金曜の夜。夕食にしようかと言う時刻、長男が帰省した。

仕事で担当の岐阜県を回ったついでにそのまま帰ってきたらしい。

 

母は俄然夕食の支度にやる気が出て、一品も二品も、冷凍庫を漁ってまでもおかずを作った、そんな夜。

食材の封を開けようと、硬めの袋へ包丁を入れたその時、アッと左手の指先に痛みが走り、真っ赤な血がシンクにぼたぼたと流れ落ちた。急いでキッチンペーパーで指先を押さえても、だくだくと流れる血は止まらなかった。

 

すると、食卓についていた長男が慌てて棚の上にある救急箱を手にしたかと思えば、

「なんだこれ、なんにも揃ってないじゃん!薬局に行って買ってくるから…。」

自分のカバンを手に、急ぎ足で出て行った。

 

涙がでそうだった。嬉しくて、嬉しくて。

小さな頃は優しくて穏やかな子だった長男は、高校に入って激変した。それからというもの、数年間は会話らしい会話もなく、今回のように怪我でもしようものなら、

「だっせーな。」

のひと言…痛みよりも悲しくて涙が出そうになったものだ。

 

ところが今回の彼は薬の着いた絆創膏?を買い、「これは痛いな…」などと独り言を呟きながら、未だ出血の止まらぬ私の人差し指に貼ってくれた。

そして、その後は、今の日常生活の様子、仕事の現況などを父親に話しながら、自分の人生の今後の展望まで語った。

 

私も食卓に着き、サラダのレタスなどをつつきながらひとり、にやりと笑えて来るのを堪えられなかった。長かったな…このひと時を取り戻すまでにかかった歳月は、長男の33年の人生の半分近くになるだろうか。家を飛び出し、どこで何をしているのかもわからなかった日もあった。まさかの事態も想像し、生きているのかと心配で心配で、涙に暮れた。

 

なんでもよくできて、「子育てで悩んだことなんてないでしょ?」なんてママ友から言われた日から数年後には、連日、日付の変わる頃に帰宅する高校生となり、注意すれば壁にパンチして穴を開け…泣いて、泣いて、泣いたあの頃。泣くこと以外、何もできなかった、あの頃。長かった。

 

そして、カバンから出してきた小さなミッキーの封筒を私に差し出すと、母の日のプレゼントだという。

荒れる前の中学生の時、帰宅の約束時間を随分過ぎて帰ってきた長男を叱ると、泣きながら小さな花束を投げつけられた、あの日。母の日のプレゼントに花屋を探していて遅くなったという理由を聴いてもやらなかった私が、後悔の渦中に思い出された。

「ありがとう!」

今度こそやっと言えた、プレゼントのお礼。

 

そんな、週末でした。

左手の人差し指はまだずきずきと痛むけれど、元気100倍で過ごしました(^^)

 

 

いただきました❣️ハンドクリームです。