ある年の初夏、ウチの子供たちと近所の高原で虫を捕っていた時のことです。
娘の手に飛来したオオオビヒラタアブを撮影していると、「お父さん、採れた~」と息子の声。
息子の網の中を見ると、大きめなヒゲナガハナアブが入っていました。
『…おや?』と思いつつ、管ビンに移して見てみると、
「……おっ、おお!…いいね!これいいよ!! いや、ほんと、すごい!!ど、 どこにいたの?…」
一見サッポロヒゲナガハナアブのようでしたが、やや大きく全体的に黄色が強い印象のそのハナアブは、まさに私が探していたものでした。
ニセサッポロヒゲナガハナアブ Chrysotoxum graciosum ♂. 伊那谷産.
息子には、たまに良い虫を先に採られてしまいます。
じつは、従来「サッポロヒゲナガハナアブ」とか「ヒゲナガハナアブ」等とされていたものには、明確に識別できない点が多々あり、それら種群は長い間「サッポロヒゲナガハナアブ?」とか「よくわからないもの」としてハナアブ愛好家にも疑問が持たれていました。
ところが、2013年に韓国の研究者らが発表した論文により、事態は動きます。
詳細はややこしいのでここでは割愛しますが、これまでサッポロヒゲナガハナアブ(あるいはその近似種)とされていたモノの中には、「真のサッポロヒゲナガハナアブ」と「それ(ら)とは異なる別種」が含まれていたことがわかったのです。
その別種は、以前は日本に分布しないとされていたモノだったため和名がなく、私はいくつかの地元産標本を集めて、形態計測データを加えて、「ニセサッポロヒゲナガハナアブ」という和名を付けて2025年に専門誌「はなあぶ」で報告しました。
―息子が採集した標本は、この時の貴重な1頭となったワケです。
ニセサッポロはサッポロに酷似していますが、後脚や腹部腹面、触角各節の比率といった細部を確認することで識別できます。
また、全体的に大きく、腹部もやや長く、腹部背面の斑紋がやや太いといった特徴もあります。
サッポロを沢山見ていると、たまに大きめで黄色味が強いモノに気付くのですが、そういう個体の細かい部分を見ることでニセサッポロだとわかります。(生きたままでも、管ビンに入れて腹側の色彩を確認することでほぼわかります)
「ハナアブハンドブック」にも掲載していますので、今後、各地から生息情報が届くことを期待しています。
「サッポロヒゲナガハナアブ?」を見つけた際はぜひ、識別にチャレンジしてみてちょんまげ。 ~8
筆者注:日本産ヒゲナガハナアブ属の分類はまだまだ道半ば。私もまだまだ勉強中で、腑に落ちないところもままあります。これからも研究を続けてまいりますので、皆様のご協力をお願いします。

