今回は、地震予知の三要素の最後、時期の予測について、考えていきます。
プレートの動き(正確にはマントル対流)によって、地震のエネルギは溜まっていきます。
その速度は、非常に遅く、数百年から数千年かけて、歪を溜めていくことになります。
一方、月や太陽による潮汐力は、大きな変位を齎します。
月の潮汐力で、地表は数cmも上下すると言われています。
単純に考えると、プレートの動きの1年分の変位が、月によって毎日起きている計算です。
内陸地震なら、10年分以上の変位が起きることになります。
因みに、太陽による潮汐力は、月の57%程度です。
太陽でも、月の半分くらいの誤差が出てしまうことになります。
となると、気になるのは、金星や木星からの潮汐力です。
潮汐力は、質量に比例し、距離の3乗に反比例します。
なので、惑星で質量が最大の木星や、最も近い金星が気になるのは、自然な話です。
最大の質量を持つ惑星である木星は、質量が太陽の1/1000弱なので、質量成分の潮汐力も、太陽の1/1000にも届きません。
また、最接近時の距離は、4AUほどなので、木星が地球に及ぼす潮汐力は、太陽の1/67000ほどです。
地球に最も近い惑星である金星は、最接近時で、約0.255AUと太陽までの距離の1/4ほどです。なので、距離の成分では、60倍ほどの潮汐力が働きます。
ですが、質量が約41万倍も違うので、金星が地球に及ぼす潮汐力は、最大でも、太陽の1/7000ほどです。
木星も、金星も、月や太陽の潮汐力に比べると、問題にならないほど小さなものです。
月の潮汐力がプレートの動きの1年分に相当するとするなら、金星の潮汐力はプレートの40分余り、木星の潮汐力はプレートの4、5分の動きに相当する程度です。
地震予知が実用化し、発生時期の予測精度が1時間単位になるまで、無視しても問題なさそうです。
金星や木星以外の惑星は、予測精度が分単位にならない限り、意味を持たないでしょう。
ちなみに、月の潮汐力を1とした場合、太陽と各惑星の潮汐力は、次のようになります。
・太陽 1/1.57
・水星 1/3430000
・金星 1/12500
・火星 1/1580000
・木星 1/117000
・土星 1/2560000
・天王星 1/89000000
・海王星 1/278000000
これを見れば、惑星直列が起きても、無視して良いことがわかります。
また、惑星の潮汐力を考えるとしても、金星以外は無視しても問題ありません。
金星以外の全ての惑星の潮汐力の合計は、金星の1/8にも届きません。
7惑星の潮汐力の約88%は、金星の潮汐力なのです。
となると、天体運動が地震に影響するのなら、月と太陽の潮汐力だけを考慮すれば良いことになります。
これらの潮汐力は、地球の自転によって、ほぼ1日周期で変化します。
となると、予測精度が1日以下にならないと、意味がないことになります。
もう一つの周期は、月と太陽の合成による潮汐の周期です。
こちらは、約1ヶ月で一巡りします。
ただ、地震の発生頻度の変化と、潮汐の周期は、単純には一致しません。
まとめると、月の潮汐力は、プレートの1年分の変位と同等なので、プレートの動きから時期を推定しても、月の潮汐力で1年分の誤差が起きてしまいます。
どんなに高精度で時期を予測できたとしても、1年程度の誤差は残りそうです。