何年か前の晴れわたった春の日の昼間、オレは満開の桜の下を歩いていた。そこはちょっとした桜の名所で、多くの花見の客で賑わっていた。カメラを持った人も多く、綺麗な桜をパチリパチリと写していた。
「ちょっといいですか?」
高そうなカメラを首からぶら下げたオッサンが、オレに近づいてきた。
近くの桜を指さしながら、
「写真いいですか?」
桜の前に立つ自分(オッサン)を撮ってくれ、という事だろう。別にオレは急いでいなかったので、
「いいですよ」
オレがカメラを受け取ろうとすると・・・
「違う違う!」
オッサンは首を激しく振りながら、オレと桜を交互に指し示した。

「君ィ、桜の前に立ってくれたまえ」

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勿論、オレはそこから走り去ったよ。


KOU