乳がん検診についてのお話は、ピンクリボン運動とか、よく聞きますよね。
乳がん検診を受けるまでのキャンペーンは多いですが、検診を受けてからはどうなっているでしょうか?
現状では、乳がん検診を受けたあとの道筋が、整っていないと感じています。
私が、大きな病院で診療していた時に感じていた『乳がん検診に足りないもの』についてお話します。
乳がん検診で精密検査が必要と診断されて、乳腺外科に診察に来られる方は、とても不安が大きいようです。
診断されてから精密検査を受けるまでのあいだに、かなり時間がたっているからだと思います。
検診を受けて、異常所見があった場合は次のような手順が必要となります。
検診の結果表には、記号(AからFなど)の判定が書いてあり、何が悪いのか分からないことがあります。たとえば、『判定:C 精密検査が必要です』などです。
診察したときに、親切なところでは、紹介状(診療情報提供書)を書いてくれるでしょう。ただし、有料になることもあります。
精密検査を受ける医療機関を探して予約します。
どこで受けたらよいか分からないことも多いかと思います。『何科に行けばいいのかな?婦人科かな?』と迷います。
婦人科に受診すると、『婦人科ではなくて乳腺外科ですよ』と言われるでしょう。
乳腺外科を探すと、標榜しているところは、大きな病院が多いです。
大きな病院の乳腺外科は、混み合っていることが多く、受診まで何週間も待つことがあります。
やっと診察を受けても、当日はお話だけで、また別の日に検査を予約します。
検査を受ける日は、検査だけで終わり、結果を聴くために、また予約が必要になります。
この間、ずっと不安な気持ちが続きます。
乳腺外科の医師は忙しいことが多いので、検査結果で異常がない場合には、かなりそっけない態度で応対するかもしれません。
その結果、異常がなかったということで不安感は軽減すると思いますが、不満感が残るかもしれません。『病気がなかったのに、検診で異常と言われたのは何故?』
乳腺外科は、おもに乳がんの治療を行うところです。
検診の精密検査も行いますが、治療が多いとなかなか手が回らない状況です。
かなり専門的な病院は、放射線科などに乳腺専門の担当医がありますが、多くは乳腺外科の医師が治療と診断を行っています。
検診で異常が指摘されても、異常の程度はさまざまです。
本当の病気からマンモグラフィの軽い濃度の違いまであります。
検査を受ける方は、同じように不安ですが、検査を行う医師のほうは、病気がなければ多くの時間をさくことが難しい状況なのだと考えます。
この精密検査を行う医療機関が足りないのが、乳がん検診の現状の問題点だと思います。
乳がん検診を受けた後の道筋が不明瞭な点を解消する必要があります。
私が、このレディースセンターで診療することにしたのは、乳がん検診の精密検査をスムーズに行えるようにすることが大きな理由です。