〇きっかけ

 先日蝋梅で綿を染めた際、一度目に染料をつけた際にはあまり色がつかなかったが、ミョウバンで媒染後に再度染料につけると濃い色に染まった。このことを前回までの勉強から分析すると、媒染液の中のアルミニウムイオンが繊維と色素の仲立ちをしてくれたことで、分子同士がより結合しやすくなった結果、よりよく染まったことが考えられる。

 しかし、重曹の媒染液につけた方は、その場で色が濃くなったが、二度目に染料をつけた時にはあまり色が入ることはなかった。今回はこの現象について考えていく。

 

〇草木染とペーハーの関係

 草木からはアントシアンという色素がとられることがある。このアントシアンという色素は、

酸性だとピンクっぽく、

アルカリ性だと青っぽく

色変わりする性質をもつ。

 

 草木染を経験している人の中には、重曹を入れることで、媒染液や布全体がアルカリ性になり、色素の黄味が強く出ると経験的に感じている人がいる。

(クエン酸などの酸性の媒染液の場合は、色素の赤味が薄くなると感じることもあるらしい。)

 

 よって、重曹によってアルカリ性に傾くことで、アントシアンかもしくは他のペーハーに反応する色素によって色味が変化することで、’色が揚がった’と感じたのかもしれない。

 

 ’紅花’をつかった染物では、ペーハーを調整することで色を出したり、色を定着させたりという方法が用いられることがあるようだ。きっと草木から取り出す様々な色素の中には、ある条件下(ペーハーや温度等)で、色味が変化したり、染まりやすくなったり、色が定着したりするものもあるのだろう。

 

〇重曹は色止めできるのか

 重曹のアルカリが色素に変化をもたらすことを蝋梅染で経験した。

しかし、前回の勉強では金属イオンには色落ちしにくいはたらきもあることを学んだが、このはたらきは重曹にもあるんだろうか。このことについては、残念ながら本からの情報では明らかにすることができなかった。

 

 蝋梅染の経験では、二度目に染料につけた時にはあまり布が染まることはなかった。他の草木染をする方にも、重曹を使って染料を作った場合に色が入りにくいと感じることがあったらしい。よって、重曹には色素が繊維に入りづらくなるはたらきをもっていることが考えられる。なので、もしかするとその逆の繊維から色素が出ていくことをとめるはたらきもあるのかもしれない。(はたまた、ないのかもしれない。)

 

〇重曹の注意点

 アルカリ性の重曹は、動物性の繊維を壊してしまうので、シルクやウールを染める時には使用しない方がよい。私は綿の布巾を染めたが、綿の繊維が壊れるということはなかった。

 

 アルカリは二酸化炭素を吸って酸性にかたむいていく性質があるようなので、重曹で色揚げをしても、褪せていくことがおおいそうだ。実際に私の蝋梅染も乾かす前と後とではミョウバンのものよりも発色が落ちていたように感じる。

 

〇ふりかえり

 草木染の全てが明らかになっていないからこそ、自分の経験をもとにあれやこれやと考えることができる。今回の考察により、さらなる草木染の深みにはまってしまったような気がしている。

 アルカリで色を揚げた布巾については、おそらく退色も早いのではないかと予想されるが、それは劣化ではなく’変化’といった個性であると。そんなふうに時が経つことを楽しんでいきたい。

 

蝋梅染の布を乾燥させたもの。ほんのり黄色に色づいているが、どちらが重曹でどちらがミョウバンで媒染したのか分からなくなってしまった。

 

◆’酸’で染める方法についてはこちら↓

 

 

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