北奥のドライバー -15ページ目

北奥のドライバー

思いついた事をつらつらと書いて行こうと思います。

七月上旬、日差しがチリチリと肌に突き刺さるような日差しの日である。私は例の女性のアパートに向かっていた。前日はドシャ降りといえる大雨が降りしきっていたが、その日は一転真夏の陽気である。暑い中に何処かしら粘りつくような湿気も感じさせる、そんな午後の昼下がりであった。

この暑い盛り、私はアイスを入れた袋を片手に歩いていた。保冷の為、このスーパーのビニール袋にはドライアイスが入っていて、そこからゆらゆらとした煙が時折外に流れ出す。

その煙の揺らめきが妙に面白かった。周囲の環境は36℃を越える猛暑で周囲のコンクリートも路面のアスファルトも強烈な熱を帯びている中、場違いな冷気の塊が私の手元に存在しているのである。まるで熱気に満ちた周囲の環境に逆らうようにソロリ、ソロリと袋から流れ落ち、あっと言う間に雲散霧消してゆく白い冷気は、どこか儚くも美しいものに感じられたのだった。

そうこうしている内に彼女の住むアパートの前に辿り着いたのだが、そこには見慣れない外車が一台止まっている。

(はて、あんなクルマを所有している人がこのアパートに居ただろうか、それとも新しい入居者だろうか)

そんな事を考えていたところ、あの女性の部屋から30前後のヒョロリとした男性が出てきたのだった。彼は眉間に深い皺を寄せ、見たところ酷く苛立っている様に感じられた。

咄嗟に私と視線が合い、彼は鋭い眼差しでこちらを一瞥するや、そのまま自動車に飛び乗り、恐ろしく荒っぽいハンドル捌きで駐車場を飛び出して行ったのだった。

(もしや、彼があの女性の夫だろうか?)

去ってゆくクルマを眺めていた私の背後から声がした。

「あ、来てくれたんだ、外でチョット待っててくれない?部屋の中が散らかっているから今片付けてんの」

彼女は明らかに涙声であった。まあ、穏やかではない事態が起こったのだけは間違いない。こんな雰囲気の中である。今日のところは彼女の部屋に上がるのを遠慮しようかとも思ったのだが、結局なし崩し的にお邪魔する事となってしまった。

「あははは!ゴメン、マズいとこ見られちゃったね」

「いや、自分は構わないけど、そっちこそ大丈夫?」

「久々に旦那と喋ったら口論になっちゃった」

「アイスでも食べて頭を冷やしたらいい。丁度いいタイミングだったかもね」

たかだか2か月間ほどの交流でしかなかったが、私と彼女はそこそこに打ち解け、お互い砕けた口調で話すくらいの仲にはなっていた。

一時間ほど私たちはとめどない会話をしていたのだが、突然彼女の口が止まり、室内には一瞬驚くような静寂が広がった。時折、傍のアロマキャンドルからチリチリとした音が聞こえるのみである。

暫くして、彼女はうつむきながらソロリとした風に、ゆっくりと口を開いた。

「ねえ」

「うん?どうかした?」

「なんで旦那の事、聞いてこないの?」

「無理に聞き出す程に興味はないよ」

「絶対に嘘でしょ、それ」

「何が?」

「すぐわかった。それとなくだけれど、周りをキョロキョロ見ていたでしょ」

「あれ、そうだった?」

「部屋の中に残っている旦那の痕跡を見つけ出して、何があったのか推測を働かせようとしていたんでしょ?そうだよね?」

彼女はテーブルの上に飾られている小さな焼き物の天使像に目を落としながら、静かな口調でそのように語った。

(参ったねこりゃ。お見通しか)

「わかったわかった。確かに気になった。でも流石にこれは直接には聞きづらいだろ」

「聞けばいいのに。別にこっちには、後ろめたい事は何も無いし」

そう言われはしたものの、不意に図星を突かれた時点で、既に私の中の覗き見根性はすっかり萎えていた。とはいえ、このまま何も聞かずに終わるのも、少々癪に障るような気もしていた。

