小説　働く女性たち　その１　方向音痴の女・ロームイルミネーション２０１５…京都最大ＬＥＤ８０万球

小説　働く女性たち　その１　方向音痴の女　直美・ロームイルミネーション２０１５…京都最大ＬＥＤ８０万球の光の祭典

ロームイルミネーション２０１５…～１２月２５日

　光の点灯は午後１６時４５分～２２時まで（無料）、ＪＲ西大路駅から徒歩１５分、阪急西京極駅から徒歩５分、市バスは西大路花屋町下車２分、駐車場はまったくない。車では春日通り約４００メーターを通り抜けられます。

小説　働く女性たち　その１　方向音痴の女　直美

　珍しく夜の７時過ぎに散歩をしていた。西大路十条の交差点でスマホを手に持った女性から道を尋ねられた。昼間でも就活の女子学生からよくこの道をきかれるが、こういう場合はすべてが正反対の道を間違えて歩くようだ、この女も方向音痴で「ローム本社」行きたいという。私は、
「ほらほら、また正反対に歩いている、ローム本社は来た道を引き返すの…」
「はあ～そうですか、それでここから何分ほどかかりますか？」
「まぁ～２５分から３０分ほどです」

　そして私も帰り道だったので色々話をした。その女は３日の休暇をもらって京都に来た、ホテルは京都駅の上でロームのイルミネーションを見ようと電車に乗ったが、それが新快速で高槻まで行ってしまった。急いで普通に乗って西大路駅まで来たが、さらに反対に歩いたという。西大路九条まで来て、私は家がここですからというと女は、
「私…心細いから一緒に付き合って」
「いゃいゃ、ロームのイルミネーションは毎年見ている、それに私はもう酒を飲む時間で…」
「あら～私もお昼食べたきりで、お酒も付き合います」
「いゃいゃ、私の酒というのは居酒屋ではなく家で安い焼酎を飲むのです」
「あら、焼酎があればいいじゃないの…」

　それならと汚い我が家で焼酎を飲むことになった。この女は直美といい３７歳だという。その直美さんは「私…恥ずかしいのだけど…ローム東京本社の社員ですの～」。直美さんは東京の大学を卒業してロームに入社した、研修や会議で何回も本社にきているがいつも京都駅からタクシーだったそうだ。そして勤めて１５年になるが、来年の春から課長に異例の若さで抜擢されている。今は係長だがそれでも責任が重くてストレスで潰されそうだ、この上に課長となると気が重いという。もしこれを断ると左遷されるのが目に見えている、少し考えさせてほしいと３日の休暇をもらったそうだ。

　たしか～５～６年ほど前になるがロームでもリストラの嵐が吹いて３５００名ほどが職場を去った。私の友人もそれで退職したが、ロームのイルミネーションを絶対見に行かないといっていた。また女性の友人はリストラは免れたが、６０歳の定年を独身で迎えたことを後悔していた。直美さんも、
「そう、そこなのよ～私ももう３７歳、今から恋人を探して恋愛して結婚しても子供は無理になる。私の課長も５５歳の独身女性だけど、どんなにお洒落をしても体型は老婆の域にはいっているの、仕事に疲れて休みの日は寝るだけだって」
「そうか～老婆の休日で直美さんの今回の旅行もロームの休日やな～」

　と、こんなアホな駄洒落を飛ばしたが、これが直美さんの笑いの壷にハマッタのか涙をだして大笑いしている。私はさらに、
「企業の闘志として女性を持ち上るだけ持ち上げて会社の命令に従わないと左遷と脅かす企業は一流ではない。能力を絞るだけ絞っておいて、その引き換えに女性としての幸せが…こんな考えは今ではもう古いが、男女同権とはこんなことではない」
「そう、私もそこが頭にあって…」
「でも、直美さんの人生は直美さんのものだから、自分で決めたら」
「あらら、伊奈利さんってけっこう冷たいのね？」

　そして２人の宴会が終わって私は直美さんをホテルまで送ることになった。直美さんは部屋で朝まで飲み明かそうというので部屋に入った瞬間に抱きついてきた。そして耳元で、