正一位狐国稲荷神社 4話 パンダキツネ、歌舞伎キツネ嘉智子皇后に芸を披露 伏見稲荷大社の物語 93話

 向日神社のパンダキツネや歌舞伎キツネを実際に見に来た貴族の正室や愛妾、そしてお付きの官女、侍女まで入れるともう1000人ぐらいは生の変わり柄狐を見ている。そしてそれぞれが墨の濃淡を使ってパンダキツネを和紙に描いていた。この貴族の世界では女性は書と絵が書けることや和歌から笛、お琴までの習い事は15歳までに覚えることが必須条件だった。

 だから世にも珍しいパンダキツネや歌舞伎キツネなどを模写することは簡単なことだが、やはり絵のセンスは個人差があり100人の女性がパンダキツネを書いてもすべて同じにはならない。そのパンダキツネの絵をある貴族の屋敷に出入りしていた版画屋の文春堂が見つけてこれは金になると侍女から1枚10文で5枚買い上げた。

 この文春堂は京の都の5軒ある版画屋の大手でこの侍女から買ったパンダキツネの絵を版画にして1枚銭10枚で売ったところこれが大人気で飛ぶように売れた。こうなると残りの4軒の版画屋は高級貴族の官女、侍女を捕まえては文春堂より高い1枚20~50文で買っては競争で売り歩いた。また、これは官女や侍女にとっては最高のアルバイトになり今まで墨で黒一色だったが、それが2色、3色になり色々な絵柄とともにこの版画を買う商人や農民、町人まで版画を観る目が肥えてきた。さらに人気作家の紫式部に支払う原画料も5軒の競争で鰻登りになり1枚一貫(銭1000枚)にもなっていた。

 大極殿のある御所には女性が約1000人働いているのでこの3月から11月までに向日神社の生パンダキツネや生歌舞伎キツネを見たものはほとんどで宮殿では絵に描いたり話のタネにしていた。が、ただ一人だけこの話に入れなかったのは桓武天皇の正室の従二位嘉智子皇后はパンダキツネを見たくて見たくてイライラしていた。

 嘉智子皇后は11月5日に日本国軍隊及び天皇の近衛兵の大将軍の従二位征夷大将軍坂上田村麻呂を宮殿に呼んで、
「わらわも向日神社のパンダキツネを観たいので向日神社への行幸の用意をしなさい」
 田村麻呂は急な話に驚いて、
「恐れながら皇后さまの行幸ともなるとお付きの官女や侍女で少なく見積もっても300人の大行列になります。その警備には1000人ほどの武士が警備しますが、それの用意には1ヶ月ほどかかります」
「そか、それならそれを10日でしなさい」
「し、しかし、それに向日神社へは西国街道になりますが、西国街道は道幅が狭くて皇后を乗せた牛車の両脇には騎馬隊が警備しますがそれも出来ません。さらに、向日神社は勝山の中腹にあり坂道の両脇には竹藪や雑木林がありそこから弓を射られば防ぎようはありません」
「そか、それならその西国街道の幅を広げて山の中の竹藪も雑木林もすべて切りなさい」
「お言葉ですが、それを10日では絶対に出来ません」
「もしもし、田村麻呂さん、私はこの国のナンバー2で女性のトップになります。その私だけが向日神社の変わり柄キツネを見ていないのは恥になるが、その私の恥をなんとか解決するのが従二位攘夷大将軍坂上田村麻呂ではないのかい?」
「は、ははは…恐れ入ります」

 田村麻呂はすぐさま馬を飛ばして向日神社の宮司に面会を求めて事情を話していたが、まず宮司の目の前に銀100枚を置いてから、
「実は嘉智子皇后さまが向日神社の変わり柄狐を観たいとおっしゃっているが、警備上皇后さまはこの向日神社まで来られない。したがって変わり狐の代表的な小狐10匹ほどを貸してほしい」
 宮司は目の前にある銀100枚もあれば老朽化した本殿を建て替えできる大金だが、それより何より断れば目の前の従二位攘夷大将軍坂上田村麻呂に首をはねられるのは確実で震えながらも、
「実はあの狐たちは向日神社の狐ではなく境内にある正一位狐国稲荷神社のお使いなのです」
「そか、それならその神社の宮司をここに呼べ!」
「そ、それが宮司は…狐なんです」
「キ、キツネ?…狐が宮司か?で、その狐の宮司は人間の言葉は分かるのか?」
「いえ、それは無理ですが、私はもう狐の付き合いは長いですから狐の宮司の妻の卑弥呼狐とはなんていうか…テレパシーで意味は通じます」
「そか、それなら宮司に全権委任するが、成功すればこの銀100枚は嘉智子皇后から向日神社に寄贈するが、失敗したら…分かっているだろう~宮司!」

