違うんです。

一ヶ月半ほど前のことになりまするけれど、私のご本をいっちゃんようけ出してくれてる出版社、Rさんから、下記のような打診がおましたのや。

「おまはんの書いた本を何冊か電子出版させてくれ」

ちゅうてね。

電子書籍化は全部向こうでやるちゅうてるし、実売部数に応じて、いくばくかの印税くれるちゅうてますので、お断りする理由ものうて、「ほな、よろしゅおたのきいたします」ちゅて返事させてもろたワケや。

ワタイのばやい、電子ブックリーダーなんちゅう、無粋な機器は所持しませんので、どないなシロモノになるか確認不可能なんですけど。
(ついせんだって、キンドル版が発売開始になったみたいなんですけど、現在、フォーマットに問題が見つかって修正中で、買うことでけまへんのや。ありゃりゃ)

ワタイはね、システム開発なんぞを生業にしとうわりに、考えかたが古臭うてですな、やっぱり書籍ちゅうのは、紙媒体でないとどんならん思うてますのや。

装丁や手触り、ぬくもり、さらっぴの本のインクのカザやみな、ぜえんぶ揃うて書籍なんやね。

また、紙媒体のほうが、電子媒体より確実に後世に残りますわ。

絶版になったかて、古書として何十年も、ばやいによっては何百年も残るんや。

電子媒体なんぞ、あっちゅう間ぁに磁気の狭間に埋もれ去ってしまいますからナ。

データとして存在してても、顧みる人がおらんければ、ないのと一緒なんです。

「いつまで待っても来ぬ男(ひと)と、死んだ男(ひと)とは同じこと」

と、夜桜お七もゆうてはりまっしゃろ。

ただね、実用書は電子出版する価値あるかなあと思うたりするです。

書籍のぺいしをしらいて、机の上なんかに置きますと、じねんと閉じようとする力が働きまっしゃろ。

これがしじょうにウザいと感じることおますわナ。

プログラミングの参考書なぞを読みながらやね、パソコンで作業しとうおり、ぺいしが勝手に閉じてしもたら、そらあ腹立たしいですわ。

参考書をしもといてる状況ちゅうのは、なんらかの疑問や問題が発生して、はかがいかいで、焦っとうちゅう状況やろ。

そんなおりに、今見とうとこがパタンパタン閉じてしもたらどんならんやんか。

もしこれを読んだはるあんたはんがプログラマーやったら、そないな経験おまっしゃろ。

職業プログラマーはんやのうても、ワードやエクセルの参考書と首っ引きな事務方やったら、せえだい経験済みや思いますわ。

『開けたら閉じないシリーズ』なんてのが売っとうぐらいやもんね。

電子書籍やったらそんなことないやん。

できれば、サンプルコードなんかも、コピーペーストできたら便利ですけど、それやったらホームぺいしとして作りゃあええワケであって、その辺の切り分けが難しいとこやナ。

ま、キンドル版がめでたく販売に至りましたら、この場でご案内させてもらいますわ。

はい。

今日も元気で、ちゅと吸おう。

はじめまして。

闇夜を照らす、エイチな光、束谷斎(たばこくさい)です。

いきなりケッタイなおっさんが出てきたんで、びっくりしたはる人おるんちゃう。

私は、国家公務員として皆さんのお役にたたせてもろとるかたわら、煙草に関する怪談を収集してるニンゲンなんです。

煙草怪談集めた本やCDを自費出版する「逢魔が煙物語プロジェクト」の代表者もやってまんねん。

実装者クンとは幼馴染でしてね。けど、長いこと無沙汰してたんですわ。

あれは、忘れもせん阪神淡路大震災のときです。

束谷斎は、日本のビバリーヒルズ、西鈴蘭台に住んでましたんで、かの震災ではほとんど被害がなかったんですけど、長田区にあった実装者クンの家は全壊。そのとき勤めてた会社は長期営業休止になってもたもんで、とても生活でけへんから、二十万円ほど融通してくれ云われたんです。

