フィールドに出る時間が増えるにつれて、自然を見る眼の「解像度」が、より鮮明になってきました。

 

これまで月に1日だったものを、週に1日、一人でじっくりと自然を見る時間にしたら、それだけで次々と新しい発見ができるようになりました。

 

先日は近所で、大好きなハマダラハルカの多産地を見つけました。

ハマダラハルカ Harua elegans Okada, 1938. 

13.Ⅳ.2023. Ina-valley. Nagano. Japan.

 

ハマダラハルカはこれまでに、森でチラッと見かけたり、家の外壁に偶然ついていたものを見つけたりということはあったのですが、今回は近所の森で10頭を超える個体が確認でき、配偶行動や交尾行動もじっくり観察できました。

 

配偶行動はなかなか面白く、立木の樹皮上に止まっている個体が飛び立っては30センチほど飛んで戻り、再び木に止まるというのを繰り返すのですが、1個体が飛んできて木に止まると、そばで止まっていた別個体が飛びたち、その個体がまた木に戻ると、その近くに止まっていた個体がまた飛び立つというものです。

 

見ているとピョーン、ピョーンと交互に飛び立っては止まるというのを繰り返し、まるでシーソーのよう。

 

―恋なんて いわばエゴとエゴのシーソーゲーム Ah~ ♪―(by. Mr.Children)

 

ピョーン、ピョーン、ピョーン…

 

そのうち、木に止まったまま動かない個体に、別の個体が飛んできて抱き着き、そのまま交尾が始まりました↓(わお!)

ハマダラハルカの交尾(互いに反対方向を向いて行われる)

 

どうやら、先のシーソーゲームはオス同士がピョンピョン飛び合って、メスは飛ばずにじっとしていて、オスはそれを見つけて抱き着き、交尾に入るというルールのようです。あるいは、交尾を受け入れられないメスも、シーソーゲームに参加しているのでしょうか。

 

交尾行動がみられた立木は広葉樹の枯れ木で、これはおそらく幼虫が不朽木を食べるハマダラハルカが、交尾後にそこで産卵を行うために都合がよいため、そこで配偶行動を行っている可能性があるのでしょう。ただ、別の生きたカラマツの立木上でも配偶行動をしていたため、必ずしも幼虫の生息場所で配偶行動が行われるとはいえないとも。うーむ・・・

 

ピョーン、ピョーン、ピョーン・・・

 

古い地質時代からの生き残りといわれるハルカが、脈々と受け継いできた恋の儀式。

 

その不思議なダンスを目にしながら、遥か大古の森を想像する。

 

恐竜絶滅も、氷河期も超えて、こうして生き抜いてきた小さな命たちが、私にはとても偉大な存在に思えてならない。

 

 

※ハマダラハルカの補足:ハルカ科は世界に3種が遺存的に分布。そのうちハマダラハルカは日本の本州、四国、九州だけに分布。古い地質時代には多くの種類がいたとされ、ハエ類の分類学上もきわめて貴重な種。環境省レッドリストではDD(情報不足)、その他複数の都道府県で情報不足ないし要注意種(三重県では絶滅危惧Ⅱ類)。