以前、日本国憲法の欠点は、憲法81条にあると書きました。

 

今回は、その点を掘り下げようと思います。

 

 

 

岸田文雄氏は、「憲法9条に自衛隊を明記するべき」としています。

 

1954年に、自衛隊法が施行されました。

全ての法律は、憲法の下に制定されます。

自衛隊法が合憲であれば、敢えて憲法9条に明記する必要はありません。

ですが、現実には、「違憲ではないか」と、言われ続けてきました。

 

実に、70年間も、合憲か違憲かに決着が付かなかったのです。

 

でも、おかしな話ですね。

憲法が、為政者の権限や暴走を防ぐためにあるのに、合憲か違憲かに決着をつけられないのは、不思議です。

日本国憲法にも、違憲審査の条項はあります。

なのに、なぜ合憲/違憲に決着がついていないのでしょうか。

 

 

 

日本国憲法は、第81条に、違憲審査が規定されています。

 

・最高裁判所は、一切の法律、命令、規制又は処分が憲法に適合するかしないかを

 決定する権限を有する終審裁判所である。

 

 

これだけです。

 

合憲か違憲かを最終的に判断する権限を持つのは、最高裁判所だとしているだけです。

誰が審査を請求するのか、違憲だった場合にどうするのか、明記されていません。

 

違憲審査は、具体的な事例に対して行うとされているそうです。

従って、実害がなけれは、違憲法制でも裁判に持ち込むことが難しいのです。

ここが、日本国憲法の違憲審査の弱点と言えるでしょう。

 

この弱点によって、違憲にあたる法律を成立させても、実害が発生するまで、違憲審査を行えないことになり、政府の暴走を許してしまうことになります。

 

 

 

もちろん、違憲裁判は、少なくありません。

特に目立つのは、選挙における1票の重みの格差です。

 

これはこれで、日本国憲法の違憲審査の弱点を示しています。

 

1票の重みの格差は、最高裁判所では、2倍以内が望ましいとしています。

過去は、衆議院は3倍、参議院は6倍を超えると、違憲判決が出ていたようですが、現在は厳格化しつつあります。

格差を是正する日限が明記されず、完全には是正されないままに選挙が行われた事例もあります。

だから、複数の選挙で、違憲判決が出るのです。

 

罰則や日限を設定した再選挙といった強い判決が出れば良いのですが、そのような判決を出すための憲法上の根拠が乏しいのか、再選挙になった試しがありません。

 

 

 

さて、自衛隊ですが、70年間も合憲か違憲かの決着を付けられなかったのは、自衛隊法による実害がほとんどなく、訴訟がほとんどなかったためでしょう。

砂川事件では、最高裁判所まで争われていますが、明確な合憲/違憲判断はしていないため、現時点でも論争が残っています。(砂川判決)

 

ここでは、砂川事件の判決が、自衛隊の合憲を含むのか、含まないのかを無視します。

問題は、未だに論争が残っている点です。

論争が残っているから、自衛隊を憲法に明記するべきとの議論は、生まれるのです。

政府が、憲法への自衛隊の明記にこだわるのは、砂川判決が、自衛隊の合憲を示した判決とは考えていないためと、考えることができます。

 

 

ところが、安倍晋三氏は、生前、「砂川判決で 自衛隊は合憲とされている」と、主張していました。

同時に、「憲法に自衛隊を明記しなければならない」とも、言っていたのです。

これは、矛盾を感じます。

 

砂川判決で合憲となっているなら、自衛隊を憲法に明記する必要はなく、明記の目的は、単に自衛隊の合憲/違憲に決着をつけるためではないことになります。

では、裏の目的は、何でしょうか。

 

もしかすると、徴兵制を視野に置いているのでしょうか。

徴兵された人物が、徴兵を拒否して裁判をおこした際、自衛隊の合憲問題が再燃し、万が一にも違憲判決が出れば、徴兵制どころか、自衛隊自体の存続にまで影響しかねません。

 

 

 

 

閑話休題

随時、合憲/違憲の判断が行われないため、このような問題が起きるのです。

 

現在も、違憲の疑いが濃い法律や閣議決定があります。(むしろ、増えている印象)

その場で解決していかなければ、取り返しのつかないことになります。

 

だから、憲法81条が欠陥だとしています。

 

でも、自民党草案では、81条は変更しないことになっています。

日本国憲法の真の欠点を、自民党は変更したくないようです。

いったい、何(誰)のために憲法を改正したいのか、自民党に正したいところです。