「ハイ、じゃあ月並みな質問でいきましょうか。夫婦喧嘩の原因は?」

とりあえず質問をしてみたはいいが、我ながら丁寧とはいえない口調だった。全く大人げない。

「ちょっと、その質問、投げやりっぽくない?」
 
彼女は苦笑した。

「はい、答えてちょうだい」

「あのさ、あなた、浮気しても一発でバレるタイプだよね」

彼女は大層楽しそうだ。

「もう降参するから、そろそろ教えてくれないか」

「そうだね、う~んと……」

しかし、自分の身に起きた事を語ろうとした瞬間、彼女の表情に若干の曇りと迷いが見え、その口はピタリと止まった。

「……やはり教えてくれなくてもいい」

「ちょっと待って。今どこから喋るのか、頭の中で整理しているから」

「無理していないか?」

「うん、でも聞いて欲しい」

暫くして、彼女は事の次第をポツリポツリと語り出した。それはまるで足を踏み外さぬ様に、自らの足元を慎重に探りつつ、といった風な語り口であった。

自分はある地域ではそれなりに名の知れた経営者であり、政治的実力者の家に嫁いだ人間だという事。   

彼女自身の出身は神奈川県で、そこそこの中流家庭で育ち、将来を嘱望されながら育ったが、東京の大学に通っている時に現在の夫に出会ったという事。

彼女の母親はこの結婚に決して必ずしも賛同的ではなかったものの、なんとか説得して結婚にこぎつけた経緯がある事。

夫と子供たち、そして夫の両親と六人で暮らしていた事。

しかし、ある日突然息が詰まりそうな感覚に襲われ、家を飛び出すようにして数ヶ月間、一人暮らしをしてしまっていた事。

この状況に、夫の我慢がそろそろ限界に達しつつある事。

そして最近、家族、特に夫に対する愛情に深い迷いが生じ始めている事。

「おいおい、まさか……」

咄嗟に私の口から驚きの台詞が飛び出していた。

しかし彼女は素早くそれを強く否定するようにかぶりを振った。

「勿論、旦那も子供たちも、お義父さんもお義母さんも好きだし、だからこうやって家庭を築いてこれた。でも……」

色々な逡巡の中からなんとか言葉を絞り出している風であったが、その様子は酷く苦しげであった。

「もういい、わかった」

「ごめん、嫌だった?」

「いや、色々教えてくれてありがとう」

「ごめん、なんか雰囲気悪くなっちゃったね」

「いや気にしなくていい、それよりも何か気晴らしが必要だ」

彼女は暫く「う~ん」と唸りながら考え込んだ後、

「そうだ、この前聞いた遠野に行ってみたい!不思議な伝説が沢山あるところなんでしょ?」

と元気な声で応じてきたのだった。


次に続きます。



















ある夜の事、私は市内の某タクシー待機所に車両を止めて客待ちをしておりました。そこに他のベテランドライバーがやって来ます。その日は暇で、いくら流してもさっぱり客のつかない日でした。
 
「なあ、アンチャン、調子はどうだい?」
 
後ろについたベテランドライバー(推定六十代?)が声をかけてきます。
 
「ダメですね、そちらはどうです?」
 
「全然だぁ!街の中が死んでるみてぇだ!」
 
「ホント、静かですよね」
 
私も苦笑して応じました。
 
「盛岡はアガねえじゃなぁ!はっぱり雲の上に立っている連中が産業振興しねぇおんや!」(盛岡はダメだよなぁ!サッパリ雲の上にたっている連中が産業振興しねぇからな!)
 
