『鳴かない獣-ナカナイケモノ-』終演ご報告。 | なおりんの日々是精進。

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生涯現役の舞台役者を目指す飯田南織がなんとな~く綴る、犬と舞台と時々デザインの日記です。

こんばんはお月様

 

ブログでのご報告が遅くなってしまいましたが、

今年最後の出演作である

ベニバラ兎団PRODUCE THEATRE 16th

『鳴かない獣-ナカナイケモノ-』、

おかげさまでたくさんの暖かいお客様に見守られ、

無事に全公演を終える事ができました!

 

 

7年前に札幌でおきた連続婦女暴行殺人事件を軸に展開する

今までのベニバラ兎団ではあまりない位に

大人でダークな物語となった今作。

 

内容が内容だけに、

全キャストが本当に真摯に誠意を持って稽古に取り組み、

同時にチームワークを固めて一丸となって臨ませて頂きました。

 

お客様にどのように受け止められるのか、

幕が開くまでは本当にドキドキしていましたが、

沢山のお客様に暖かく受け入れて頂く事ができて幸せでした。

 

ご来場くださいました皆様、

ご来場できずとも応援くださった皆様、

共に走り抜いてくれた共演者の皆様。

 

今回も素敵な脚本と役を与えてくださった川尻恵太さん。

優しく皆を見守り導いてくださった演出のIZAMさん。

様々な光や音で目に見えない世界を出現させて下さった

照明の岡田さん、音響の須坂さん。

精神面含めて支えてくださった舞台監督の小林聖尚くん。

毎日受付でお客様を暖かく迎え入れてくれた黒木綾ちゃん。

忙しい中、お手伝いに駆けつけてくれた

ベニバラ兎団の悠帆&茜子&梨菜や、アヤカちゃん。

同じく忙しい中、仕込みとバラシ、

そして運搬をしてくれたベニバラの翔くん。

 

その他、この公演に携わってくださった全ての皆様に、

心から感謝と御礼を申し上げます。

 

本当に本当にありがとうございました!

 

今回お預かりした役は北海道警察の刑事・深山優子さん。

今回も大切で忘れがたい役となりました。

本当にお世話になりました。

なんというか、すごく好きな人。

 

達観していて、大人の視点を持っている強い人。

でも同時にとても脆い部分も持っている人。

冷静だけど根っこは熱い。ただ理性が半端ない。

 

公平であろうとするけれど懐に入れたら本当に愛情深い。

だからこそ懐に入れるまでは冷静に判断する。

刑事として仕事ができなくなってしまうから。

 

様々な矛盾や葛藤と心の奥底で闘いながらも、

真っ直ぐに一人で立ち続ける人。

 

そんな人だった気がします。

 

この人の言葉で一番心に残っているのは

「人間なんて元々信用できるものじゃない」という

最後の方で言った一連のセリフでした。

 

ああ、この人は様々な経験を経て

こんなにも当たり前に人間は信用できないと思っている、

そして同時にそれでも信じる事を知っている人、

信じたいと願っている人なんだなと。

 

うまく言えませんが、その部分がとても私と似ていて、

彼女との距離を縮める第一歩となった言葉でした。

 

多分、彼女は

「自分こそが一番の獣だ」と思っていると感じていました。

 

時に犯人が人間ではなく獣に見え、

更には自分に対して本能を剥き出しにして威嚇する咲さえも

哀しい手負いの獣に見えてしまう瞬間がある。

 

そんな獣たちを冷静に、

冷徹に狩る自分こそが一番の獣を抱えている。

そして相手を獣ではなく人だと思わなければいけない。

私情や私的な怒りに走ったら仕事ができない。

時には非情にならなければならないし、

どんなに許せない相手でも己を抑圧しなければならない。

相手はあくまでも人間だから人間扱いしなければいけない。

自分の中の獣を抑えなければならない。
そういう意味において、一番危険な獣を抱えているのは自分。

 

諦観に近い心持ちでそれを自覚し、

理性で己を律し続けている人だったと思っています。

 

咲の元に通うことは、

人間である自分に帰れる気がして救われる気がすると共に、

本当は何処かすごく辛かった。

 

自分の無力さも警察の無力さも

まざまざと見せつけられる気がして。

同時にそれを自分への必要な罰として

逆に甘んじて受けていたのでしょうけど。

 

事件が起きてからでは遅い。

でも事件が起こる前は抑止する為に見張る事しかできない。

人間の善良性と理性を信じるしかない。

獣にならないように願うしかない。

 

この稽古期間中、

警察ってなんなのだろうとつくづく考えたりしていました。

 

