新発売になっとりまっせ。

実装者流-カズベック

『カズベック・オーバル』

ロシア製。両切りレギュラーサイズ。二十本入り四百四十円。

T1.2mg、N1.0mgちゅうスペックです。

なんや、シンプルな中にも味わい深いパッケージデザインですな。

箱のかっこといい、色使いといい、ジタン・カポラルっぽいです。

ま、パッケージはどうでもええとして、問題は中身なんです。

これがまた、世にもめずらかなるかっこした煙草でな。

なんと、切り口が楕円形だんねん。

実装者流-カズベックオーバル

『オーバル』『楕円』でやっさかいね。

両切りのばやい、まんまるより、このかっこのほうが咥えやすいですわ。

ワタイらみたいな歳のニンゲンでもよう知らんのですけど、昔はこないなかっこした煙草、わりかたあったみたいでっせ。

煙草専門店屋さんのホームぺいしには、『ラムゼスセカンド、ゲルべゾルテ、キリアジ等、往年のターキッシュ・シガレットを今の時代に再現』と紹介してありまするデ。

ワタイのばやい、『往年の』とか、『今はなき』とか、『伝説の』とかゆう言葉にからきし弱いんです。

悔しいやんなんか。

「ふん。お前らそんなんで喜んどうけど、昔はあんな美味しい煙草や、こんなすごい煙草があったんやで。なんも知らんとから。アホ」ちゅうて、したり顔でゆわれても、そのおり生まれてなかったり、煙草吸えんかったりしたんでしゃあないガナ。

「そうゆうワレかて、一世代前のひとにおんなじことゆわれてたんやろ」と文句のひとつもゆいたなります。

なかでもいっちゃん悔しいのは、『バルカンソブラニー』ちゅう、とおに製造中止になった銘柄なんです。パイプ煙草ですけどね。

これはね、ラタキアものの名品と評価が高くて、ラタキアものは一般に『バルカンブレンド』ちゅて呼ばれてますねんけど、この『バルカンソブラニー』がその由来らしおまんの。

現行しょうしんの紹介記事に『バルカンソブラニーを彷彿とさせる』とか、『今はなき伝説の逸品、バルカンソブラニーに近い味』ちゅう文言がしょっちゅうでてきますんで、そのたんびにギリギリ歯ぎしりしとうようなあんばいなんです。

ま、想い出は常に美しいよってね。

けど、だいぶ気にしとうんでっせ。

その証拠に、せんだっても『バルカンソブラニー』が夢にでてきよったからね。

「お前誰や?」

「バルカンソブラニーでっけど」


パッケージ見たことないんで、名乗ってもらわんと分からへん。

とにかく腹が立って業が煮えてしゃあないんで、ワタイも将来、後輩におんなじようなことゆうたろと決めてまんねん。

あれ? 話がどんどんケッタイな方向へいっとるようですナ。

さて。肝心の味なんですけどね。

と、その前にカザいきまひょか。もうそら、魚のしもののええカザしますわ。堂々の無添加なんかもしれまへんな。

味はね。かなり変わってます。

なんや、金属の表面をねぶってるみたいな酸味があって、これがなんともいえんええ感じなんです。ターキッシュオリエントの独特な喫味やね。

残念ながら、中盤に差し掛かる前からかなりのピリピリがきまっさかい、そのおりは慌てて吸うたらあきまへん。ひと吸いで燃焼は二ミリまで。これを心がけなはれや。

可能であれば、加湿したほうがええかもしれまへんナ。

けど、オレンジ類の皮での加湿は厳禁でっせ。

せっかくの金属表面味が分からんようになってまいまっさかい。

いずれにせよ、今時のシガレットの味やおまへんわ。

やっぱりこれで、『懐かしいナア』と感慨に耽るおっちゃんおるんやろね。

ワタイはちょっとも懐かしいことおまへんけど。

どうでもええけど、このパッケージにはちょっと問題がありましてナ。

いっぺん開けたらあんた、フタが閉まりまへんが。

慌ててミニシガリロの空き缶に移しましたけど。

このへんも、なんや時代を感じさせるつくりでんナ。

わざとやろか?