詳しくは見ていませんが、今回のロ朝の『包括的戦略パートナーシップ条約』は、ロシアが北朝鮮に押し切られたような雰囲気がありますね。

 
北朝鮮は、共同声明の時点から、「両国の戦略的互恵関係は、高いレベルに達した」と言い続けていますが、ロシアは、プーチン帰国後に同様の発言をした程度です。
 
両国間では、かなりの温度差があるように感じます。
 
 
 
そもそも、ロシアは、今回の条約を結びたくなかったと思われます。
 
相手国が武力侵攻を受けた際、あらゆる軍事的支援を行うことを、条約の第4条に盛り込んだようですが、これは北朝鮮のみにメリットがあると言えます。
ロシアが戦争状態になるとすれば、中央アジアか東欧である可能性が高いのですが、北朝鮮には、その地まで兵力を移動させる能力があるとは思えません。
また、海上戦力も高くなく、海上封鎖ができるとは思えません。
なので、北朝鮮がロシアにできることは、現状と同じような弾薬の供給くらいです。
逆に、北朝鮮が韓国と戦争を始めたなら、その戦争にロシアが巻き込まれることになります。
民主的に選ばれていない専制君主国に、そこまで肩入れする理由がロシアにはありません。
下手をすると、国民からの反発を受けるリスクもあります。
 
朝鮮戦争が再開したなら,当然、アメリカを相手にしなければなりません。
北朝鮮が核を使いでもすれば、アメリカがロシアに核を撃ち込む可能性さえ出てきます。
できることなら、この条文を入れたくなかったと思います。
「参戦する」とはしなかったのは、ロシアの抵抗かもしれません。
 
 
北朝鮮は、韓国が保守政権に代わり、日米に接近したことに、不安を感じているのでしょう。
アメリカは、元々力の外交を好み、日本も、巡航ミサイルを配備するなど、強い危機感を持っていると思われます。
北朝鮮の核開発は、アメリカに対する核抑止力に期待してのことです。
北朝鮮は、アメリカが通常兵器で攻撃してきた時に、通常兵器では太刀打ちできるはずもありません。
かと言って、核で反撃すれば、アメリカも核で反撃する可能性があり、現政権を維持することが難しいことを理解しているのです。
なので、後ろ盾が欲しいのです。
 
ですが、国内の貧困化が酷い北朝鮮を、中国も相手にしたくないのでしょう。
北朝鮮で反革命が起きた時、北朝鮮政府の擁護に動けば、中国にも飛び火しかねません。
中国に相手にされなかった北朝鮮は、ウクライナ紛争で厳しい状況のロシアを、弾薬供給で支援する代わりに、後ろ盾に仕立て上げようとしたのでしょう。
 
 
 
弱みを持つロシアは、ギリギリの譲歩をしたものと思われます。
だから、「直ちに参戦する」とはせず、共同声明でも控えめな表現になったのでしょう。
一方、北朝鮮は、「参戦」の表現は諦めつつも、強い同盟関係を印象付けたいため、共同声明で同盟関係を強調したし、ロシアに対しても、強い同盟関係を主張するように求めたのでしょう。
だから、ロシアは、プーチンが帰国後に、改めて同盟関係を強調せざるを得なかったのでしょう。
ただ、それ以上には踏み込みたくないので、「現時点では、ウクライナでの戦闘は該当しない」と言ったのでしょう。
 
 
 
 
ある面では、プーチン政権は、可哀想な状況にあります。
自業自得なんですけどね。
 
中国には足下を見られて、軍事物資を割高で買わされ、北朝鮮ごときにも、技術供与だけでは収まらず、メリットの少ない条約を結ばされました。
迂闊にも、暴力団の力を借りて悪事を働き、暴力団の罠から逃れられなくなった愚か者に似ています。
 
 
仮に、ウクライナ紛争にロシアが勝利したとしても、プーチン政権にはイバラの道が待っているようです。
 
ただ、それは、中国を利することになりそうです。
そして、ロシアが負けたとしても、中国に損はなさそうです。
 
日本のライバル(敵?)は、そんな強かな国です。
心して対峙しなければなりません。
 
巡航ミサイルを何発持っているかなんかは、ほとんど意味を為さないでしょう。
そもそも、武器なんか最後の手段であって、「武器を持っているから」と安心するような人には、戦略は語れません。
勝負は、大概は武器以外の部分で決まるものなのです。