もうね、

獣が出ました。獣が徘徊しています。

皆さん、注意してください。

皆さん、安心してください、今回の獣は狩りました。

獣が獣を狩りました。

もうこれ以上、被害は出ません。安心してください。

大丈夫です、安心して今夜は眠ってください。

そして次の獣に備えてください。

そんな事しかできない。

 

同時に。

彼女の日常においての当たり前を身体に染み込ませる為に、

たくさんの遺体の写真を見ました。

子供の絞殺された姿。バラバラにされた女性の身体。

他にもたくさんたくさん。

 

誰かにとっての大切な人。

その人の他人になんか見られたくないであろう姿。

それを役作りという名目で見続け、心に焼き付ける自分に

毎度のことながら嫌気がさす。

 

舞台上で伊藤詩織の過去を見る時。

いつも頭に浮かんでいたのはあの女の子の顔でした。

ごめんなさい。

 

今回のような内容を取り扱う以上、

恐らく誰かの琴線に触れてしまう事は絶対にある。

だからいい加減な気持ちで臨んではいけない。

 

でもだからといって名前も知らない誰かの遺体を見続けて、

それを自分の役のために使うなどという

心底えげつない事をする以上は、

目に焼き付けて、記憶に刻んで、

彼女が事件解決に向け情熱を燃やす原動力にするしかない。

それしか私は償い方を知らない。

そう思って当たり前に脳裏に浮かぶ状態になるまで

毎晩必死に見続けました。

あの期間は本当に辛かったです。

 

そんな様々な痛みを内包しながらも何処か達観した目線で、

刑事として被害者に接する顔、

刑事として事件の捜査に取り組む時の顔、

心を病んでしまった妹に接する姉としての顔、

世話のかかる後輩に接する先輩としての顔。

彼女は様々な仮面を冷静に使い分けます。

 

別に嘘をついている訳ではなく、どれも本当に彼女。

 

でも一番、素に近い姿は

後輩である平尾くんと一緒にいる時かなと思っていました。

一番、気楽でいられる状態。

 

あと何故か途中から男言葉になっていたりしたので、

捜査をする時や熱中している時は最も地が出て男前になる、

という役作りをしていました。

 

咲に接する時は、

それもまた刑事としての鎧を脱いだ本来の姿ではありながらも、

どこか「理想的な姉」を演じていた気がします。

彼女の前では極力、笑顔を絶やさぬように努めていました。

「世界は平和に戻ったんだよ」と咲に思わせたくて。

そんな姿が実は余計に咲を苦しめていたんじゃないかな。

ごめんね。

 

そんな咲を演じてくれた緒方夏生ちゃん。

本番中、彼女の目に本当に助けられました。

いつだって本気でぶつかって来てくれるから、

私も本気で受け止めて、今日のこの子にはどうすればいい、と

本気でその場で悩んでその場で選択できた。

演技やお芝居を超えた所で向かい合えた気がして、

本当に楽しかった。

 

稽古期間中から千秋楽に至るまで、

私にとって彼女は「咲」以外の何者でもありませんでした。

 

また一緒に舞台に立ちたいけど、

彼女と咲と優子以外の関係を演じるのは少し寂しいな、と

思ってしまうくらい。

 

ちなみに咲があれだけ長い間、回復できなかったのは、

正直に言えば深山刑事の対応の仕方が

間違っていたからというのも原因の一つだと思っています。

 

優しく、ただ受け入れるだけでは、本当はダメなんです。

 

これはかつて私自身が、

三島由紀夫の『弱法師』で心を閉ざした俊徳を演じたからこそ

感じることだったりもするのですが。。

 

そういったことも踏まえて、

敢えて前半は、間違った対応をするようにしていました。

 

守れなかった罪悪感と彼女への愛故に

どこまでも優しく、どこまでも受け入れる姉の姿。

どんな酷い言葉を投げつけられても、ある程度、受け流す。

これだけ長い間、看病を続けている以上、

いちいち傷ついたりしていたら、

優子自身が引っ張られてしまいますからね。

 

ただ作中で描かれた数日間は、

本当はもう優子の中でも限界を感じている

ギリギリの時期だったのかもしれないなと思っています。

 

だからこそ、

咲が「犯人が捕まったと知っている」と告白する直前に

2人の関係に変化を起こす事にしていました。

 

何故、あそこで突然

それまで否定していた現実を咲が認めたのか。

 

台本上では「・・・」しかない優子の台詞でしたが、

きっとその無言の瞬間にこそ何かがあるはず。

 

