北京日報で羽生結弦選手の衣装について記事が紹介されていましたので、ご紹介しますね。お写真は元記事についているものはほとんど流用していないので、内容にあうお写真を選んで、貼っています。画面撮りの写真については見やすく加工しています。
北京日報 3月21日 16:59
一部省略、ざっくり意訳します
氷上の羽衣：羽生結弦とともに進化した見事なコスチュームたち
2月20日、2022年北京冬季オリンピックのフィギュアスケート・パフォーマンス・スケートで「春よ、来い」を披露する羽生結弦
春之华服 春の装い
2月20日に行われた北京冬季オリンピックのフィギュアスケートの演技では、 日本の男子フィギュアスケート選手の羽生結弦が「春よ、来い」の演技を披露した。
メロディアスで重厚なピアノの音色に合わせ、ピンクと白の衣装を身に纏った羽生結弦がゆっくりとリンクに上がり、リズムに合わせて舞いを披露しました。 演技の最後には、氷上にひれ伏し、両手で体を支えながら、氷に深くキスをする「氷上キス」の儀式を涙ながらに再現し、中国の観客に完全な、視覚的饗宴（目の保養）を届けたのです。
天女の羽衣とも呼ばれるピンクと白の衣装は、花びらのようなピンクの濃淡が幹のグレーと新芽の黄緑を引き立て、春の桜を象徴しています。 羽のような薄いシルクが羽生の動きに合わせてひらひらと舞い、スレンダーでハンサムな羽生結弦に、軽やかで女性らしい「妖精のような」表情を与えていました。
髪の毛の約1/5の直径の超極細シルクを使用した超軽量生地は、キラキラとした光沢とシルクのような肌触りです。
衣装がパフォーマンスに溶け込み、見た目の美しさを最大限に引き出すことを実現していました。
衣装はフィギュアスケートのプログラムの重要な一部です。スケーターが自由に動けるように軽くて柔軟であることはもちろん、スケーターの動きや感情を乗せて、演技に華を添えるものでなければなりません。
そのため、衣装の形、色、コーディネートは、選ばれた曲や振付と一致していなければならず、技術的にも芸術的にも、全体的な芸術表現の重要な部分です。
羽生結弦の演技を見ていると、音楽と衣装で雰囲気を作り出し、スポーツとアートの素晴らしさを結合させ、その（観客への）感染力のある表現、動き、演技スタイルは、しばしば競技であることを忘れさせるほどの感情移入を観客にもたらします。
从妈妈的针线开始
母親の針と糸が始まり
羽生が子どもの頃から、オリンピックで優勝するまでには、10年の歳月が必要でした。羽生の母は費用の節約のために衣装をほとんど手作りしていました。時には他の家族も衣装作りを手伝うこともあったそうです。この当時の衣装はシンプルな作りで、トップスの曲線的なデザインなどを上手に活かしていました。
そしてシニアに上がって初めて作った衣装は、羽生の憧れのアメリカ人スケーターのジョニー・ウィアーがデザインした「ツィゴイネルワイゼン」でした。
ネックラインのフリルレースは、肩のクロスしたリボンと合わせ、身頃にはラインストーン。 このスタイルは、ジョニー・ウィアーの好んでいた細身のシルエットで、軽やかで個性的な演技スタイルが、この衣装にも表現されていました。
ジョニー・ウィアーがデザインし、羽生の母が手縫いで仕上げた
また、ジョニー・ウィアーが羽生結弦のためにデザインした衣装には2014年ソチオリンピック。羽生が初優勝した時の「ロミオとジュリエット2.0ver」が有名です。
羽生は「ロミオとジュリエットでは、男女両方の主人公の感情を表現する必要があったため、『ロミオ2.0ver』では性別が曖昧になり、胸元の切り込みの一方は深く、もう片方には透明＋ピンク、緑、赤のストーンをたくさん使用しています」と語っています。 コントラストがとてもシャープな2.0verは、衣装全体をホワイトで統一し、鮮やかなローズ、ペールピンク、ブライトイエロー、エメラルドグリーンのラインストーンをあしらい、より大胆で豊かな色彩を表現しています。 ウエストと腕から指先にかけてはブラックに変化していき、虹色のブライトダイヤモンドをあしらった大きなフリルがボディを斜めに横切るデザインです。
羽生結弦の「ロミオとジュリエット2.0ver」
2011-2012シーズン。羽生のフリーは、作曲家クレイグ・アームストロングによるポストモダン版「ロミオとジュリエット」でした。 白とベージュを基調とした衣装で、右側にはロミオを表すストラップが織り込まれ、左側にはジュリエットを表す大きなベージュのカットアウトが施されていました。そして 幅広の銀色の帯を巻きつけていたのは、闘いの場では、勇敢で恐れを知らない少年の鎧となり、ロミオの束縛された愛の象徴でもありました。
