったが、その当事者2派は荒れた邪馬台国を捨てて一方は淀川を下り浪速の国へ、もう一方は奈良に落ちて後の大和政権を作っていた。

 残された卑弥呼のお使いの狐はそのまま卑弥呼の墓の元稲荷古墳を守るための狐国稲荷神社を建立して400年になっていた。つまり、伏見稲荷大社は稲荷神社の総本宮とはなってはいるが、それは人間がお詣りする神社のことで稲荷神社全体ではこの狐国稲荷神社が元祖となり現在でも「元稲荷神社」「元稲荷古墳」となっている。

 これは西山の狐の歴史だが、東山の狐は文化程度がかなり低く凶暴で人間そのものを敵としていた。そんな折に狐が棲む東山に稲荷神社が出来たものだから神社と狐は敵対関係になるが、宮司の伊呂具が怪我をした狐には消毒をして薬を塗る、病気の狐には薬草と鴨川で獲った鰻な鯉などを与えるなどをして5年後にはやっと東山の狐の女王の信頼を得ていた。

 女王はシロギツネの白藤で西山の狐とはたえず縄張り争いをしてこれで死んだり怪我をする狐が絶えなかった。そこで伊呂具が仲裁に入ることになった。伊呂具は白藤に、
「西山の狐は農民とは協力共同で仲良く暮らしているが、東山の狐はなぜ?人間を敵視するのだ?」
 白藤は、
「もうここ100年は原住民の加茂族や藤族に何万匹も殺され毛皮にされているのです。だから人間は敵になります」
「そか、それなら加茂族の上賀茂神社と藤族の藤森神社にはこの東山の狐は稲荷神社のお使いになったので今後一切狐を傷つけないという約束を取り付ければ白藤は人間と和解できるのか?」
「はい、私は宮司さんを信用していますから私たち東山の狐は稲荷神社のお使いになります」

 伊呂具の仲裁で東山の狐と西山の狐は和解することになり稲荷神社でその調印式が執り行われていた。西山側からは卑弥呼狐とその息子の団十郎狐が参加、東山側からはこれも東山狐の女王の白藤とその娘の御嬢狐だった。この御嬢狐は母親の52代目の女王の跡継ぎに内定していたので東山狐界では「御嬢狐」と呼ばれていた。

 この調印式の立会人は人間の伊呂具のために双方の狐は人間に化けていた。西山の団十郎狐は歌舞伎一座の座長で化け方も歌舞伎調でそれはそれはイイ男に化けていた。一方の白藤の娘の御嬢狐は母親似の色白美人でこれも女優顔負けの美形で団十郎狐は御嬢狐に一目惚れするのは間違いないと思っていた宮司が計画をした大作戦が見事に的中してこの2人の交際が始まっていた。

 この団十郎と御嬢狐とのデートは深夜になるが、東山と西山は約2里離れているためにこの中間点の羅城門で会うことにしていた。この羅城門の二階は約20畳ほどの板の間で10体の仏像が安置されているが夜は誰もこないので2匹は朝まで愛を語り合っていた。
 団十郎は御嬢狐に、
「私の父は正一位狐国稲荷神社の宮司で私が宮司を継ぐことを心から期待しているので御孃狐は嫁に来てほしいと一歩も譲りません」
「そうなの~私の父も母親の57代目東山狐の女王白藤を私に継がすので団十郎さんを養子に迎えるのが筋だと一歩も譲りません」
「俺たち狐は母親からは平均すれば3~4匹は生まれる、それも5年間ぐらい毎年もだから兄弟は15匹以上もいるのに長男が後を継ぐものだと信じ切っている」
「そうよ~私もたまたま長女に生まれてきたから女王になるのは当然だと東山の長老狐も一歩も譲らないの…」
「俺たちは西山の狐と東山の狐が和解するための道具として愛し合っているのではなく俺は御嬢狐を心から愛しているので結婚したいだけで名誉や金は欲しくはない」
「団十郎さん~私もです~」

