春になると思い出す風景がある。


菜の花畑を、やや恥ずかしそうな笑顔の女性が赤い籠を提げて歩いてくる。

画用紙に書かれた「まろん家の花見」の文字が映しだされ、幼い女の子がふたり、老夫婦に手を引かれて歩く姿が次第に小さくなってゆき…。


父は新しいものが好きで、古い長家住まいの決して豊かではなかった我が家には不似合いな、当時まだ珍しい8ミリの録画機と映写機があった。

休日の午後、父はいつの間にか撮影した家族の様子を突然にスクリーンに映した。そんな時の父の顔はまるで、イタズラ好きのやんちゃ坊主…驚いた家族の表情を楽しんでいたようだ。


それから、突然に善光寺さんが映し出され、登場するのは、小さな私…。

「まろんちゃん、何食べに行くの?」

母に問われ、

「おちょばは…おちょば食べたいわぁ」

と辿々しく答えたところで、観ていた家族は全員笑う。

そして姉が、

「あの頃は可愛かったのにねー」

と残念そうに言い、私が怒るところまで、台本でもあるかのように幾度も繰り返された、我が家の休日のお決まりの風景。


そして、夏は七夕飾りの下でシェーとポーズして、冬は近くの神社の坂でそり遊びをして。


そんな家族の笑顔が詰まった8ミリテープは今、仏壇の引き出しで眠っている。

我が家の当たり前の風景を刻んで。