昔バイトしていた所に、自称「遊び人」のオレより10歳ばかり年上の先輩、Nさんがいた。凄くマジメに仕事をするし、1日も休んだ事が無いのに、ニヤニヤして頭を振りながらカッター・ナイフ(仕事で使う)を持って走ったり、堂々とハナクソをほじったり、ヨダレを垂らしながらウヒャウヒャと気色悪く笑ったりするので、職場の女性(若い娘からオバサンまで)から洩れなく嫌われていた。

Nさんはよく、昼休みに本屋で風俗情報誌を広げ、ヘルスの電話番号を自分のメモ帳に堂々とメモって、公衆電話から予約していた。
(余談だがNさんは自称「遊び人」の割に「本番」は人生の中で2回しかヤッた事が無かった)

ある日Nさんが、横浜のヘルス嬢を本気で好きになったというハナシをオレにしてきた。深刻そうだった。
オレは言った。
「ケーキと花束でも持って行って告白しちゃったら?グッとくるかもよ。付き合えるかもしれん、いや、付き合える!」
勿論、冗談のつもりだった。

次の日、Nさんがひどく暗かった。仕事もはかどらない。
「Nさんどうしたの?」
「・・・・・・」
「体の具合でも悪いの?」
「・・・・・・・・・」
「本当にどうしたの?」

Nさんの目からどんどん涙があふれてきた。
「フラレちゃったよぉ・・・」
Nさんは次第に本格的に泣き出した。
「ウオォ~ン!ウオォ~ン!」
みんな何事かと集まってきた。
「KOU君の言うとおりにしたらフラレちゃったよぉ!ウオォ~ン!ウオォ~ン!ウオォ~ン!バカ~!!」

オレは非常に悪い事をしたと思ったよ。まさか本気にするとはな・・・・・・本当に悪い事をしたもんだ・・・。

KOU