君は私を見て

怒るだろうか。10分遅刻だと。


君は私を見て、

泣くのだろうか。寂しかったと。

あの時あの瞬間の君はいまだに

形を持たずにいまだ私の中にある。


8月の23の日だった。

あの日が境だった。

なんともない日だった。変わり映えのない、

浅い1日だった。

そうなるはずだった。


君は優しく私に囁いた。

「ごめん、相手がいるから」


よく昔、祖母は眠りにつく時、

海の奥底へと沈む感覚を覚えるのだと

言っていた。


真っ暗な世界にゆっくりとどっぷりと、

鉛のように重くなり、

下へ下へと降っていく。


まさにその感覚であった。


私は彼女を失うはずだった。

そこで何もかもが終わってしまえばよかったのだ


しかしどうしてだか、

私は、画一された「君」に

土足で踏み入ってしまった。


それを許す君に私は身体を預け、

私は君に染まる。


これこそが今ある最も最古の記憶であり、

私が今後、後悔し続けるであろう記憶、思い出の発端なのである。