『イン・ザ・プール』; 間違いなく面白い!! | これは名作・迷作

『イン・ザ・プール』; 間違いなく面白い!!

イン・ザ・プール










これです。最近テレビでもやっていましたが、とんでもなく面白い本です。誰もが胸に抱いていて、かつ誰にも相談できない悩み事を、天真爛漫な伊良部先生がそんな悩みを鼻くそのように扱い、悩んでいる人を初めは怒らせ、最後には納得させてしまうという、今までにない、奇想天外な医者と患者のストーリーです。


5つの短編から構成されていて、ストーリーごとに違う患者が違う悩みを抱えて伊良部先生を訪ねます。大人だけではない、子供だって悩みを持っています。「フレンズ」という章では、ケータイ依存症になった今どきの高校生が手の震えがとまらずに、両親になかば強引に精神科の診療に行かされる。友達とのコミュニケーションに欠かせないケータイ、それがないとパニックになってしまう若者。しかしその理由を突き詰めていくと、孤独を恐れる小さな人間が現れる・・・。読んだあとは小さな恐怖感が残ります。とても他人事ではない。


他にも勃ちっぱなしで日常生活に障害が出てきてしまった会社員、ストレスによる体調不良を直すために通い始めた水泳に中毒になってしまった会社員、いつも誰かにストーカーされていると被害妄想を抱くタレント志望の女性、たばこの火の後始末やガスの元栓など、確認しても不安になってなにも手がつかなくなってしまう中年ルポライター・・・などなど精神的な障害がいろいろな形ででてきてしまっている患者さんたちが登場します。


彼らは決して社会的に弱い立場にある人たちではなく、はたから見ると自信に満ち溢れていて、かつ傲慢な人が多いです。しかしその傲慢さが鉄壁となり他の人のアドバイスが受け入れられず、どんどん自分の殻にこもっていってしまう。また、その孤独感を逃れるためにその殻は厚くなる一方。そこで登場するのが伊良部先生。伊良部先生の登場は昔の童話を思い出します。『風と太陽』でしたっけ?道行く男のコートを脱がせようと、どんなに風を強く吹かせても、それはよりコートの必要性を増すだけ。結局は太陽の暖かさが男のコートを自然な形で脱がせたという話です。


伊良部先生は天才なのか、はたまた本当の馬鹿なのか、途中まではかなり疑問です。しかし、どの話でも最終的に自分の悩みの原因に自分で気づかせるところをみるとやはり初めからなにもかもわかっていたのだと思わざるを得ません。


悩んでいるときこの本を開いてください。間違いなく、悩みは消えます。伊良部先生と一緒に遊んであげてください。


私のイメージでは伊良部先生は西田敏行しかいないと思っていたのですが、阿部寛もなかなかよかったな。


続編の『空中ブランコ』もお勧めです。さらにパワーアップしていて、笑いどころが満載です。