毎月ちょっとずつでも返すさかいちゅうて、泣きながら、鼻水垂らしながら頼まれたんで、不憫に思って貸したげたんですわ。

ほたら次の日、とっととどっかへ逐電しやがってな。音信不通になってもてん。

めちゃめちゃ腹立ったけど、まあ、云うても二十万やし、困ったときはお互いさまや思うて、諦めたんですわ。

それから、一切連絡し合わんかったんですな。

ところが、一週間ほど前でしたかなあ。実装者クンから突然連絡があったんです。

「昔のことは水に流して、またつっきゃいしょやないか」ちゅうことでね。

お前が云うてええセリフとちゃうやろ思いましたけど、とにかく懐かしかったんで、そやなあと返事したわけです。

実装者クンが云うにはね、なんでも煙草をテーマにしたブログやってんねんけど、ここんとこネタに窮することが多て、困り果ててたところ、束谷斎が煙草怪談やってるのをどっからか聞いて、そりゃええわと連絡をよこしてきたらしいんですわ。

要は、ブログ上で煙草怪談やってくれへんかちゅうことやねんな。

「そんなん、面白半分でやったら霊障(さわり)あるかもしらんぞ」ちゅうて断ったんやけど、「ええやん。だんない、だんない」ちゅうて、あまりに軽くいなされたもんで、まあ、束谷斎としても怪談発表の場が増えるのは喜ばしいこっちゃからね、それやったらと引き受けたわけですわ。

ちゅうことで今日は、ご挨拶代わりに短い怪談(ハナシ)させてもらいましょか。

これは、怖い話と云うより不思議な、どっちかちゅうとオモロイ話なんですけどね、

他でもない実装者クン本人から聞いたものなんです。

実名ではあれなんで、ここではJクンとしときますけどね。

え? いまさら遅いがなて? さよか。

Jクンは葉巻からパイプ煙草からシガレットから、煙草と名のつくもんは全部好きなんです。ところが、家の中では自由に吸わせてもらえませんねん。奥さんや娘さんから臭い云われてね。特に葉巻ね。

実際のところ、葉巻はごおっつ、くっさいですからなあ。

それでは家の外、例えばベランダへ出て吸えばええかちゅうと、そう簡単にはいかんねやな。

彼の住んでるのはマンション、いわゆる集合住宅なんで、ご近所が窓を開けてた場合、葉巻の煙が侵入して、そらあ大迷惑になってまいます。

ここで、進退窮まったJクンに、ピピピと名案が閃いたわけですわ。

「せや。川の土手っぺりで吸うたらええねん」

Jクンの住んでるのは八王子市で、すぐ近所。マンションから歩いて二、三分のところに、淺川っちゅう大きな川が流れとるんです。多摩川の支流ですけど、れっきとした一級河川でね。

そこで葉巻を吸えば、誰にも迷惑かけんやろちゅうのが、Jクンの考えなんですわ。

時候によっては釣り人や散策者を見かけますが、なにしろ広い、っちゅうより長いかな、そんなんですからね。

もちろん、平日は仕事があるので無理として、休日、土手に腰をどっこいしょとおろして、ゆったりと葉巻をくゆらすのがJクンの愉しみになったわけですわ。

その日はJクン、ひとしきり葉巻を愉しんで、短くなった吸殻を道端にぽんとほかしたんです。

ここで一言云うておきたいんですけど、吸殻を道端にほかしたらあかんわな。

しかし、Jクンは、「葉巻はシガレットと違うて、人工物であるフィルターないで。もちろん巻紙もない。葉っぱを巻いてあるだけやから、そのうち自然に帰るがな。せやろ。しゃあけえ、しっかり消火さえ確認すりゃええねん」ちゅう考えみたいですよ。

はっきり云うて、どうしょうもないヤカラですわ。

そりゃ確かに理屈やけど、やっぱりあかんと思いませんか。そやさかい、あんなひどいめに遭うんです。

葉巻を道端にほかしたJクン、ニコチン酔いでフラフラしながら、自宅へ向けて土手っぺりをよちよち歩いてたんやね。

そしたら突然、頭のてっぺんにものすごい衝撃を感じたらしいんですわ。

本人は、高ぁーいとこから、加速度つけて、パチンコ玉が頭の上に落ちてきたみたいやったと云うてます。

Jクンが歩いてたのは橋のたもとでもないし、なにしろ土手っぺりで、かつ八王子市ですから、近くに高層ビルなんぞ建っとりまへん。

そしたら、Jクンの頭に当たった何物かは、どっから落ちてきたんや、ちゅうことになりますやろ?