衣袖·翅膀·衣摆 袖 ・羽 ・裾
2014-2015シーズンの羽生結弦は、ショートプログラムにショパンの名曲「バラード第１番」を選びました。 競技用衣装は、白から青へのグラデーションカラーで、青いクリスタルストーンを縦に並べた装飾が施されていました。 リンクを滑り、踊るときに見た目から「風を感じる」ことができるバルーン風の膨らんだ袖は、この有名なプログラムの、落ち着きと静かな部分を最もよく表しています。
この「バラード第１番」の衣装は、89歳を超える日本のベテランファッションデザイナーの永島正がデザインしたものでした。
バラード第１番が3シーズン続いたため、この衣装は何度も修正されました。
最初の青いグラデーション、高い襟、黒のウエストバンド、ふくらんだ袖、軽く、風が通り抜けるようなイメージは維持し、後にスカイブルーのグラデーションに、襟、袖、ウエストバンドに金の要素を追加されました。そして王者にふさわしいスタイルに仕立てられた豪華で荘厳なものになっていきました。
3つの衣装「叙的衣袖（バラード第1番の袖）、九的翅膀（Hope & legacyの左肩のひらひら＝空飛ぶ翼）、“晴明的衣摆（SEIMEIの裾）」。
後者2つはいずれもデザイナー伊藤聡美の作品です。さらに、それに加えて「天と地のレクイエム」も彼女の代表作の一つ。
"九的翅膀 Wings of Nine "は2016-2017シーズンの久石譲の「Hope & legacy」の衣装の左肩にあるフライングスリーブのことです。空飛ぶ翼に似ており、どん底を経験した羽生結弦の強さの象徴でもありました。
空、大地、氷を象徴する青と緑のグラデーションを重ねた和の要素を持つこの衣装は、羽生が旅の途中に刻んで行った煌めきを、これまでにないほどの密度でストーンで装飾されました。久石譲の音楽とぴったりとマッチしています。
その衣装は、中国の九寨溝（Jiuzhaigou Valley）にある湖の深く静かな水の流れに似ていました。
九寨溝（Jiuzhaigou Valley）
そのため、羽生の姿がまるで妖精のようだと、中国のファンからは「小九、九仙」というニックネームで呼ばれるようになりました。
"晴明的衣 "とは、2018年平昌冬季オリンピックの "晴明（SEIMEI）"狩衣風の裾のことを指します。伊藤聡美は、羽生結弦とともに、平安時代の歴史ある狩衣服をベースにしました。色や素材、視覚効果などは羽生自身が決定し、アレンジと微調整を繰り返した。 この衣装は、羽生の演技に華を添え、彼のキャリアの中でも最も権威のあるものとなっています。
デザインの過程で、白地に植物のモチーフ、黄緑、紫を配し、陰陽師のシンボルである金色の「五芒星」も加わりました。 衣装の色も少し変更され、紫に深い赤が混ざり、リボンも緑がかった青となりました。 肩の袖は、映画「陰陽師」にならっています。一体として完全に縫い付けられていない理由として、スケート衣装として動きやすさを考慮してのことでした。
羽生の要望は、カフスの外側から内側にかけて、紫、金、緑、白の4色で、これまでのバージョンとは一線を画していました。衣装の前身頃と後身頃にあったたくさんの刺繍をなくし、3,000個のラインストーンを使った飾りに変更しました。胸元はメッシュ生地にし衣装の軽量化とジャンプのしやすさを実現しています。 ベルトはよりエレガントなゴールドカラーに変更され、様々なサイズのストーンがあしらわれています。 黒い手袋と白い氷のコントラストで、手の動きも強調しました。
比完美更完整 比柔美更有力量
完璧さよりも完成度 柔らかさよりも力強さ
「オペラ座の怪人」の赤バージョンの衣装は、丹念に製作されたものでしたが、一度着用しただとなりました。 2014年の中国杯で羽生結弦がに着用されましたが、衝突事故で血が衣装について取れなかったため、再び着用する機会はありませんでした。
その後、伊藤聡美が別バージョンをデザインしました。
羽生は白、青、金を指定し、エレガントで貴族的な雰囲気となりました。衣装の模様は氷のような色調のマーブリングで、絞ったようなデザインはファントムの心から溶け出すねじれた愛と哀しみを象徴しています。 襟の折り返しも羽生から着想を得たもので、襟、カフス、ウエストに施されたゴールドのチュールレースのデザインは、ロマン派の時代へのオマージュです。 この衣装によって、羽生は天使と怪人が絡み合うメランコリーなムードを表現していました。
2021年序奏とロンド・カプリチオーソは、全日本選手権でショートプログラムでデビューしました。今年の北京冬季オリンピックの羽生のショートプログラムにもなりました。