 「それに私は神社の宮司より折角立ち上げた歌舞伎団十郎一座の座長として全国の狐国稲荷神社を巡り興行したい。もう、若狭の国から佐渡島の稲荷神社までの5神社の舞台は決まっている」
「そうでしたの~それなら私も団十郎一座の座員にして下さい、私は団十郎さんとだったら地球の果まで付いて行きます」
「御嬢狐ありがとう~しかし、お母さんの白藤さんにはどういう説得をするの?」
「はい、昨夜お母さんと朝まで話し合ってやっと私が正一位狐国稲荷神社に嫁ぐことを許して頂きました」
「しかし、それは次期宮司の私に嫁ぐことで団十郎一座の座長の私に嫁ぐことではないが…どうする?」
「はい、それは一応正一位狐国稲荷神社に嫁いでから考えましょう、それに嫁いだらもう御嬢狐ではないので白菊と呼んで下さい」
「そか白菊、嫁いでしまえばどうにでもなると言うのか?…白菊」
「はい、この時代ですから女は賢くしたたかに生きなければ幸せは向こうからは歩いては来てくれません」

 こうして二人の結婚式は5月1日の早朝の1時に花嫁は団十郎との想い出の羅城門まで親族と歩き新郎側は羅城門まで迎えに来てここでドッキングして媒酌人の正一位伏見稲荷大社の宮司ご夫妻を先頭に花嫁、花婿が次に続きここからが狐界の仕来りの狐の嫁入りの行列になる。そして向日神社で結婚式を挙げることになっていた。

 そのことを従四位卑弥呼狐から報告を受けた従三位動物愛護大臣藤原信照はこのことを嘉智子皇后に報告するかを悩んでいた。そもそも嘉智子皇后が信頼する加持祈祷師の卑弥呼狐の長男が花婿の団十郎でこの団十郎は小狐の頃と大人になってからも皇后に大極殿で芸を披露していた関係にもなる。さらに媒酌人の宮司ご夫婦は嵯峨天皇の信頼出来る加持祈祷師という関係からも信照が皇后にこのことを報告するのは当然になるがためらっていた。

 そこで信照は正二位攘夷大将軍坂上田村麻呂に相談していた、田村麻呂は、
「あの皇后の性格ではまた「狐の嫁入り行列」を見たいとダダをこねるに違いないが、そんな深夜に皇后を警備することはまったく出来ない。さりとて報告しなかったら皇后に激怒されて信照は確実に地方に左遷される」
「そこなんですよ~田村麻呂さま」
「信照…お主も動物愛護大臣で愛妾に狐の月光を囲っているのだったら何かを考えろ!」

 信照は困り果てて愛妾の月光に相談していると月光は、
「そんなの簡単よ…信照さま、まず、花嫁と花婿のドッキングを大極殿にすればそこからが狐の嫁入リ行列ですのでそして宮中の大極殿門から朱雀門までの約100㍍を行列して皇后さまに見てもらえば宮中だから警備の必要はそんなにありませんのことよ!」
「おぉぉぉ~でかした月光…それで行く」

 東山の花嫁と西山の花婿は予定通り1時にそれぞれ出発して2時には大極殿の控室に入り花嫁も花婿、それに卑弥呼狐に白藤まで花嫁行列に参加する狐の全員がまず人間に化けてから衣装の着付けをしてもらっていた。花嫁の御孃狐は文金高島田に綿帽子、白無垢の花嫁衣装で大極殿の東側から、新郎の団十郎は羽織袴姿で西側から登場して大極殿前広場でドッキングして花嫁の母の白藤が御孃狐の手を引いて団十郎に引き渡すという感動的な儀式にこれを見ていた気のきつい皇后も人の子で涙してこの二人を祝福していた。

 そして媒酌人の宮司夫婦を先頭に花嫁花婿、正一位狐国稲荷神社の宮司夫妻、白藤夫婦の順の総勢の40名の「狐の嫁入り行列」が大極殿から出発していた。その花嫁行列が朱雀門から出るとそこは幅80㍍の朱雀大路になるが、その朱雀大路~羅城門までの約3キロには全国から御孃狐と団十郎狐を祝福しようと都大路の両脇に集まり、それぞれの狐の口にはお祝いの狐火を咥えていた。

 この狐火は狐の餌である小動物の肉を食べたあとの骨を土の中に埋める習性があるが、これはもし飢饉になった時に骨の中の髄を食べる非常食にもなっていた。その骨を土に埋まると燐(リン)が発生してその骨を狐が掘り出すと空気に触れて酸化して青白く光る。その光を放った骨を口に咥えて深夜に花婿、花嫁の足元を照らすという狐界最大の祝福であった。
     (9話につづく)
(この小説を漫画の原作にしていただける漫画家さんを募集しています。挿絵の御孃狐2点は、姉姉 @un84z (ツイッター)さんの作品です。また、この小説の中に出てくるだろうと思う変わり狐の挿し絵の絵を描いて絵描きさんを募集しています。私はその絵から話を起こして小説にいたします)

 

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