(産業振興ねえ……)
 
「まあ、確かに会社は少ないし、娯楽も多くないですよね。貧乏人だらけだし」
 
このベテランさん方は市内で待機している時によく出くわす人達です。どういった素性の人達かはよく解りませんが、声が大きく、粗野で、何処か人懐っこい昔ながらの乗務員です。
 
「他の街も似たようなものですかね?」
 
別に真面目に話がしたい訳でもなかったのですが、業界でスムーズに生きてゆく為に、形ばかりでも愛想良く、多少のコミュニケーションは取らなければいけません。少々面倒に感じましたが水を向けてみました。
 
「アンチャン、オ〇ンコだ、オ〇ンコ。フーゾクだ!、あとパチンコ競馬に競艇、競輪。ギャンブルできる場所、一杯つくらねば。都会から来たビジネスマンが沢山金を落とす場所が無ぇべじゃ!」
 
(……ああ、また始まった。)

 

実は、彼らは以前から全く同じ話を延々としているのです。
 
「どいつもこいつも杓子定規に真面目クサった街づくりば~りして、これじゃあ退屈だべじゃ!」
 
「はあ、それで他県から人が来てい金を落としますかねぇ……」
 
「来るもナニも!俺達の知り合いがいる秋田や青森さ行ってみろ、秋田市に青森県なら弘前、青森、八戸!みんな、り~っぱな歓楽街があって栄えでらじゃ!」
 
「はあはあ、なるほど……」
 
ちなみに私は風俗やギャンブルの存在は全然否定していません。世の中の経済構造の中でも重要な位置を占めている『必要悪』の類だと認識しています。
 
ちなみに盛岡では『公認』されている風俗店は一店舗だけであります。過去に何度もその店以外の所で無認可店が生まれた事もありましたが、その都度、間髪入れずに警察の手入れが入ってきたものですから、現在はその認可店一ケ所以外は完璧に壊滅状態です。
 
何故その店以外に認可の風俗店が出来ないのか事情は知らないですし、私個人的にはどうもいい問題に感じられていました。これに関して別段興味を引かれた事もありません。
 
まあ、どんな産業であれ、犯罪性が伴わない限り、お金が回るのは悪い事ではありません。とはいえ、秋田や青森の各都市をつぶさに見てみればどうでしょうか。概ね堅気な商売はドンドン衰退し、どちらの県も人口流出に頭を痛めています。
 
盛岡も往時の勢いが失われて久しいですが、夜中に秋田、弘前、青森、八戸などに行ってみれば、歓楽街以外での人通りは絶望的に少ない。

全体的に見れば明らかに衰退傾向を示しています。言ってはナンですが、盛岡よりも遥かに出歩く人がまばらで静かかもしれない。歓楽街だって、一見華やかに見えても、どれ程の景気かわかったものではありません。
 
本来であれば、街というものは人と富が集まり、産業が生まれ、概ねその後を追うようにして人々の余暇を満たす様々な産業が生まれるものです。ギャンブルや風俗店だって同様な筈だと思うのですが。

これは決して職業差別で言うわけではありませんが、『基幹となるカタギな多くの産業』が中心軸となり地域経済を回す形が基本でなくては、その土地の経済構造は多様性がなく、歪なものになりはしないか、と思うのです。

先ほどのオジサンたちの話が正しいのだとすればですが、これらの各都市は本来、繁栄の根幹となるべき多くの産業が廃れてきているのに、それを脇で支える、本来脇役であるはずのギャンブルと風俗産業だけが残ってしまい、相対的に地域での存在感を高めているという事でしょう。
 
失礼ながら、これはとても近代の都市として正常な状態とも思えない。

第一、彼らの言う事が本当だとして、都会のビジネスマンが大喜びする『風俗とギャンブルが沢山ある街』が、なぜ全体の傾向として回復基調に乗らないのか。
 
(あれらの街って、結果的に都会にお金も人材も吸い上げられて、青息吐息じゃないの。一時的に博打や風俗で地域に金が散発的に落とされているのだとしても、それは内容的に全然釣り合っていないでしょうが。相変わらずこの人たちは何を言っているんだか)

