50分近く話したのちに、精神科医は言った。
「で、どうしたいのですか?」
それまで混乱してもつれた糸を解すかのように語っていたが、
いざ自分がなにを目指しているかと聞かれると、まるではっきりしなかった。
4年前、2012年はゴールデンウィークも過ぎた梅雨のころの話である。
仕事に行き詰まり、モバゲーに現実逃避していた頃の話となる。
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そんな風なやり取りがかつてあったことを思い出していた。
で、どうしたいのですか?
それを明確にしておく必要がある。
要は自己分析。
「分析する自己と分析される自己が分裂してしまわないですか?」
という哲学的な疑問はとりあえず脇へと置いておこう。
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どうしたいのですか?
とりあえず今は、興味のあることは何でも手を出す人間になろう、と日々過ごしている。
知り合いだがまだ友人ではない某アパレル企業の選んだファッショニスタの趣味が釣りだと聞いて、
次回会う時には名刺を渡すついでに釣りのスターターキットの選び方を聞こうかと思っている。
あるいは、先々週末にガールズバーでダーツをしたらコテンパンにやられてテキーラ飲まされたので、
マイダーツを買ってダーツカフェに通っている。
で、今月から再開したヒトカラで自分の歌を録音して聞いたら死にたくなったので、
音楽教室のボイストレーニングにも通うようになった。
あと、ひげの脱毛を始めた。
ほかに、指の毛の処理をしていると、女の人と話すときにどうしても指先に目が行く。
そして指毛の生えている人を見ると、「あぁ、おおらかな人なのだな」
なんて口には出さないけれど思ったりもしている。
よくガールズの言う「清潔感」というのは、自分がケアしている当たり前のことを
鏡を見るように相手にも投影してみているのだな、というのが実感として分かった。
どれも今月に入っての話である。
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どうしたいのですか?
いいですか。このことを忘れてはいけません。あなた方一人ひとりの大事な一回こっきりの人生ですからね。一回こっきりですよ。二度も三度も生まれてこないんですから、一回こっきりの大事な今日このときだよ思うんですよ。こんな大事なときに、あしたもあればあさってもあれば、きのうもあったし、きょうなんてどうでもいいや、ではダメなんです。この一回こっきりの自分というもの、自分のいまの世界を本当に大事にしてください。ほかのことは忘れてもいいから、あなた方の生きているという大事さを、今度寝るときに一人でよく考えてください。
これは辻邦生が「言葉の箱」の中で口にした言葉である。
とても大事な言葉なので、紙に書いてここ2年仕事場の一番目につくところに貼ってある。
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で、どうしたいのですか?
自己分析の定番、将来何になりたいか、3年の目標は、1年の目標は、あなたの売りは、
などということは10日前ノートに詳述した。
それとは別に、
・興味のあることはとりあえずやる
・その中から自分にあったものを追及する
・理想的な人間関係はあり得ないと知る
・その上で他者と全力で絡む
この4点を現在進行形で意識しながら今月は生きています。
なぜって、過去は過ぎたことだし未来はまだ来ていないから、今しかないから。
「いやね、ですます調とである調の混在は国語的におかしくないか?」
という非難を受けるかもしれない、いやむしろ以前趣味で小説を書いていた時に友達に指摘されたことがあって、それはいいんだよ、門下生3000人がいたという佐藤春夫の「好き友」という随筆を読んでごらんよ。日本語はそんなに窮屈じゃなくて、自由に書いていいんだよ。
なんてことを思い出しました。笑