側頭部やなくて、頭のてっぺんに落ちてきたんですよ。その何物かは。

横からやのうて、真上からなんです。

もっと不思議なのはね、その、落ちてきた何物かは、なんと葉巻の吸殻やったんですわ。

ついさっき、あっちゃのほうで自分がほかしたはずの葉巻の吸殻が、足元に落ちてますねん。

吸殻を捨てた地点からは、そうですなあ、百メートル以上離れてますから、吸殻が自分で歩いてこん限り、Jクンの足元に落ちてるわけないでしょ。

上から落ちてきたのは、その吸い殻やとしか考えられへんのですわ。

Jクンは、束谷斎に体験談を話しながら、しきりに首ひねってましたけど、そんなん答えはひとつですやろ。

吸殻を道端にほかしたバチが当たったんや。

それ以外にないですやん。

束谷斎の考えをJクンに伝えたったらね、彼どない云うた思います?

「うーん。ほしたら、今度はちゃんと川の中にほかすわ」

やて。

あんなやつ、河童にズズズと川ン中引きずり込まれて、しりこだま抜かれりゃええねん。

そしたら、悔い改めまっしゃろ。

なあ、そうちゃうか。

※注
本日の記事は、作家・実話怪談収集家である雲谷斎(うんこくさい)氏のオマージュです。

一回、失敗談がはさかったわけですけど、それではいよいよ『ベストブラウン・フラーケ』の感想としゃれ込みまひょかい。

結論から申し上げますると、美味しいわけですけど、どう美味しいのかお伝えせなあかんナ。

まず、しィを点けて燃えだしたおりは(葉っぱがしけっとうさかい、なかなかしィが安定せん。もし、ほぐさんとフラーケのまま三つに折りたたんで、おもむろに火皿へさして押し込むてな、ツウの吸いようしたら、燃焼が安定せんまぁに、吸引しすぎて顎がくたぶれてまうわ)、大麦とヨモギと生姜をまぜこちゃんちゃこして燃やかしたみたいな味します。

「なんや。全然美味しそうでないな」

まあそうゆいなや。

しとのハナシは最後まで聞き。

まあそれだけ、じねんの味がするちゅこっちゃ。ナチュロゥーなワケやね。

で、中盤にさしかかりますと、大麦とヨモギはどっかいきまして、ぴりりとくる(ヴァージニアやさかいしゃあない)中に、じわじわと甘みがしゅみだしてくるのや。

この、熟成ヴァージニア葉が繰り出してくる、フルー・テイテキな甘みをなんとしょうげんしたらええのかナア。

敢えて近しいくだもんを探すとしたら、この『ベストブラウン・フラーケ』のばやい、どうでっしゃろ。ビワかナ。

けっしてどぎつい甘みやないねん。

昔であれば、ちかばの山でなんぼでも採れたようなくだもんの甘みなんです。

ビワとか、ザクロとか、イチヂクな。

『ベストブラウン・フラーケ』のばやい、あんまし酸味は感じんので、やっぱビワですわ。

この不思議な甘み攻撃をいっぺんでも味おうたなれば、ほんまに、心の底から『着香モンなんぞもういらんし』思うからね。

ラタキアでさえ不要や思うもん。うん。

けど、しばらくすると、固く決断したこともすっかり忘れて、性懲りものう着香モン買うてくんねんで。

ほんで、「まだあらあ、このテキ。いつんなったらのうなるねん。いっそ、ほかしたげよかしらん」と、煩悶するワケや。

ポーチの着香モンは値安で手ごろでやっさかい、なんぞのおりの繋ぎに、ついつい買うてまうねんナア。


昨日のことですねん。

長いこと放置してましたら、さすがにカラカラにしからびてきて、エグ味が前面に出てくるようになってきましたのや。

えーっと。『ハーフアンドハーフ』のハナシなんですけどね。

「こりゃ、加湿したほうがええかもしらんな」

とか、誰にともなく同意を求めながら、コップに水張って、ヒュミドールをぽちゃんと放り込んで、ふふふんと鼻唄モン、水がしゅみこむんを待ってましたのや。

そのあいだ、うっかりハーフアンドハーフがはいっとう缶のふたを開けっぱなしにしとったワケや。

ヒュミドールやみな、だいたい三分間ほど水に浸けときゃ御の字なんですけど、仕事に熱中して、すっかり忘れてしもてナ、ついでに缶のふたを開けっぱなしにしてあるのも忘れてしもたのや。

ほんで、やってしもうたのです。

よそのことに気ィ取られて、なんぞの拍子に缶をフロアーに落としてしまいましたのや。

どないなったか想像つきまっしゃろ。

ええか。ふたが開いてたんやデ。

そうですそうです。

それへさして、葉っぱをぶっちゃかしてしもうたんです。

五分の一ほど残ってたやつの、そのまた半分がたこぼしてまいましたわ。

ちゅことはあれやで、一瞬にして残り十分の一になってもたワケや。

……。

計算合うとう?

