『平和ボケ』を考える上で、「お前は、平和ボケしている」と言う人の精神状態に光を当たるべきでしょう。
他者に対して、「平和ボケしている」と批判する人は、安全保障を求めているのではなく、安心保障を求めているような気がします。
周辺国の武器が怖い。
だから、応戦できる武器が欲しい。
手元に武器があれば安心できる。
そんな発想に見えるのです。
おそらく、テロ組織の支配地域に入る際には、武器を携行していきたいタイプなのでしょう。
「武器を持っていれば安易に撃ってこない」、「いざとなれば応戦できる」、「だから安心」と、思っているのでしょうか。
逆の立場に立てば、わかります。
近付いてくる者が、武器を持っている場合と、武器を持っていない場合では、どちらを警戒しますか?
武器を持って近付いてくれば、最大級の警戒をします。
いつでも迎え撃てるように、準備をします。
不審な動きをしたり、退去の要求に従わなければ、有無を言わせず、先制攻撃です。
相手が強ければ強い程、警戒は強くなります。
先制攻撃しか生き残る術はないと、考えるようになります。
日本政府が、「先制攻撃もやむなし」と言い出した精神状態は、正にこれでしょう。
日本が「先制攻撃もやむなし」とすれば、当然、周辺国も警戒し、更に早く攻撃できるように準備をします。
完全に、悪循環(軍拡競争)です。
この悪循環の勝利者は、国力で決まります。
日本は、国力で周辺国を上回らなければ、この悪循環の勝利者とはなれないのです。
ところが、日本は、目先の軍拡競争に必死で、国力アップには無頓着です。
近年、中国の軍事力が目立つようになったのは、中国が国力を高めてきたからです。
中国の軍事費のGDP比は、ほとんど変化しておらず、むしろ微減させています。
日本は、国力を上げるどころか、他国との関係では、相対的には低下させてきました。
更に、防衛費倍増は、国力増強の大きな足枷になります。
若年層の人口は減少傾向にあり、兵士不足です。
徴兵制を敷いたとしても、今度は、労働人口が不足してしまいます。
仮に、戦って勝てたとしても、国は衰退し、結局、中国資本に蹂躙されることになるでしょう。
今の日本の安全保障を真剣に考えるなら、防衛力に注力するのではなく、外交努力で頑張る状況なのです。場合によっては、他国からの無理難題を受け入れるくらいの覚悟で、戦争を回避しなければなりません。
今の日本は、耐える時代なのです。
耐える時代と言っても、「何もしないでヘイコラやっていろ!」と言っているのではありません。
むしろ、色々やっておくべきだと、言っているのです。
例えば、世界では常識とも言えるほど、コンテナ港には貨物線が引き込まれていますが、日本には、貨物線が引き込まれているコンテナ港は、おそらく1箇所もありません。
これでは、トラック輸送だけに頼ることになるので、少量輸送になるし、運転手不足で物流が滞ることになります。
2024年物流問題と言いつつ、一般企業の努力にだけ任せています。
また、海外から、温暖化対策の圧力が加わった際、トラック輸送は非難の的になるかもしれません。
こういった問題は、単体では小さな問題ですが、確実に国力を削り取ります。
だからこそ、外交で耐えている間に、こういった問題を解決して、巻き返しのチャンスを伺うことが、本当に『平和ボケ』なのか、考えてみるべきでしょう。
政府は、中国の軍事力にのみ、危機感を煽りますが、危機は他にも数多くあります。
その多くは、放置すれば国力を低下させ、将来的には防衛力にも影響することになります。
もっと本質的なところに視点を置き、外交で頑張っている間に、国力を上げることが肝要なのです。
安全保障において、国力を無視している時点で、『平和ボケ』なのだと思います。
「平和ボケ 三態」と題して書き始めましたが、四態になってしまいました。
それくらい、『平和ボケ』には、色々な形があるのです。
今回は、次のような『平和ボケ』を見てきました。
・何もしなくても、平和は続くと考える人
・武力が、戦争抑止力になると考える人
・情勢を見ずに、軍事に突っ走る人
・軍事力以外の危機を、後回しにする人
その中で、どの『平和ボケ』が好きかを答えるなら、「何もしなくても、平和は続くと考える人」がいいですね。
なぜなら、それ以外は、自ら戦争を起こす可能性があるからです。
戦争を起こす覚悟がなければ、抑止力は機能しないし、軍事にばかり注目していれば、軍事的な危機感の裏返しで、軍事以外の方策を探らずに、先制攻撃に踏み切る可能性もあります。
となると、最も非難されるべきではないタイプの『平和ボケ』が、世間では非難されていることになりそうですね。
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