オレは芸能人の誰々に似てるとか言われたり、間違われたりはしないのだが、前に一度ストレンジなオッサンに遭遇した。

スタジオに行くために、世田谷線のホームでイスに座って電車を待っていたら、向かいのホームの、家なき子とおぼしき汚いオッサンと目が合った。カップ酒をグイグイやりながら赤鬼みたいな顔で意味不明な奇声を発しながら股間をガシガシ掻いていた。
掻きながらオレに言った。
「お兄ちゃん、どっかで見た顔だなぁ!」
勿論無視。
「見た顔だよぉ、う~ん」
「う~~~ん、誰だ?う~ん」
「う~ん、あ?あの女みたいなぁ~、え~っと」
「あ~ん、クソ!チンポかい~なぁ、え~っと」
「テレビに出てるあの女みたいなぁ、チンポかい~なぁ!!」
「誰だっけなぁ~」
「え~っとえ~っと、誰だ?クソ!チンポかい~なぁ!!!」
おいおいオッサン、チンポ掻き過ぎだよ。ガシガシやり過ぎだよ。
オッサンはガシガシやりながら目を閉じた。ポクポクポク・・・
「チ~ン!!!」ニッコ~ッ、目が開いた。
オッサンは急に悟った様な晴れやかな表情になって、

「美川憲一!」

100Wのマーシャルをフルテンにした位のデッカイ声で叫んだ。
オレを指差していた。
こっちのホーム、向かい側のホーム、その場に居た人ほぼ全員が一斉にオレを見た。
「美川憲一!美川憲一!美川憲一!」
オッサンはオレを指差しながら興奮していた。勿論股間を掻きむしりながら。
オレは何も悪い事してないのに、悪い事をしたような変な気分だった。
「いいえわったっし~は~サソリ座のおんなぁ~~っ♪」
体をクネクネ動かしながら、オッサンはいい調子で歌いだした。そこそこ上手かった。

オレが電車に乗ってからも、歌い踊りながら嬉しそうにオレに手を振っていた。
チンポを掻きながら。(ドアーズの『太陽を待ちながら』へのオマージュ)

断っておくが、オレは美川憲一に全然似ていないし年も違う。

美川憲一といえば、昔TV番組『夜もヒッパレ』で
「さあ!次は日本のデヴィッド・ボウイ、美川憲一さんで~す!」
と紹介されたのを見た事がある。

おおいに異議アリ。

KOU