2Rで武豊騎手が前人未到の4500勝を達成して大いに盛り上がった東京競馬場で行われた第19回ヴィクトリアマイルは、15頭立ての14番人気のテンハッピーローズが直線で鋭い末脚を繰り出し、6歳にして重賞初制覇を飾った。
2着に4番人気のフィアスプライド、3着に1番人気のマスクトディーヴァが入り、3番人気のウンブライルは6着、2番人気のナミュールはスタートの出遅れが響き8着に敗れた。
テンハッピーローズ騎乗の津村明秀騎手はデビュー21年目で初のG1勝利で、このレースでG1初制覇した騎手は北村宏司(06年ダンスインザムード)、松岡正海(07年コイウタ)、ダミアン・レーン(19年ノームコア)に続いて4人目となった。
また、テンハッピーローズの単勝払い戻しが20860円で、これはG1史上歴代4位の高配当となった。
(ちなみに単勝の最高配当は89年エリザベス女王杯を勝ったサンドピアリスの43060円。)
単勝200倍超えの伏兵馬が大仕事をやってのけた。
出走15頭中重賞を勝ったことのある馬は9頭だが、テンハッピーローズは“重賞未勝利馬”。
2歳時のアルテミスSでソダシの3着に入った実績があり、昨年夏にリステッド競走のレースを勝って軌道に乗ったかと思ったが、今年に入って重賞2戦は掲示板に入ることができなかった。
それでも勝ち馬とはそんなに離れてなく、うまく噛み合えば重賞勝てる力は持っている・・・
舞台を東京に移すと東京なら6戦して5戦は3着以内に入っている実績があるので、コンビを組んだ津村騎手も「左回りが良いことは分かっていましたから末脚を信じて、4コーナーを上手くいってくれたらと思っていました」と自信を持っていた。
その期待に応えるかのように先に抜け出したフィアスプライド(2番)を自慢の末脚で抜き去ると、津村騎手はゴールするまで無我夢中で手綱を押した。
後続馬もどんどん押し寄せてきたが、それを振り切りデビュー21年目のG1挑戦48回目でついにG1タイトルを掴んだ。
ゴールの瞬間、津村騎手は右手を高く上げて渾身のガッツポーズを見せた。
スタンドのファンの大声援に何度もガッツポーズする津村騎手にとって、この時間はまさに夢のような時間だった。
デビュー21年目の38歳、G1挑戦48回目で掴んだビッグタイトルに津村騎手の目には込み上げるものがあった。
川田将雅・藤岡佑介・吉田隼人・丹内祐次と“同期”である津村騎手。
競馬学校卒業時には騎乗技術が優れた人が選ばれる“アイルランド大使特別賞”を受賞し、今後の活躍が期待されていた。
しかし現実はそう甘くなくケガにも見舞われ、いい成績を残せない日々が続いた。
その間に川田騎手は日本人騎手として初のドバイWC制覇など今や世界で活躍する騎手になり、藤岡(佑)騎手は今年のフェブラリーSを勝つなど重賞でもコンスタントに活躍し、吉田(隼)騎手は現在落馬負傷で離脱中ながらもソダシなどでG15勝する活躍を見せ、丹内騎手はG1勝ちこそないが福島・新潟などのローカルで勝ち星を積み重ねて昨年関東ジョッキーの中で“フェアプレー賞”を受賞した。
津村騎手は19年カレンブーケドールでオークス・秋華賞・ジャパンCで2着に入るもG1タイトルには届かなかった。
特にオークスでは惜しい競馬で「直線がとても長かった」と悔しさを露にしていたが、今回もやはり「直線がとても長く感じた」と涙を流しながら振り返った。
それ以降G1に騎乗するもなかなか勝てず、ついには「もう勝てないかも・・・」と諦めかけていた。
そんな中で支えてくれたのは津村騎手の奥さんと2人の息子で、どんな時でも家族は父の頑張る姿を応援してきた。
家族の存在が大きく、妻と息子にどんな報告しますかの質問に津村騎手は「家族3人は今日サッカーの試合を観に行ってTV中継で観てると思うので、帰ったら抱きしめたい」と取材陣を笑わせた。
ついに掴んだG1タイトルだが、津村騎手は「やっとG1勝ちましたがこれで終わりではありません、またこれからどんどんG1勝ちたい気持ちが強くなってきたのでこれからも応援よろしくお願いします」とさらなる活躍に闘志を燃やしていた。
5年前、カレンブーケドールで秋華賞に挑む前に取材を受けた津村騎手はこう言った。
「勝負ごとに“絶対”はない」
たとえ人気が“ブービー”であろうとも、出走している限りは100%負けるというのはないことを証明させた。
15頭立ての14番人気が勝たれるともうどうしようもないわ・・・。
全くのノーマークでしたし、レース終わった後に調べたらこの馬もそれなりには頑張っていたんだね。
これはもうテンハッピーローズと津村騎手を褒めるしかありません。
予想ハズレても津村騎手がついにG1を勝ったことには自分としてもすごく嬉しかった。
自分とは誕生日4日違いで、(津村騎手は)小池徹平さんと同じ1986年1月5日生まれっていうのはインプット済みです。
同い年の津村騎手が勝つのはやっぱり嬉しいですし、同世代の活躍はやっぱり応援したくなります。
津村騎手は今週のオークスではフラワーCを勝ったミアネーロに騎乗するが、この馬もなかなかいい馬で2週連続G1制覇もあるかもしれないです。
今週のオークスは素直にステレンボッシュにするか一発狙って行くか・・・じっくり考えます。