そう思い、そのタイミングで彼女の中の限界が来て、

事件後、初めて彼女が咲の元から立ち去る、という行動を

してみました。

 

それは咲にしてみたら、

最後の味方であった自分を絶対的に愛してくれる

姉の喪失を意味します。

だからこそ彼女は、姉を引き留める為に思わず一歩踏み出した。

小さいけれど、この姉妹にとっては本当に大きな一歩。

それにより2人は、事件後、初めてお互いを真っ直ぐに見て

言葉を交わして心を通わせる事ができた。

ある意味で荒療治が効いた状態。

 

結果的に、その図が本当にすんなりと心に落ちて、

ああ、これを提案して良かったなと思えました。

 

この場面を始め、それぞれの姉妹の場面を

毎回毎回リアルに感じて一緒に作り上げてくれた夏生ちゃんに

心から感謝します。

 

大好きだよ。

 

ちなみに深山姉妹は東京出身の設定でした。

 

冒頭で「7年前に北海道警察に来た」と言っているので、

それまでは東京の警視庁に勤めていたと設定。

本人のキャラクターからしてエリート。

大卒後、半年間警察学校で過ごし優秀な成績を修める。
東京の交番で1年半勤務、引き抜きで刑事課に異動。

東京でバリバリ働いた後、道警に異動。

 

年齢的に逆算して行って、

咲が被害にあった時にはもう警察に勤めていたと思っています。

ただ身内の事件なので捜査には携われなかった。

 

咲役の夏生ちゃんと相談して、

恐らく家もエリートの家柄なんだろうねと設定していました。

優等生の姉と、愛嬌のあるかわいい妹。

順風満帆だった一家に突然訪れた悲劇。

最初はお金をかけて咲の治療をしていた両親。

ただ咲の病は一向に良くならず、

次第に世間体を気にして煙たがられるようになる。
やがて彼女の病院に行く人は優子以外いなくなった。

 

なので道警への異動が決まった時、

彼女は「空気の良い所で治療させる」という名目で、

真っ先に咲を北海道に一緒に連れて行く事を提案したと

思っています。

彼女を一人残して、北海道に行く事など出来なかったから。

 

そしてそんな北海道で出会った、訛り全開の平尾くん。

コンビを組んで2〜3年くらいの設定。

1年目は咲のことは秘密にしていて、

一人で車を飛ばして仕事の合間に様子を見に行っていたけど、

平尾くんの人柄を信用し始めて2年目に咲の事を告白。

以降は仕事の合間に立ち寄りたい時は、

平尾くんに病院まで車を運転してもらって

駐車場で待機してもらい、その間に深山が咲に面会していた、

みたいな裏設定を作っていました。

いい人だな、平尾くん。。

 

そんな平尾くんを演じてくれた白石大祐くん。

本当にお世話になりました。

これだけ打ち合わせをした相手役は初めてかもしれません。

この作品内における警察という存在を

2人だけで確立しなければならなかった為、

2人の対比やバランスなど、

かなり細かく相談させてもらいました。

役柄同様、妙にのんびりとした空気を醸し出す大祐くんは、

稽古場でも愛されキャラクターでした。

 

平尾くんの前では性格悪い部分も垣間見せるし、

泣いている事に気がつかれまいと強がりながらも

脆い部分も思わず見せるし。

心情を吐露する背中を

不器用にじっと見守ってくれる平尾くんは

なんというか忠犬ハチ公のような存在でした。

 

みのりの最期の言葉を隠したように、

今までもこれからも、彼にも言えない彼女だけが抱えて

心に蓄積し続けるであろう数々の苦しみと秘密は沢山あれど、

それを知ってか知らずか横でニコニコ笑ってくれる平尾くん。

 

そんな彼は、世話がやけるし恋愛感情はありませんが、

深山刑事にとってなくてはならない存在だと思います。

 

平尾くんとのコンビ、楽しかったな合格

またいつか、やりたいです。

 

そして重要参考人・増淵伊織を演じてくれた

リンワン以来の共演の中川ミコちゃん。

 

相変わらず元気いっぱいで癒されましたドキドキ

役は打って変わって本当に辛い役に果敢に挑戦していて、

稽古場でいつも刺激をもらっていました。

 

ちなみに最初に増淵と対面する時は、

もしかしたら嘘かもしれないと冷静に値踏みする目で

彼女を見つめていました。

きっとそうやって嘘の証言をする人達にも、

今までたくさん出会ってきているでしょうから。

 

でも傷を見て、彼女の目を見て、

長年の勘で彼女の証言を信じると決めてからは、

一気に懐に入れていました。

 

