サスペンション(懸架装置)には大きく分けて、独立式と非独立式があります。

初期のクルマは車軸をリーフスプリングなどでシャシーに固定していましたが(リジッドアクスルと言います)、そのうち車軸を左右に分割して、左右のホイールがそれぞれ自由に動けるようにした、独立式サスペンションが現れました。

動きに自由度がないリジッドアクスルより、独立式サスペンションの方が乗り心地が良くなるということで、だんだんドライブシャフト(駆動軸)のない方のサスペンションは、独立式が用いられるようになりました。

1960年代の日本車、特にFR車は大半が、フロントが独立式で、リアがリーフスプリングによるリジッドアクスルでした。しかし、今ではFF車もFR車も、多くのクルマが前後輪共に独立式サスペンションを採用するようになっています。

サスペンションの役目は、①クルマの荷重を支える、②路面からのショックを吸収する、③ホイールの駆動力を確保する…の3つです。このうち②と③の目的にとって、独立式のサスペンションはリジッドアクスルより、より目的に適った形式と言えます。

独立式サスペンションには、様々な形式があり、それぞれに特徴があります。

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▼ストラット

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今のクルマで最も多く使われているサスペンションです。ストラットとはスプリングとダンパーとを一体化したもので、この上端をボディにつなぎ、アッパーアーム代わりとして、下を頑丈なロアーアームで支えます。日本車のFF車はストラットをリアにも使う場合が多く、マツダやトヨタはロアーアームを2本使った形式のFF車を多くつくっています。

ストラットサスペンションの特徴は、まず製造コストが安いということです。次にサスペンションにとって大切なストロークが比較的採りやすいことが挙げられます。もうひとつ、ストラットはスペースを確保する上で有利ということもあります。現代のFF車は、ほとんどエンジン横置きで、その横にトランスミッションがくるため、エンジン周辺のスペースに余裕がありません。その点、シンプルでスペースをとらないストラットは有利なのです。ただ、最近流行りのワゴン車になると、難しい問題があります。ストラットはリアサスペンションとして使うと、ストラットの上部が車内に張り出してきて具合が悪いのです。

▼BMW 3シリーズ(フロントがストラット、リアはマルチリンク【5リンク】式)
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ストラットに共通する欠点は、フリクション(摩擦)が出やすいため、乗り心地がちょっと硬くなることです。乗り心地が悪くなるというほどではありませんが、どちらかと言えばゴツゴツとした感じになります。

▼ダブルウィッシュボーン

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ダブルウィッシュボーンは一般に高級なサスペンションとされ、少し前までは、採用する車種も少数派でした。その構造は基本的にロアーアームとアッパーアームの間にコイルスプリングとダンパーを組み込んだ(なかにはダンパーを中に入れないケースもあります)ものです。

▼アルファ147(フロント:ダブルウィッシュボーン式、リア:ストラット式)
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ダブルウィッシュボーンの特徴は、タイヤの接地面を上手く保てるという点です。F1などレーシングカーでは極めて長いアームを持つ典型的なダブルウィッシュボーンのサスペンションを使っています。長いアームを持つのはアーム長が長ければ長いほど、タイヤの接地角度の変化を少なく抑えられるからです。

▼マルチリンク

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ダブルウィッシュボーンの考え方をさらに進歩させたのがマルチリンクです。これはダブルウィッシュボーンに、さらにもう1~2本リンクを加えて、タイヤの上下方向だけでなく、横からかかってくる力の制御も行うというものです。

マルチリンクの目的は、タイヤが常に路面に垂直に接するように、リンクを使ってタイヤを制御しようというものです。コーナリング時など、サスペンションに横方向から強いGがかかると、サスペンションがねじれて、タイヤのキャンバー角が狂い、直進安定性やトラクションに問題が生じます。そこでそれをリンクで制御しようというのです。

▼メルセデスベンツEクラス(フロント:4リンク・リア:マルチリンク式)
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もうひとつ、マルチリンクにはリンクによってコーナリング中のタイヤの角度を積極的に変えてやり、曲がりやすく、かつ安定させようという目的があります。オーバーステアのクルマはコーナリング中、タイヤのジオメトリーをトーアウト(外側に向く)にしてやると安定しますし、アンダーステアのクルマは逆にトーイン(内側に向く)方向にジオメトリーを変えてやると曲がりやすくなります。こういうことをリンクによって積極的にやってやるというわけです。

ちなみにマルチリンクと言っても、それはリンクをたくさん使うという意味であって、アルチリンクというサスペンション形式があるわけではありません。

▼トレーリングアーム

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トレーリングアームとは、ホイールを支えるアームの支点をタイヤの進行方向前方に置くサスペンションのことです。「トーションビーム式」、「車軸式」などとも呼ばれます。欠点は、横方向からの力に弱いことです。そこでこのアームを斜めに取り付けて、横方向にも少し強くしようとしたのがセミトレーリングアームです。

▼プジョー207(フロント:ストラット式、リア:トレーリングアーム式)
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以上のようにサスペンションには色々な形式がありますが、大切なのはその形式がそのクルマの目的に合ったものかどうか…という点です。

例えばワゴンにはスペースの関係上、ストラットは向きませんが、トレーリングアームはいい結果を生む…というように、ダブルウィッシュボーンは高級だからいいとか、ストラットは安物でダメなどという誤解はなるべく捨てた方がいいでしょう。クルマによっては、ダブルウィッシュボーンよりストラットの方が合っているという場合も往々にしてあるからです。

かつてのハンドリングブームのためか、日本の多くのユーザーは、サスペンションを走りの機能だけで評価しようする傾向があります。しかし、それは違って、知っておくべきは、サスペンションはハンドリングのためだけにあるのではない…ということです。

ken





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