この衣装は、これまでの衣装の集大成、羽生のイメージがずっとつながっていると言えるでしょう。 ショパンの「バラード第１番」の襟、「Otnal」の音色、「天と地のレクイエム」や「オペラ座の怪人2.0」の裾、「ノッテステラーター星降る夜」の大きく開いたVネック、「ファイナル・タイムトラベラー」の袖。
そして、金色の羽根は、淡い憂いを経験した後の涅槃（※仏教においては、煩悩を滅尽して悟りの智慧（菩提）を完成した境地のこと）の再生のように、きらきらと輝いているのです。
このフランスの音楽家サン＝サーンスの選曲のように、過去の挫折や苦難を経験し、その後滑らかに滑り落ちていく、まさに着ている者の心境を体現したもので、羽生の月桂冠（オリンピック金メダル）への道のりの試練と苦難や、細身でありながらも強靭であり、哀愁を帯びていても温もりにあふれ、孤独であっても温かく、執念と期待、傷と癒、元気と喜びを一つ一つ明らかにしながら解釈していました。
2月10日羽生は「天と地と」でスケートの芸術性を追求すると語った。
上杉謙信の「天と地と」は荘厳かつ重厚な曲であり、 衣装は、花鳥をあしらった紺碧の柔らかな日本風の衣装でした。
日本伝統の袴の要素を取り入れた帯を加えており、背中には上杉家の家紋である「竹に雀」と仏教の霊木の花、沙羅双樹を刺繍してあります。 火に生まれ変わった猛禽類のように、沙羅双樹が咲き誇り、シルクの着物に鸞（神霊の精が鳥と化したもの）の尾、この滑らかな衣装は羽生結弦にとって「甲冑」というよりも力強いローブとなりました。
2月10日。羽生結弦は「天と地と」で男子シングルスケーティング・フリーを演じました。
音楽が流れる中、羽生は前進し、ジャンプ、回転、着氷、転倒、立ち上がり、また転倒、立ち上がり......と、そして、その後すべての技を完璧にこなしたのです
羽生は試合で4回転アクセルを試みました。残念ながら氷上で2度転倒し、表彰台にはいたりませんでした。競技終了後、羽生は観客に向かって長い一礼をし、涙を滲ませました。
「努力は嘘をつく、でも無駄にはならない」と以前、羽生は語っていました。
羽生は4回転アクセルへの深いこだわりがあります。
戦場で殉じ、世の中の無常を犠牲にし、枯れる運命にあるものの哀しみを解釈し、不完全の中に完全を求める羽生結弦の生き様をみせました。
羽生結弦は、「春よ、来い。」について
「人生、春を待つのは苦難を乗り越えた時です」と言ったことがありました。 羽生の侍のような義理堅さや、人間味溢れる優しさと、心の落ち着きを感じた瞬間でした。
坚持下去，春天，总会来的。
頑張ってください、春は必ずやって来ます。
ざっくり意訳終わり
いかがでしたでしょうか？3月21日に配信された記事です。ファンからの投稿なのかな？とも思ったのですけれど、とくに記載がないようなので、北京日報の独自記事なのかな？と思って読んでいましたけれど。これまでと少し観点がちがう内容で、興味深く拝見しましたので、日本人ではわかりにくい部分を補いながらまとめ直したものです。中国語がむずかしくて、ちょっと正確性には欠けているのですけれども、最後に「がんばって！」「春は来るよ！」と羽生選手への熱いエールを感じて、つまり、応援してくれていたんだなって。みんなに春をプレゼントしてくれている羽生選手へ、世界選手権も始まり、足の怪我で出場できない羽生選手を思ってのタイミングだったのではないかなと、勝手に感じたのでした。過去を振り返りながら、懐かしさもこみあげてきますね。どの演技も、どの衣装も、すべてが羽生選手を形づくっているのだなって。
そして、やはり音楽、芸術性、技術、衣装、振り付けのすべてがそろってこそ、フィギュアスケートなんだと、あらためて感じました。
すべてを大切にされているから、多くの人を魅了する。
そして「感染力」はやっぱり、スケーター自身の考え方、生き方が反映するものであり、それは、誰にも真似できることはできないのですよね。
羽生選手の演技が、とてもとてもみたいくなってしまいますね。本当に、その日まで待ちきれないですけれども、しっかりと、待ちたいって思っています。
秘密の小鳥の刺繍が左脇のところにあり話題にもなりましたね。
以下参考資料やソースとなります。
新華社通信写真特集：フリーだけで67枚
https://www.afpbb.com/articles/-/3390544
抻面雞架yuzuさん 2020-10-20 に衣装まとめ
記事や衣装合わせの動画も紹介されています。
こちらは2010年の衣装製作の様子。
動画リンク貼らせていただきますね