彼女も過去を乗り越えて一歩踏み出す最後を迎えてくれて

本当に良かった。

最後のミコとのアドリブ応酬は

なんだかリンワンを思い出して楽しかったです。笑

 

行方不明者の弟・藤林武彦役、Wキャストの松村茂樹くん。

オーティス3以来の共演が叶いました合格

 

Wキャストならではの醍醐味。

ヘラさんとはまた一味違った松村くんの武彦くん。

どちらも本当に良い味があって、相手が出来て楽しかったです。

 

ヘラさんの真っ直ぐな武彦くんと比べ、

どこか頭が良いというか、より強く知性を感じる武彦くん。

素直に訴えてくる真っ直ぐなヘラさん武彦と、

警察への憤りも混ぜて訴えてくる松村くん武彦。

 

どちらの武彦くんも、そして増淵さんも、

懐に入れてからは本当に本当に可愛かった。

何としてでも守りたいし、救いたいし、

この子達の7年間を終わらせてあげたいと

心から思っていました。

 

前回は選挙プランナーと、候補者の弟という間柄。

今回も刑事と不明者の弟という少し似た設定ながらも、

また全然違った関係性を築くことができて嬉しかったですラブラブ

 

ちなみにその時に着ていた咲間さんスーツと、

今回の深山刑事スーツが同じ物だったのはここだけの秘密。。

 

同じく武彦役、Wキャストの高崎ヘラクライスト竜爾さん。

 

本来はミュージシャンさん。

なのですが、あのですね、本当に素直な話、

ヘラさんは物凄くお芝居の才能がある方だと思います。

 

本当に本気で「この人、やばい」と思った人。

一緒にお芝居ができて本当に楽しかった・・・!!!!

こんな感覚に陥ったのは久しぶりです。

 

本当に、その場に居ることができる人。

本当に、その瞬間に相手の言葉を聞くことができる人。

目が、本当に「今、この瞬間」をリアルに見つめてるんです。

舞台上で目の前に本当にいてくれて、話を聞いてくれて、

呼吸をしてくれている。

そんな人に久しぶりに出会いました。

 

ちょっとコレはやばいぞ、と思いつつ、

物凄くゾクゾクワクワクして、

こちらもその境地でその場に生きられるように臨んでいました。

ヘラさんとお芝居するの本当に楽しかった!本当に!

 

役者さんとして、またいつか共演させて頂きたいです。

本当に有難うございました!

 

可愛い女子高生たち、

第三の被害者・伊藤詩織こと矢野くるみちゃんと、

切なすぎる運命を辿った藤林めぐみこと花音ちゃん。

 

作中において、

この2人の場面はオアシス的な要素もありながらも、

末路を知ると切ない気持ちに陥る場面でもありました。

 

深山刑事としては、伊藤詩織の遺体写真は見ているので、

彼女の「平凡な日常」を知れば知るほど苦しかったし、

藤林めぐみという、

ごく普通の女の子を何としてでも救いたかった。

 

最後にみのりの姿となった藤林めぐみと対峙した時、

過去の彼女の姿と日常を知っているからこそ

間に合わなくてごめんなさい、

警察という組織では何もできなくてごめんなさい、

という思いがとめどなく押し寄せていました。

 

深山刑事にとって、

7年前の事件を解決し藤林めぐみを見つけ出す思いを

毎回奮い立たせ確固たるものにしてくれていたのは、

この2人の無邪気な姿でした。

 

本当に愛おしくて切ない景色。

そんな掛け替えのない日常の風景を、

毎回瑞々しく出現させてくれて本当に有難うございました!

 

 

・・・と、先ずは終演ご報告をするつもりが、

何だか妙に長くなってきてしまいました。。

 

実は今回、私にしては珍しい事に

全キャストと一緒に写真を撮る事ができたので、

今日は刑事サイドの皆様のご紹介のみにして、

また明日以降、他の皆様の事も書かせていただきますねあせる

 

まだ頭の中が上手く整理できていないので、

相変わらず支離滅裂な長文となってしまって申し訳ありません。

また後日、加筆修正していくと思います。。

 

本当に信頼のできるメンバーに恵まれた座組で、

一丸となって走り抜ける事のできた公演。

 

今年最後に立つ舞台がこの作品で本当に幸せでした。

 

支えてくださった全ての皆様に、

そしてご来場くださりこの作品を見届けてくださった皆様に、

心から感謝と御礼申し上げます。

 

本当に有難うございました・・・!

 

まずは取り急ぎ、ご報告と御礼申し上げます。

 

改めまして、

この度はご来場、誠にありがとうございました!!