今回は、空母に搭載する燃料と弾薬を考えてみたいと思います。
前回は、航空燃料を考えましたが、今回は航海用燃料を見ていきましょう。
 
 
航海用の燃料は、既に説明済みですが、2000tです。
主機を40%ほどの出力で使う場合、300時間以上の連続運転が可能です。
しかし、戦闘行動では、6~7日間が限度でしょう。
前線を離脱してから補給を受けて前線に戻るまでを4~5日として、僚艦との交替は、なんとかなるギリギリのところでしょうか。
ということで、航海用の燃料は、2000tとします。
これ以外に、補機用の燃料500tを搭載するものとします。
これは、300万kWh以上の発電量に相当します。
(補機の合計発電力は10000kWを想定)
 
 
前回の検討で、出撃機の延べ機数は320機としました。
内訳は、1度の出撃で24機が離艦します。
出撃部隊のサポートで、出撃時には空中給油機×2機、帰艦時には空中給油機×2機と迎撃機×4機の延8機が対応します。
出撃回数は2回/日、5日間を継続するので、延べ320機が発艦します。
 
空中哨戒は、戦闘機×2機×6回、早期警戒機×1機×4回の延16機です。
補給のために交替する時も続けるので、7日間で延べ112機です。
 
 
これらを踏まえ、必要な弾薬の量を見積もります。
 
弾薬は、早期警戒機や空中給油機は消費しません。
電子戦機も、自衛用に携行するだけですから、消費しません。
空中哨戒機も、敵機に遭遇しない限り、消費しません。
弾薬を消費するのは、主として出撃部隊の攻撃機(爆装機)です。
一つの出撃部隊は24機ですが、爆装するのは8~10機と思われます。
1機当たり8tの爆装で出撃するとして、1回の出撃で64~80tを消費します。
これに、戦闘機の弾薬の消費が加わるので、1000t程度の弾薬が消費されることになります。
 
ちなみに、ジェラルド・R・フォード級は、弾薬が約2500tです。
艦の規模が4割程度であることを考えると、妥当なところだろうと思います。
 
 
ここまで、燃料と弾薬について検証してきました。
まとめると、以下の通りです。
 
 ・航海用燃料 : 2000t
 ・補機用燃料 :  500t
 ・航空燃料   : 3600t(こちらを参照ください)
 ・弾薬       : 1000t
 
 
実に、7100tもの燃料・弾薬を搭載するのです。
ですが、これ以外にも、航空機と支援車両も搭載します。
 
航空機の自重を考えてみましょう。
 
 ・F35C    : 16t × 16機 = 256t
 ・EA18G   : 15t ×  4機 =  60t
 ・E2D     : 18t ×  4機 =  72t
 ・CMV22B : 15t ×  2機 =  30t 
 ・SH60    :  7t ×  4機 =  28t
 
合計で、446tです。
これに、整備用品が加わりますので、500~550t程度と思われます。
有事には、10機のF35Cを積み増すので、機体だけで606tになります。
ハンガー内は、出撃機体が溢れかえっているので、簡単な整備しかできません。
なので、整備用品は僅かしか必要ないので、整備用品の重量を無視します。
 
支援車両(詳細はこちら)は、合計22台です。
大型クレーン車やトーバーレス・トラクタ、消防車、清掃車は、かなりの重量になります。合計では、50~60tになると思います。
 
艦載機、整備品と支援車両の合計重量は、700t程度になると思います。
 
 
これ以外にも、乗組員と私物、食糧などもあります。
その重量は、200t近くになると思われます。
 
本案の空母の積載重量は、燃料、弾薬、艦載機、支援車両、乗組員、食糧、その他で、合計は8000t程度になると思います。
 
 
 
さて、本ブログを御覧の方には、「ジェラルド・R・フォード級のような原子力空母を日本も持つべきだ」とお考えの方もいるでしょう。
 
原子力空母は、無限と言っても良いほどの航続距離を持つことを、その理由の一つとされるかもしれません。
しかし、今回の検討のように、現実には航空燃料と弾薬は補給が必要であり、航続距離のメリットは大きくはありません。
また、本案では、島嶼防衛など、専守防衛を逸脱しない範囲での検討ですので、無補給で地球の裏側まで行ける能力は、必要ありません。
 
燃料タンクが不要と言いますが、重く大きな原子炉と遮蔽材を考えると、決して軽いとは言えません。
艦船に用いるPWR型原子炉は、原子炉本体と蒸気発生器と蒸気タービンと復水器で構成されますが、ディーゼルエンジンはエンジン本体と簡単な冷却装置・吸排気系だけです。
本案の空母を原子力とした場合、原子炉とタービンで8000t前後になるのに対し、舶用ディーゼルは5000~6000t前後になるはずです。本案の空母の航続距離は長くないので、燃料を加えた舶用ディーゼルと原子力では、同等か、軽いくらいです。
蒸気カタパルトから電磁カタパルトに換わったことで、原子力の優位性は無くなったとも言えそうです。
排煙の影響は残りますが、空力を利用した対策は可能であり、影響を抑えることができます。
 
逆に、機関の要員の他に、原子炉の要員が必要になること、廃炉を考えた時に大きなデメリットに直面することになります。
 
 
表面的な能力に惑わされないことが肝要かと、思います。