 宮司は早速、卑弥呼狐を神社に呼んで田村麻呂の話を説明していた、
「あの大将軍は自分の命令を守らない人間は絶対に生かしておかないことから軍の司令官までになった。今回も恫喝をされた」
「それで変わり柄狐の御所への派遣はいつですか?」
「それが10日後の11月16日の夜7時までに変わり柄狐10匹を大極殿まで連れて行かなければ私の首が飛ぶという皇后さまからの勅使には絶対に逆らえない」
「そうですか~なんとかしましょう」

 卑弥呼狐は皇后から要望のあったパンダキツネと歌舞伎キツネの人選を始めた。パンダキツネは7匹、歌舞伎狐は3匹で卑弥呼狐と化け方が上手な巫女狐2匹の合計13匹で変わり柄狐ショーの編成とした。ただ、変わり柄狐を歩かしただけでは皇后は満足しないだろうと演出を考えていた。だが、まだ小狐で母親からは満足に化け方も教わっていないだろうと人選した小狐10匹に簡単な化け方の特訓を始めた。

 田村麻呂からは向日神社の宮司へ使者が来て当日は騎馬に乗った武将4人が狐13匹の先頭と警備をしてくれるという連絡があった。向日神社から御所の大極殿までは約二里半(10キロ)で狐が走れば1時間ほどだが余裕を見て午後の5時に向日神社を出発することになった。

 さて、この向日神社の変わり柄狐が大極殿で皇后に変わり柄狐ショーを奉納するという噂は御所の侍女から巷に漏れて羅城門から御所へのメイン通り(約一里幅80メーター)の朱雀大路の両端には一目変わり柄狐を見ようと商人や職人、それに東寺、西寺の坊主まで鈴なりの観客で埋まった。

 まず先導の騎馬2頭の後ろには大人のシロギツネが3匹、その後ろに変わり柄の狐が10匹が走って観客の前に来ると拍手と歓声で迎えたが何せその時間は5秒ほどで満足はせずに観客は御所目掛けて歩き始めていた。午後6時に着いた狐たちは控えの間に案内されて卑弥呼狐の指導で最後の練習をしていた。

 舞台は大広間の庭に特設ステージが作られ伏見稲荷大社からは人間の雅楽の神職の応援があり、司会は従四位橘慎之助でステージが始まった。司会はまず正一位狐国稲荷神社の巫女さん3狐の神楽舞ですというなり雅楽の演奏が始まり巫女狐が人間の巫女に化けて巫女舞を踊ったが、それが超美人で皇后の取り巻きの高貴な身分の女性までうっとりしたが、皇后がその女性に、
「司会はたしか狐が3匹と言っていたが、あれはキツネか?」
「さあ~???~???」
 なにはともあれ皇后は拍手をしていたが、その拍手が終わると同時に巫女が一瞬シロギツネに変身した、つまり元の狐に戻ったものだから皇后は我が目を疑っていた。

 次はパンダキツネ7匹と歌舞伎キツネ3匹が現れて10匹が整列して皇后に頭を下げると皇后は縁側まで出てきて10匹の狐の頭を撫ぜていた。そして鼓の音が…ポン、ポン、ポンで3匹の歌舞伎キツネが宙返りすると一休さんの小坊主の姿に化けていた。これには皇后も涙を流して喜んでいた。

 そしてまた鼓の音が…ポン、ポン、ポンで7匹のパンダキツネが宙返りすると人間で小さな子供の巫女姿に化けていた。皇后はこれにも惜しみない拍手をして舞台は終わっていた。そして脇で控えていた従二位攘夷大将軍坂上田村麻呂を呼んでいた。田村麻呂は、
「皇后さまご満足して頂けましたか?」
「田村麻呂でかした。で、なんでも向日神社の紅葉は大層綺麗というが、御所でそれを見ていないのはわらわだけでだという。田村麻呂すぐに向日神社への行幸の準備をしなさい!」
「エ~~~え~~そんな~またですか?…」
      (おわり)
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小説 #正一位狐国稲荷神社 の文中 #アカギツネ と #ギンギツネ の間の隈取がある #歌舞伎キツネ ♂団十郎 … #クロギツネ と #シロギツネ の子供は #パンダキツネ ♀狐狐(コンコン) この #変わり柄キツネ を描いて見ませんか?100人寄れば100通りの狐が誕生します。#を付けて自分のSNSに投稿してね この絵の作者は @natchdonFOX さん(ツイッター)

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