「グルグルグル・・! ギャオー!」

 街を徘徊している時、どこからか獣の怒号が聞こえてきた。東京で・・? かなり近い。「グワーッ!」

 獣は僕の腹の中にいた。YES! リーゲーです。ちょっと前にレディーボーデンを丸ごと食ったのが、仇となったか? こりゃとにかく、ダムが決壊する前にトイレットへGOです。

 ちゅう訳で、大きなビルのトイレットにピットイン。「ガリガリバーン!」 激流です。僕は激流に生きる男です。「ウ~ッ・・」

 すぐに隣の個室に誰か入ってきた。「ギュルギュルポーン!」 おいおい? あんたも中々の土石流じゃねぇか? でも見知らぬ奴に、排便時のけたたましいノイズを聞かれるのは、ちょいと恥ずかしい。お年頃ですもんね。しかし、隣の大人物はそんな事、微塵も感じさせずドリルのような爆音を奏でます。便器壊してんじゃねぇか? 負けてられません。こっちもヴォリュームを上げるぜ。

 「キュイーン!」「ブホォン!」 JAMセッションです。ブルース・バトルです。こいつ、なかなかいい音だしやがる。マーク・リボーみたいだぜ。じゃぁ、こっちはスティービー・レイボ~~~~~ッ、ギュイ~~~~~~ッ、ウッ、ウワ~~~ッ!!! フゥ。

 僕は先に個室を出て、手を洗っていた。程なく男も出てきた。若いサラリーマンだった。鏡ごしにチラッと目が合った。本物の男同士に言葉はいらない・・。目でお互いの健闘を祈って別れた。

 外に出るとセミ達が、己の命を削りながら絶唱していた。

 俺たちの夏は、まだ終わらない・・。


ゆう