公共事業の中でも、巨大事業は、大概は予算を大幅にオーバーします。
有名なところを見てみましょう。
青函トンネル 2014億円(計画)5384億円(予算)7455億円(実際)
明石海峡大橋 2566億円(計画)3830億円(予算)5000億円(実際)
西九州新幹線 4100億円(計画)5009億円(予算)6197億円(実際)
八ッ場ダム 2110億円(予算)5320億円(実際)
このように、大規模プロジェクトの建設費は、計画時の2倍くらいにはなっています。
異常出水があった青函トンネルでは、3倍以上にもなっています。
これは、計画時と実際の建設時の物価の違いもありますが、見積もり自体の甘さがあると思われます。
正確には、甘さと言うより、政治的な意図かもしれません。
計画段階で、莫大な金額を提示すれば、反対は激しくなるでしょう。
なので、理想的な条件を想定して算盤を弾き、金額を抑えているものと思われます。
もちろん、違法性はありません。
『想定される最も安価な見積もり』と考えれば良いでしょう。
さて、前述の公共事業は、いずれも恒久的な施設です。
なので、その後の利用を見れば、多少の予算オーバーも納得できなくはありません。
特に、青函トンネルは、もう一本、掘削しようとの話も出るほど、北海道と本州を結ぶ重要な役目を果たしています。
では、一時的なプロジェクトは、どうでしょうか。
長野五輪施設建設費 1434億円(計画) 1950億円(実際)
東京五輪総額 7340億円(計画)1兆6989億円(実際)
大阪万博 1250億円(計画) 2350億円(2023年度予定)
長野五輪は、資料を見つけられなかったので、建設費のみで書いています。
長野五輪の運営費は、当初の400億円に対して、1030奥円だったそうです。
いずれも、ざっと2倍は掛かっているようです。
見積もりの甘さ(?)は、一時的なプロジェクトでも、同じようです。
ですが、こちらは、まずいですよね。
建設費を取り戻せない(解体する建造物が多い)し、経済効果なんか、当てになるはずもありません。
計算が容易な建設費でさえ、2倍も違ってしまうのだから、資材費や人件費のような根拠を持たない経済効果なんか、どんな数値が出てきても、信用できるはずがありません。
もし、経済効果を正確に計るのなら、税収の変化で見るくらいです。
経済が刺激されたなら、その年は、税収が増えるはずです。
東京都の税収の推移を見ると、2021年は、その前後と比較して、特に増えたようには見えません。
東京五輪は、無観客で開催されたので、当然とも言えます。
長野県の税収の推移は、1998年(1997年度)のデータが見つかりませんでした。
実際に経済効果があったとしても、それが継続するわけではありません。
「継続させる努力が必要なんだ!」との声もありますが、元々、経済効果とは、観光業を中心としたもので、産業界全体のものではありません。
継続させるとする対象産業を見れば、ハッキリするでしょう。
ということは、五輪や万博は、本来は無駄なプロジェクトと言えます。
五輪や万博を否定はしませんが、もっと強かに戦略を練るべきです。
強かさがあれば、東京五輪は、無観客での開催ではなく、2020年時点で開催権を返上する判断もあったと思います。
非常に難しい判断ですし、私が責任者でも、そんな決断を出せたとは思いません。
ですが、そうした判断をしたなら、損失を最小限で抑えられた可能性があります。
もちろん、途轍もない批判を浴びたことでしょう。
今の政治は、名誉欲に塗れ、かつ失敗を恐れます。
名誉欲に駆られて五輪や万博を始め、失敗との非難を恐れて中止の決断をできません。
中止を決断する度量はないので、追加予算を注ぎ込みながら開催を目指します。
五輪や万博くらいなら、まだ金銭的な問題で済みますが、これが戦争になると、国民の命を使いながら、止められないことになるのですから、恐ろしい話です。