月着陸船SLIMが、月面着陸を果たしました。

・・・が、何とも微妙な成功になりました。

 

 

SLIMの目的は、以下のようなものがありました。

 

・小型機による月面着陸を実現する。

・100m以内の誤差で着陸する。

・2機のローバーを放出・着陸させる。

 

 

打ち上げは、昨年の2023年9月7日でした。

ただ、XRISM(X線分光撮像衛星)との相乗りでした。

 

調べてみると、イプシロンロケットで2018年に打ち上げる予定でした。

その後、X線天文衛星『ひとみ』を喪失したことから、代替機の予算捻出のため、打ち上げが延期され続けられました。

XRISM(X線分光撮像衛星。『ひとみ』の後継機)との相乗りが決定した後も、様々な要因により、延期が繰り返されました。

 

もし、潤沢な予算があれば、ここまで延期されることはなかったと思われます。

予算不足は、日本だけではありませんが、特に、近年の日本は状況が悪化しています。

 

アメリカの国防予算は、8864億ドルで史上最高額となりました。

NASAの予算は254億ドルなので、国防費の2.8%を超えます。

日本の防衛費も、史上最高額の約8兆円になります。数年後は10兆円と見込まれます。

ですが、JAXA予算は1500億円で、防衛費の1.7%にも届きません。補正予算を含めた過去最高額でも、精々2.5%程度です。

 

日本は、JAXAも、JAMSTECも、予算は伸びていません。

元々、額が高くないのに、伸びていません。

この予算の少なさが、SLIMにも影響しているように思います。

 

 

 

予算の影響かは存じませんが、SLIMの着陸脚の取り付けは、異様です。

 

アポロの月着陸船に限らず、メインエンジンの噴射口を下に向けたまま、着地します。

ところが、SLIMは、着地の寸前に90度向きを変えるのです。着地した時には、メインエンジンの噴射口は、側面を向く事になるのです。

腹を下に降りてきて、着地の寸前に足から着地するという、体操選手のような動きです。

 

太陽電池パネルが正常に機能しなかったのは、この着地寸前のアクロバットに失敗したためかもしれません。

 

 

 

さて、着陸の精度が期待通りだったかの判定には、1ヶ月程度の解析時間が必要なのだそうです。

着地までの流れを見ると、100m以内に着地できている可能性が高いでしょうし、最も重要な自律的に着地点を判断する機能も、今後の解析で確認されると思います。

 

全体としては、成功したと言うべきでしょう。

 

ですが、太陽電池が機能せず、既にバッテリーの電源も消耗して機能停止しているはずです。

2台のローバーが、単独ではなく、着陸機を経由して地球と交信しているのなら、乏しい電力で機能を確認できたのか、どうだったのでしょうか。

 

観測装置をフルに機能させる時間的な猶予は、おそらくなかったと思います。

 

 

 

『はやぶさ』初号機の時代から、何度も画面で拝見している國中均氏ですが、記者会見の表情は冴えませんでした。

氏にとって、納得できない結果だったのでしょうか。バッテリーが持続している間に何ができるかが気になっていたのでしょうか。

 

 

 

今回、成功は成功でも、納得できる形ではありませんでした。

当然、次を期待したいところですが、今のところ、後継機の話は聞こえてきません。

 

前述のように、科研費予算は厳しい状態が続いています。

もし、後継機がないなら、今回の経験は無駄になります。

 

 

『はやぶさ』初号機は、限りなく失敗に近い成功でしたが、メディアは「成功したぁ!!」と大騒ぎでした。

そのお陰で、『はやぶさ2』がスタートし、自ら「1000%の成功」と言う結果を得られました。

もしかすると、川口淳一郎氏の和やかな表情によるものかもしれませんね。

 

 

國中氏の表情が冴えなかったせいか、TVニュースではほとんど取り上げられていません。

当日の19時のNHKニュースも、同時刻のデータ放送のニュースでも、SLIMは話題になっていません。(淋しい〜!)

 

國中先生、結果報告の記者会見では、人生で最高の笑顔を作ってください。

そして、後継機の予算を獲得して、マリウス丘の溶岩トンネル内に着陸し、月での定住の第一歩を得てほしいところです。

何せ、マリウスの立坑は、直径50mしかありません。

現時点で立坑の中に着陸できるとしたら、日本しかありません。

 

 

是非、後継機を!