桓武天皇から平城天皇へ、祈祷師も稲荷神社の荷田氏から上賀茂神社の賀茂氏へ・稲荷神社の三代目の就任

桓武天皇から平城天皇へ、祈祷師も稲荷神社の荷田氏から上賀茂神社の賀茂氏へ・稲荷神社の三代目伊蔵(いくら)の就任式　４６話

８０６年４月９日に桓武天皇は崩御された。次の５１代天皇は桓武天皇の第一皇子の安徳親王にすでに決まっていたので跡目相続の醜い争いは表面化はしていなかった。天皇の名前は「平城天皇」となり８０６年６月８日に即位の儀が執り行われていた。桓武天皇の葬儀では中心的な役割を果たしていた稲荷神社の二代目の生成(いなり)はこの即位の儀式には招待されていなかった。

即位式では本来祈祷師が座る場所には賀茂氏の祈祷師集団の長賀茂道臣が座っていた。つまり、稲荷神社は朝廷からお払い箱になったという意味だが、これはどんな組織でも長が変われば人事が一心されるのが世の常となる。この賀茂道臣は平城天皇から従四位の位を授けられたが、この従四位とは宮中のどこの部署の部屋に入れるという位になり、いわば宮中の事が自分の目で把握できるという高級官僚になったという意味でもあった。

これは祈祷師だけではなく仏教もそうだった。桓武天皇が亡くなった一か月後に第１８回の遣唐使から帰国した比叡山の最澄、空海の両名がその報告の時期を宮中にお伺いを立てたが平城天皇は会うことをしなかったばかりか即位式にも招待の知らせがなかった。その代わりに奈良の仏教会から十数人の高僧が招待されていた。

そこで空海と生成、それにフォックス警備保障の隊長の狐の３人で対策を練っていた。狐の隊長は、
「平城天皇からは朝廷直属の諜報部を解任されたが、朝廷の地下には狐の通り道がそのまま残されており自由に出入りしています。そこでスパイしたことですが、どうも奈良仏教会の僧兵から押収した１０００人分の武器、武具を天皇は奈良に返すそうです」
空海は、
「そんな物を返すとまた奈良はまた僧兵制度を作ってその維持費の年貢を農民から取ることになる」
生成も、
「平城天皇はその名前にこだわったのは、そもそも都は奈良でなければならないという思想で再び奈良に平城京を遷都するという意味がある」
「その武器はどこにある?」
狐の隊長は、
「それは粟田口の罪人処刑場の倉庫に保管してありますが、ここは武将の管理地になっています」

そこで生成は堀川一条の征夷大将軍で中納言坂上田村麻呂の屋敷を訪ねた。生成は、
「奈良に武器を渡せばどうなるかは中納言さまもわかっているはず」
「生成、武将というのは政治に口を出せばやがてその武力で政治をコントロールしたくなるものでそれは危険なことだ」
「たしかに日本の歴史そのものだ、しかし、今回の武器が国を超えて他国に渡ることを阻止するのも武将の役目になるが…」
「ふむ、お主もワシも先の天皇にはお世話になった。こういう場合に桓武天皇ならどういう決断をなさるか生成、それを答えよ!」
「ふむ、あれは武器ではなく鍬や鎌などの農機具を作るための鉄のスクラップであって、それを古鉄商に払い下げたと答えます」
「そか、それならそれを比叡山…ではなく、近江の坂本の古鉄商に払い下げることにする」

こうして粟田口の倉庫から大八車５０台分の古鉄が坂本の古鉄商に売られた。それを１０００名を超える比叡山の修行僧が比叡山の武器庫に運んでいた。そして比叡山の僧兵１０００名が組織されたが、これに対して奈良の仏教会は征夷大将軍中納言に猛烈な抗議をしたが、たかが従四位の奈良の坊主などとは位が違うと無視していた。

比叡山の空海も平城天皇に無視されていたが、なにせ桓武天皇時代にはもう比叡山系の寺が洛中、洛外には約１００寺もあって桓武天皇がこよなく愛していた神泉苑離宮を真言宗の寺としてここの住職をしていたが、奈良からはなんの横槍もなかった。その背景にあったのが約１０００名の僧兵の力だが、そのまた背景には稲荷神社の生成、そして奈良仏教会が一番嫌う天敵の「狐」がいた。

桓武天皇の崩御から六か月の喪の期間が明けた１０月１０日に稲荷神社の三代目の就任式が神社で開催されていた。三代目は生成の長男で３５歳の伊蔵(いくら)だった。この就任式には比叡山の最澄、空海、それに僧兵姿の坊主が１０００名も参加していた。この１０００名の僧兵は比叡山から「雲母坂」を下って修学院、そこから一条通りの宮中の前で立ち止まり気勢を上げていた。

そして朱雀門、羅城門へと都大路を大デモンストレーションをしていた。これは平城天皇が「平城京に遷都」するということに対して比叡山は反対しているというデモでもあった。僧兵は山法師といわれている白の裏頭(かとう)の被り物と黒の袈裟で手には奈良仏教会から頂戴した刀や長刀をむき出しにしての行進に奈良を嫌い、桓武天皇の農民や一般庶民のファンはやんややんやの拍手を贈っていた。

は比叡山の僧兵・弁慶

稲荷神社三代目宮司の伊蔵（いくら）の襲名披露祈祷パフォーマンス、雷封じ込め大作戦、雷劇場・北野天満宮４５話
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