部活を引退しても毎日のように来ていた先輩たちが来ないのは、何だか不思議な感じだった。
引退する前はほとんど来ないことなんてなかったし、引退してからも誰かは必ず来ていたから。
今日みたいに誰もいないということが、あまりにも非日常的に見えて仕方がなかった。
本来ならば、これが日常であって、いつもが非日常であるはずなのに。
俺たちよりも先にコートに来たりしている先輩たちが、やっぱりおかしいんだ。
そんなことを考えながら、コートから視線を外すと、通りかかった先輩の姿が見えた。
幸村…先輩と仁王先輩。
(いつもは幸村部長って言っちゃうけど、いい加減言い方くらい直せって怒られた。俺にとっては、いつまでもきっと部長は部長なのに。)
2人はコートに見向きもしない。
何かしゃべりながら歩き去っていく。
幸村先輩の手元にあるのは、あの人がいつも愛用している参考書だ。
確か、昼休みに廊下で見かけた丸井先輩も、単語カードらしきものを持って歩いていたっけ。
そして俺には気づいてくれなかったんだ。
今まではいつも一緒だった。
部活も学校生活も。
テストの時にはいつも俺のことばかり言って。
先輩たちがたくさん教えてくれた。
なのに
何で違うんだ?
今まではいつも一緒だったのに‥‥
見えない壁が俺の前にあるみたいだ。
どう足掻いても、俺は向こうへは行けない。
先輩たちの所へは行けない。
置いて行かれる感じがした。
どんどん先に進む先輩たち。
悔しい。
ムカツク。
イライラする。
そして
寂しい。
泣いてしまいそうだ。
今ここで、誰がいても関係なく、大声で泣いてしまいそうだ。
なんで俺とあの人達は違うんだ?
なんで俺はここにいるんだ?
なんで?
あの人達と違うところに立っている自分。
俺だけを独りにした運命の神様ってやつが、憎くて仕方がなかった。
3年生の中に一人混ざっていた2年生の赤也。
きっと3年生が引退した後、彼らの存在の大きさや重さを実感するんだね。
そこにあった自分の居場所。
そこに存在しない自分の居場所。
一人だけ違う学年であることを、きっと憎むに違いない。
そして、その思いが彼を強くしていくはず。
赤也はきっと、弱くもあり強くもある存在。
3年生達にとっては、そんな赤也が可愛くてしょうがないんだろうな。
3年生…受験生のみんな、頑張れ!!
秋華