昭和16年6月・・・
満州第二の古都「奉天」の初夏の空は澄み渡り
青空がまぶしく輝いていた、
そんな日曜日 例によって三人は瀋陽区にある
「久保」の父親が経営する貿易商社裏の
彼の部屋に集まった
「これから行く城内は日本人が一人で入ると
いまだに危険なんだ、こいつに着替えてくれ
」三人は、「久保」が用意した中国服に着替えた、
そしてガラガラと馬車にゆられ・・目的地に向かった、
どのくらい時間が経過したのか・・・
やがて十数メートルものレンガを積み重ねた
見事な城門と銃眼を連ねた城壁が視界に飛び込んできた
なんだか三国志の関羽や張飛が飛び出してきそうやな」
「な~に出てくるのは乞食と泥棒さ」
三人は城門外で馬車を乗り捨てた
高い城壁の下に泥塗りの低い家並みが続き
ジメジメした迷路が四方八方に走っていた
「おい!あれだ!日雇い労働者が
ずらっと並んでるだろう最低のピー屋さ」
「ピー屋ってなんだい」
「女のあれをピーっていうのさ」
満州生まれの「久保」はさすがに詳しい・・・
掘っ立て小屋の前に2~30人の薄汚れた
男たちが列を作り順番を待っている光景は
異様な感じだ
「素知らぬ顔で並ぶんだ」
「高橋」が押し殺した小声で耳打ちした、
男たちは多分卑猥な話に花を咲かせているのだろう
声高にわめき合ってはゲラゲラと笑う
「久保」と「高橋」も日本人と思われないように
中国語でしゃべり合っている
「買売興旺起来了・・・(商売さかんだ)」
「然、今熟了・・・(しかし、今日は暑い)」
「昇」は黙って並んでいた
胸がせわしなく高鳴りドキドキと自分の動悸が
聞こえるほどだった!
男たちは金を握り締めて
一人ひとり破れた扉を押しては姿を消してゆく
4~5分の者もいれば
あっけなく出てくる者もいる
一様にズボンをずりあげながら
照れかくしにニヤニヤしながら出てくる
「昇」の番が近づいてきた
「おい!久保なんて言えばいいんだ」
「金を出して ピー看看 って言えばいいんだ
あいつらのは凄い梅毒で腐ってるから
絶対に触っちゃ駄目だぜ」
「わかった」・・・
おいおいコンドームしなくて大丈夫なのか?梅毒だろう!
こわいな~(夕貴の心配を一言、失礼しました)
「それ以上たずねる事はなんとなく はばかる気持ちで
「昇」は短く納得した!
現在の邦貨に換算すれば
おそらく百円か二百円ぐらいだろう・・
・まず「高橋」が入った・・・
満州生まれの「高橋」は達者な中国語で
二言三言しゃべると
その扉を押して出てきた、
いよいよ「昇」の番が来た
早鐘のように胸が高鳴る
<日本男児>がこれしきの事に驚いてたまるか・・
「昇」は意を決して扉を押した
途端になんともいえぬ むせ返るような異臭が鼻をつく
薄暗い一畳ほどの土間に
50センチほどの高さの木の寝台らしきものが置かれ、
その上にどぎつい化粧の女が
赤い花模様の中国服の裾を捲り上げ
あられもないほどに股を開いて寝ている、
面倒くさいから早くおやり・・・
という格好だ、
薄暗がりに女の足が沁みるように白く浮かび上がり、
処置する間もない濡れた部分が生き物のように
赤い口を開いていた、
「昇」は足がふるえ嘔吐感を催した
「シャオ ハイカイ 「カイデー(坊や早くおやり)」
「物憂くけだるい声で女が真っ赤な唇を開いた、
その歯は異様なまでに白かった
「昇」は「久保」に教わった、ピーカンカン どころではなかった!
「シェーシェー」・満州に来て最初に覚えた言葉を
かろうじて口にすると
金を女のほうに投げるようにして表に出た・・・
それは、ほんの数秒の出来事だった!
外は初夏のキラキラした日差しが溢れていた
若い中学生の三人は異常に興奮していた
<あれが女・あれが人間>
童貞の「昇」の頭の中に長い間
白日夢のように赤い中国服を着た女の
ピーがクローズアップされていた
卓球 ブログランキングへ