『少年H』; 隠されている大きなテーマ | これは名作・迷作

『少年H』; 隠されている大きなテーマ







いやはや長い物語だった。でも考えてみると、戦争に関わる本を読んだのはこれが初めてかもしれない。

この本は、第二次世界大戦の状況を少年の目から書いたものである。もちろん脚色されている部分もあるだろうが、それはそれで十分面白いからいいと思う。


読んでいる途中、この本に書かれていることが現代にも通じるのではないかと感じた部分が多かった。

例えばメディアによる国民操作。これは読んでいて恐ろしくなった。国民の戦意を下げないために、激しい爆撃の被害も小さなものとして新聞の記事に載せる。広島の原爆でさえその扱いだ。信じられなかった。私たちは新聞やテレビのおかげで何でも知っているという気分になっているが、そのメディアが国の都合のいいようにしか報道していなかったとしたら。いや多分そうなのだと思うが、私たちは自分たちの感情でさえ、他人に操られていることになる。Hの父親のように、どんなときでも冷静に客観的に物事を見つめられたら問題はないのだが。

これは、日本の戦争論を根本的に覆すものを持っているかもしれない。特攻隊は国のために、家族のために敵に飛び込んで死んでいった。しかし、彼らが真実だと信じていたものは作り上げられた「嘘」だったら。

日本が起こした戦争を「聖戦」だといって神格化する人もいるが、その人たちはまだこの国家の「嘘」に縛り付けられている人なのかもしれないと思わずにはいられなくなった。靖国神社の問題も、中国・韓国との確執も、従軍慰安婦の問題も、日本は全て自分のいいように解釈するようにしている。新聞やニュースを見ればそういっているのだから間違えないように思えてくる。まさか自分の国が間違っていることを言っているとは思わないからだ。

しかし、私はこの本を読んで思った。これらの問題(靖国神社の問題も、中国・韓国との確執、従軍慰安婦の問題)が小さく扱われるのは、日本が戦時中原爆の被害を小さく扱ったのと同じなのではないかと。本当はもっと大きな問題で、韓国や中国が反日運動をしても文句が言えないくらい甚大なものなのではないかと。

真実は分からない。しかし国家ではなく個人として、世界を見つめられる心を持ちたい。


この本を教えてくれた人ありがとうございました。(^_-)-☆