とは思いつつも、特に意見もいたしませんでした。こういった人種にいちいち真面目に反応するのも億劫だったのです。

彼らからすれば、ギャンブルと酒と女、そしてその世界の住人達が織り成す人間模様が世界の全てなんでしょうね。


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

かなり前の事です。夜の9時ごろでしょうか、ホテルからゾロゾロと出てきた人たちで盛岡の繁華街は賑わっていました。どうも彼らは所属する会社の懇親会に参加していたようです。

 

20代半ば位の男女が乗り込んでくると、「あ~お偉いさんの長話に付き合わされて大変だった。気分転換に何処かに飲みに行こうよ」と男性客が提案します。女性客も賛成し、市内にある某居酒屋前に。

 

暫くすると女性客が「ねえ、A君はどうしているの」と男性客に聞いてきます。男性客は「あいつ、酒が回ると説教臭くなるからなぁ、後輩のくせしてタメ口になってくるし」と苦笑しながら答えます。

 

「そうそう、アタシもこの前A君と飲みに行って説教されちゃった。”先輩はこんな職場でいつまでも大人しく飼い殺しにされるつもりなんですか?”って……」

 

「そうだろ?アイツいつもそうなんだよ。そして、”こんな会社辞めてやる”って……メンドクサイ奴だから、二次会には呼ばなかったよ」

 

そのA君とやらの主張は要約すると

 

○「岩手は全国でもトップレベルに労働時間が多い」

 

○「しかし、平均賃金は47都道府県でいつも最低ラインをウロウロしている」

 

○「にも拘らず、離職率はトップレベルに低い」

 

○「これは、謙虚さでもなければ努力家なのでもなく、単なる奴隷根性ゆえである」

 

○「こんな事だから、当県はブラック経営者がのさばって、社会的に強い影響力を持ち続けている」

 

○「先輩たちは、こんな人間達を増長させる原因の一端を担っていることに対して、一つも思う所がないのか」

 

……とまあ、こんなところでした。そのA君とやらの正義感や世の中への不満は分からなくもありませんが、まだまだ若く、社会に出て数年しか経っていない先輩に向かって、こんな事を言うのは少々酷かなぁ、とも思います。

 

一気に場の空気は重くなり、彼らは暫く後部座席で沈黙していました。

 

女性客が「だって……仕方ないじゃない。私たち、何も分からないし、目の前の仕事をこなすだけで精一杯だし……」と絞り出すような声で呟きます。

 

男性客も「うん」と言って軽くうなずくばかりでした。

 

私はどちらの気持ちも解ります。若さゆえに、たとえそれが蟷螂の斧であろうが、若者をいいように使い潰す大人達に一太刀浴びせたいと願うA君の青臭さも。

 

そして、「この厳しい時代に運よく仕事にありつけたのだから」と、そういった『小難しい現実』をなるべく見ずに、せめて仕事から解放された時はひたすら楽しい馬鹿話だけをしていたい、という若い先輩社員たちの心情も。

 

それに、こういったタイプの『反抗、もしくは反攻』というものは、往々にして失うものは多く、しかし得られるものは少ないものだし、それでも尚、戦おうとすれば、相当の覚悟と精神的な強靭さ、そして抜け目のない計画性が必要です。誰でもおいそれと出来るものではない。

 

いや、そもそも当県の未来を担う、しかもそこそこに名の知れた会社に就職出来るような優秀な若者を、こんな形で悩ませたり迷わせたりする社会環境しか造ってこれなかった大人たちの何と傲慢で情けない事か。

 

彼らの未来に幸多からんことを、と、冴えない中年ドライバーでしかない私はただただ祈るばかりです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数年前の事です。市内の某旅館から注文がありました。無線配車を受け、旅館に辿りつくや、中の従業員が飛び出してきて、「運転手さん、これからお乗せする方は20分後の新幹線に乗らなければなりません、くれぐれも遅れたりする事がないようにお願いしますよ!」と慌てた口調で言ってくる。

 

(やれやれ、何処のお偉いさんか知らないが、しょうがないなぁ)

 

私は腹の中でそう呟くと、「はい、大丈夫です。この時間帯は街中も混んでいませんから十分間に合うでしょう」と応じました。旅館の従業員は心持ちホッとしたような表情を見せます。