合うとうやんな。

仕事場で発生した事故やったんで、不幸中の幸いでしたわ。

もしこれがあんた、自宅やってごらん。

「ほおれみなはれ。いつかそんなことやらかす思うてたわ。さっさとバキュームで吸い込み、バキュームで。これをシオに、もう煙草やめ!」

ちゅて、かかにボロカスゆわれとうとこや。

あーよかった。あーあむないとこやった。あービビった。

さすがに、しろうて缶に戻す気にもならず、しくしく泣きながらしろい集めて、ビニール袋に入れて、そのままていやあとほかしましたんです。

実はこの転覆事件にはある裏話がおますねん。

せんに開缶した『ベストブラウンフラーケ』を吸いながら、

『うーむ。うぅぅーむ。煙草の葉だけでこれだけ美味いんやデ。やっぱし、着香モン吸うっちゅう行為に、ちょっとも意味を見出せんナ、ワイのばやい。ふふふん』

なんぞと、えらそに、しじょう階段の手すりを相手に自説をしろうしてましたのや。

それに関連して、『まだハーフアンドハーフが大分残ってたんやナア。うーむ』ちゅうことが、ふと頭によぎったんやね。

ニンゲンのやらかすことに、真の偶然はありえへんからね。

つねになんらかの因果でいのいとうのがニンゲンでやっさかい、ワタイの潜在意識の中に『ハーフアンドハーフ、はようのうなったらええのに。しかも実際に吸わんうちに……』ちゅう、かなりおげしんな心根があってやな、それがために、無意識の裡に偶然を装い、缶をしっくりかやしてしもた思いますのや。

ゴメンな。ハーフアンドハフやん。


『サミュエルガーウィズ・ベストブラウン・フレーク』

ちゅうのを買い求めておったのですわ。

この記事ですけどね。

なんやかんやいいつつも、『ローランド・アフターダーク』もあとわずか(缶の底に微塵となった葉がわずかに残っとう状態)、『ハーフアンドハーフ』も残り四分の一を切った状態になりまして(スタッドオートマールスムはとおの昔にのうなってます)、いよいよ開缶のときが到来したワケやナ。

で、こんなん出てきよったです。

実装者流-ベストブラウン中身

どうも、サミュエルガーウィズのフラーケは見た目が悪いナア。

じぇんじぇん美味しそうにめえへんやろ。

まるでH・R・ギーガー描くところの、エイリアン宇宙船内部みたいやないかあい。

なんぼなんでも、もうちょっとらしい切りよがあるやろ思うけどね。

しかしながら、写真では分からんですけれど、なかなか喫煙欲をそそるカザはしてきます。

ええあんばいに醗酵して、甘いような酸っぱいようなカザが、ぷーんと漂うてきますわ。

なるほど、これが噂のヘイ(干し草)タイプちゅやつか。

そうゆやあ、せんに試した『ラットレー・オールドゴーリー』も、にたよなカザを放ってましたナ。

ゴリテキは、どっちかちゅうと洗練されたカザでしたけれど、こっちは野趣に溢れたカザなんです。かなり葉っぱが湿ってまして、なんや、しの当たらん、水はけの悪い場所で、自生しとった雑草が腐れてしもたちゅう感じです。

ほぐしとうおり、なんや手触りがきしょく悪いもん、だいたい。

指に水分が付着するとまではいきまへんけれど、じとおっと湿ってて、ぐにゃぐにゃしてて、悪る悪るう、ひやんとした手触りなのや。

あかん。書いてて思い出してもたわ。

あーきしょく悪ぅ。

けど、見た目やらカザやら手触りやらは、煙草の本質的なところやないからね。

問題は味ですわ。

さあて、どないな味がするんでっしゃろナ。

愉しみやろ。

ワタイも愉しみや。