次男の高校の卒業式があった。
私は何日も前から、出勤ラッシュの時間にスーツを着て電車に乗って遠い高校まで出向くのが憂鬱で仕方なかった。
でもこれで最後だと思うと晴れ晴れとした気分だった。
もちろん電車では座れなかったけど。
高校の講堂で、陸上部のママたちと一緒に座って校長先生やPTA会長さんや他の先生たちの式辞を聞いた。
式が終わってからの待ち時間、高校生活の思い出のビデオが流された。
次男の学年は人数が多いので何百人もいる中からわが子を探すのは大変だよね、と言いながら他のママたちとビデオを見ていた。
その中に文化祭で次男が舞台の上でマイクを持って歌っている写真が流れた。
他のママたちに言われてれてそれが次男だと気が付いたのだけど、私は次男が文化祭で歌を歌ったことなど全然知らなかった。
知っていたらはるばる高校まで出向いたかも知れない。
それからもう一つ、衝撃の事実を知った。
次男に彼女がいた。
それも陸上部のママたちは皆知っていて、知らないのは私だけだった。
仲良くしてくれているママは子供に次男の彼女の写真まで見せてもらったと言う。
私は全く知らなかったのでとにかく驚いた。
私は次男が高校に上がる前から、息子に彼女ができてその彼女がお弁当を作ってくれるのを夢見ていたのだけど、それは叶わなかった。
でも嬉しい。
たぶんウチからは遠くに住んでいるだろうけど、いつか会えるといいなと思った。
そして、講堂での式が終わって教室に移り、部活の後輩たちがお別れ会を開いてくれた。
後輩たちが部活の様子のビデオを流してくれて、卒業生がそれぞれ一人ずつ前に出て後輩や先生に向けて話をした。
そのうちの数人は泣きながら話す子もいて、ママたちも泣いていた。
頑張ったけど、怪我ばかりで思うように走れなかった子。
持病があって記録を伸ばせなくてそれを他の部員たちに泣きながら詫びる子。
ママたちは泣きながら「そんなことないよ」と声をかけていた。
皆、朝4時や5時に起きて朝練に参加して、本当によく頑張ったと思う。
大学でも陸上を続けて、関東の大学に進む子は箱根駅伝を目指すし、関西の子は出雲駅伝を目指して、皆それぞれ次の目標に向かって進む決意をしていた。
その後、先生からの話があった。
私はその話を聞いてがっかりした。
先生は思い付きで一人ひとりへの言葉をかけていたけど、それは心温まるような言葉ではなかった。
次男への言葉は「文化祭で歌っていたことくらいしかないな」と言われてしまった。
朝早く起きて始発に乗って最後まで頑張ったことなど、先生の頭にはなかった。
走るのが速い子が上の大会に行ったことに対しては「違う景色を見せてくれた」などと感謝していたし、インターハイに出た子に対してもそれをねぎらう言葉は言っていたけど、それ以外の子に対しては「〇〇はいじられキャラで皆に可愛がられた」とか「〇〇とは意見が合わず喧嘩ばかりしていた」とか、なんで最後に生徒をねぎらう言葉をかけられないんだろうと思った。
思い付きではなくて一人ひとりへの言葉をメモに書くなりして話せばよかったのに。
生徒の言葉の方がよっぽど心に響いた。
部内の10数人の卒業生の中で進路が決まっていないのは次男ともう1人だけだ。
二人とも国公立2次の前期の結果待ちと後期受験が残っている。
そして陸上を続けないのはたぶん次男を含め数人だと思う。
次男ももう自分の体を酷使して限界を超えて走ることは無理だと思ったようだし、私は正直ほっとしている。
ただ、次男に何をしたいか聞いても「とにかくゲームがやりたい」と言うのにはちょっと首をかしげてしまうのだけど。
そしてママたち数人と遅いランチをして帰った。
実を言うとママたちの間で最後の最後でもめ事があった。
先生や卒業生に贈り物をどうするかで意見がまとまらなかったのだ。
私は最後まで皆で仲良くして気分よく終わりたかったのだけど、なかなか10数人もいると意見をまとめるのは難しかったようだった。
だからランチに誘いたい人がいたけど誘えなかったのがちょっと心残りだ。
一番仲良くしてくれたママの子に次男が貸したものがあって、まだ返してもらっていないことが判明したのでこれからまたちょくちょくランチをしにそこの市まで出向こうかと思う。
高校よりは近くで。
さすがに一日スーツを着てヒールを履いて過ごしたのでとても疲れた。
ヒールでじっと立ったままの時間も長かったし。
ダンナは有休をとって家にいて、駅まで私を迎えに来ることになっていたのに、何回もラインをしたのに気が付かず（いつもの事だけど）、結局強風が吹き荒れるめちゃくちゃ寒い中、歩いて帰った。
家に着くとダンナはテレビを見ていた。全く当てにならん。
慣れないスーツとヒールのおかげで翌日は背中と腰が筋肉痛になってしまった。