昨日、勤務先のグループホームへ行くと、30代の利用者さんが早々にやってきた。

 

「ここのぞうきんなんだけどね…。」

使用した雑巾の処理の仕方についての相談。彼は、発達障害で潔癖症、生きづらさは学校でも就職しても、そして、このホームに来ても変わらず、ホームの年配の利用者さんとはずっと会話らしい会話はなかった。

 

そんな彼だが、昨日は出勤したばかりの私に、先ずは雑巾の処理について問い、それに続いてトイレの水漏れから我が家の今日の夕食に至るまで、30分は話が終わらなかった。

私はと言えば、トイレの水漏れも気になるけれども、先ずは今夜の夕食を用意せねば!と、米を研いだり玉ねぎを刻んだり、忙しく手を動かしながら彼の話に返事をしていた。

 

彼はそんな障害を持ちながら、某名門中高一貫校から有名国立大へと進んだと、最近知った。海外留学も経験し彼の未来は前途洋々かと思いきや、そうはいかなかったらしい。英会話教室の講師を勤めていたところ、なかなか厳しい環境についてゆけず精神病を発症…今のホームに入居してからも殻にこもり、他の利用者さんと話すことは殆どなかった。

 

ところが、春先に入居してきた男性とはぼちぼち話し、その男性に誘われて、一日ごろごろ生活を抜け出し某作業所に通い始めると、時折、私にも話しかけてくるようになった。作業所では彼の作った製品が高値を付けて売れるようになったという。

すると、お喋りも増え、口も利かなかったおじいちゃん利用者さんにも果物を買ってきたり…めきめきと音を立てるかのように、彼は変貌した。

 

そして、昨日。

仕事が進まない私の困惑を他所に、彼はしゃべり続けた。にこにこと笑顔を溢れさせながら。

 

その後の私の慌てぶりと言ったら…寒い中でも汗だくで夕食を間に合わせましたよ。メニューは、親子丼にカボチャのサラダ、味噌汁。親子丼の具がやや過熱し過ぎと言うか、煮込んでしまった失敗はあったけれど、みなさん、残さずに完食された。やれやれ。

 

彼は夜になっても自分の部屋とリビングを行ったり来たりで、ホームの不具合報告は続いた。でも、バレンタインデー擬きのチョコがけのドーナツも喜んでくれて、彼の笑顔はずっと、就寝時間まで途絶えることなく、自室とリビングを出たり入ったりしていた。

 

そして、今朝。彼を誘った利用者さんにそんな話をしていると、「懐かれているねぇ」とふざけたように言い、オドロキ、そして声を上げて笑った。

なんかもう一人息子が出来たみたいで、悪い気はしない。丁度年齢は、うちの長男と二男の間にピタッと入り込む彼。団子三兄弟ならぬ、凸凹三兄弟か?

 

私も俄然、やる気が湧いてきた。人間関係の基本はそんなものかもしれない。ちょっとした切欠で楽しくもなれば、険悪にもなる。

このまま楽しい時間の方へ転がっていきたい、帰り道でした。

 

今朝の空