正規空母と陸上基地との比較を行うと、正規空母の役割が見えてきます。
 
 
陸上基地は新設が容易ではありませんが、正規空母は新造による増強が可能です。
固定されている陸上基地と違い、正規空母は移動することができます。
 
陸上基地の新設と正規空母の新造では、運用可能な航空機の数で除した費用は陸上基地の方が安価になります。
燃料費や整備費などの違いにより、正規空母より陸上基地の方が運用費用が安価になります。
陸上基地は運用可能な機体に制限がありませんが、正規空母では発着艦の性能と機体サイズに制限があります。
陸上基地は、着陸の重量制限が緩くなります。正規空母では、着艦の重量制限が厳しくなり、場合によっては、武装状態のままでは着艦できない可能性もあります。
(ブリングバック性能)
正規空母では、機体の損耗が激しくなります。着艦時の衝撃が激しく、常に潮風に晒され、荒波をかぶる事もあります。
航空機・弾薬・燃料の備蓄量も、陸上基地が有利です。
正規空母では、攻撃を受けた場合に脆弱です。陸上基地は空中以外からの攻撃は不可能ですが、正規空母は海中からの攻撃を受ける可能性があります。
防御兵器も、陸上基地は自由に選択できますが、正規空母は自己防衛の装備も搭載場所と量的制約があり、艦隊としても弾薬に制約が残ります。
また、本土にある陸上基地への攻撃は、領海・領土・領空を犯すことになるので、攻撃する側にも覚悟が必要ですが、領海外にいる空母への攻撃は、そのハードルが下がります。

これらを考えると、ほとんどの項目で陸上基地が有利であることがわかります。
正規空母のほぼ唯一の特徴が、移動できることなのです。
例えば、全く動かない空母を作るか、陸上基地を作るかの二者択一なら、誰も空母を作らないでしょう。
 
 

では、正規空母のどんな使い途があるのでしょうか。言い換えれば、移動できる航空基地の使い途は、どこにあるのでしょうか。
移動できる強みの一つは、固定目標より攻撃されにくくなることです。標的としてのサイズが小さいことも、多少は効果があるでしょう。ですが、陸上基地とは違い、たった1発の着弾で、搭載機もろとも回復不能な被害を受けるので、移動できることの強みとは言えません。
やはり、任意の場所に航空基地を移動させられることが、唯一の利点です。
 
では、任意の場所は、どんな目的で選ばれるのでしょうか。
一つには、示威行動です。自国の目の前に航空基地が現れたら、心穏やかではありません。
ですが、これこそ憲法違反そのものです。
そもそも、人の行動に置き換えると、家の前を刃物をチラつかせなが歩き回るようなもので、日本の振る舞いとしては、情けないレベルに思います。
 
示威行動以外では、前線基地として使うことが考えられます。陸上基地からでは届かないか遠方にある戦地に航空兵力を投入することにあると考えて良いと思うのです。
日本の専守防衛で考えると、本土は全て陸上基地からでも届く範囲にありますから、空母の必需性はほとんどありません。
強いて、専守防衛を前提とした空母の使用目的として考えられるのは、離島防衛です。
ただし、離島防衛と言っても、空母を戦線の至近に寄せることは考えにくく、陸上基地からの距離と大差ない位置からの出撃になると考えられます。
あくまでも、挟撃のための移動基地としての役割となるでしょう。
ただ、ステルス艤装を行なったとしても、飛行甲板上に留置されている多数の機体や支援車両、そもそも巨大な艦体を持っているので、かなり遠方でもレーダに映るはずです。
空母は「神出鬼没」に行動できるなどと考えていたら、痛い目に遭うでしょう。
 
 

空母の使用目的を深掘りしすぎると、日本が空母を所有する必要性が低いことが明確になってしまうので、「離島防衛に空母が必要」として話を進めることにします。
離島防衛においても、空母を使えば側面攻撃が可能になります。
まあ、無駄ではないということです。費用の割には効果は小さいのですが・・・
 

次は、どれくらいの性能が必要か、考えてみたいと思います。
単純に言えば、米海軍の原子力空母を基準にすべきかもしれませんが、あくまでも離島防衛が主眼ですし、現在の日本の国力がベースなので、ゼロから考えるべきでしょう。
というより、どこまで安くまとめられるのか、考えることになります。
 

まず、配備隻数を考えます。
空母と言えど、定期的にドック入りします。その時に有事となったら、1隻少ない状況で対応することになりますが、この時に1隻だけで作戦に当たると、補給を受ける際に追撃を受けるリスクがあります。
ですので、最低でも2隻で対応することが求められます。
つまり、建造隻数は、3隻が最小規模となるでしょう。
寿命からみて、10~15年間隔で建造していくことになります。
 

次は、艦の規模です。
累積債務が天文学的数字になっている日本において、3隻もの空母を建造することは、はっきり言って馬鹿げています。
それでも建造するには、規模は最小とすべきです。
ただし、空母を確実に運用するためには、早期警戒機は必須です。
早期警戒機の離着艦が可能な空母で最も小型は、仏海軍のシャルル・ド・ゴールでしょう。
ですので、これをベースに考えることにします。
全長265m、全幅65m、満載排水量42000tが、そのサイズとなります。
(全長がシャルル・ド・ゴールより長い理由は、いずれ説明する予定です)
 
動力は、排煙や燃料搭載量の観点から原子力が望ましいのですが、運用終了時の廃炉処理や燃料交換時の工事の煩雑さを踏まえると、原子力を選択する強い理由はないと思います。
 

まとめると、次のようになります。
・離島防衛を主眼とした運用を行う。
・3隻体制とし、10~15年毎に建造・更新する。
・総合的な運用コストから、通常動力を採用する。
・早期警戒機を運用できる最小規模の艦型とする。
 
これをベースに、検討していくことにします。