 

暫くすると、年は60代前半位でしょうか、仕立ての良さそうなコートを着込んだ男性が乗り込んできました。「運転手さん、悪いけどお願いね」と言って来た客人は、温和な雰囲気の話し方をする初老の紳士と言った風です。

 

乗っている間、色々な話に花が咲きましたが、途中から世間の景気の話になってゆきます。

 

「私が住んでいる地域ではドンドン若者がいなくなって年寄ばかりだ。働き手がいなくなっているんだよ。年寄りは年寄りでせっせと貯金に励むばかりで消費しないから、どんどん地方の経済が衰退して街が寂れてゆく」

 

私はひたすら聞くのに徹して相槌を打っていた。

 

「そういえば、タクシーってのは出来高制だよね。時給や日給というのは有るのかい」

 

「いいえ、ごく一部の例外を除いて殆どの会社は完全歩合です」

 

「うん、そいつはいい、実にいいねぇ。羨ましいよ。そうこなくてはね」

 

「はあ……」

 

「いやね、やはり、こういった切磋琢磨で緊張感を維持しつつ仕事をするというのは実に重要だ。最近の若い連中は権利意識ばかり肥大して良くない!こういった環境は大事だよな!」

 

(はは~ん、恐らく何処かの会社の社長か役員か。いずれにせよ組織の上に立って差配する立場の人だな)

 

「色々と思う所が御有りのようですね」

 

「そうなんだよ!この前テレビでブラック企業の特集なんてやっていたけど、実に馬鹿馬鹿しい。そもそも若者が貧乏だから結婚しない、子供を作らないなんてトンデモナイ!嘘だよそんなもの!」

 

「ほう、といいますと……?」

 

「金なんか関係ないんだよ、心がけだよ、心がけ。30万、40万貰っても、だらしのない人間はいつも『足りない足りない』と騒ぐものだし、しっかりしているヤツは手取り15万でもチャンと生活して貯金も出来るものだ。すぐに社会問題を金の問題にすり替えて説明しようとするのは実にナンセンスだ。よくない傾向だよ。」

 

「つまり、給料が安い高いの問題ではなくて、あくまで若者の我儘が原因だと……」

 

「まあ、おかしな経営者も確かに居るだろうが、ごく少数だろうね。そもそも、金は安易に手に入れてしまうと、人間は急速に堕落するものだ。チョット足りない位の環境で、頭を捻りながら生きていく位で丁度良いんだよ」

 

(なるほど、上に立つ人間がこんな事を公然と語る会社なら、人手不足に陥るのも当然だ)

 

「心構えと言えば、確かにおっしゃる通りですね。良いお話しを聞かせていただいて、私も気持ちが引き締まるようです(笑)」

 

「そうかい?ははは!いやね、私は地方の衰退と若者の堕落を心配しているだけなんだよ。おっと、思ったよりも早く駅に着いた、運転手さん流石だねぇ」

 

「いえいえ、恐縮です(笑)」

 

……とまあ、こんな会話をした訳です。何年も前の事ですから、曖昧なところもありましたが記憶の限り書いてみました。

 

恐らくですが、彼は功利主義的な動機に尤もらしい粉飾を施す為にあのような事を言ったのではないように感じます。別にこれといった確証がある訳でもありませんでしたが、言葉使いに後ろめたい雰囲気が無く、これといった澱みを感じさせないものだったのです。むしろ本当に道徳的正義を語っているつもりだったのではないか、と私は考えます。

 

ただし、賛同者の得られない正義は、単なるエゴの発露でしかない事が多いのですが。

 

そして人間の嗅覚というのは存外敏感で、単なる無自覚なエゴと真の公理公論というものを感覚的に嗅ぎ分けるものです。地方の衰退というものは行政の失敗のみならず、実はこういった地域の『力を持てる者』の振りかざす、ピント外れな価値観の影響も、或いは大きな要素の一つとして有るのかもしれません。