日本のマスコミというのは、何故にこうも歪んだ情報を流すのか?
しかも、国際情勢・経済問題に関する一般的常識を持ち合わせているだ
ろうサラリーマン・OLが忙しく働いている時間帯のニュース番組において
(非難される事を恐れてか?)…
例えば、昨日夕方のCXの『スーパーニュース』!
金融関係者が勝手に命名したと思われる「キプロス・ショック」というセン
セーショナルなタイトルを臆面も無く見出し使い、にも関わらず現実に問
題となっているキプロスの国情については、いかにも視聴者をバカにしき
ったような次の説明「(貴方たちはキプロスなんていう国をよく知らないで
しょうけど←暗に私はそう感じた)実は、ローマ神話の美の女神ヴィーナ
スが生まれたとされる国です。」と簡単に流した上、本題についての解説
は解せないことばかりであった。(本当は、ギリシャ神話に登場する愛の
女神アフロディテの方がいいと思う。が、まあいい。)
その内容といえば、キプロスは自国の財政危機回避のため、EUから1兆
円の金融支援を受けることとなった。しかしその条件として、EUは銀行預
金に対する強制課税を通じて約7000億円を捻出することを求めた。キプ
ロス政府は取り付け騒ぎ等の混乱を回避するため預金封鎖を実施した。
これに対し預金者は、引き出しが可能なATMに殺到しているというものだ
った。(内容は確かこういうことなのではないか?)
ここまでは、すでに報道されていたはずだし、私にも理解できる。
ところが、問題のスーパーニュースにおいては、ここになぜか、因果関係
を明らかにすることなく、「これは、日本にも波及する可能性がある」と危
機感を煽る無責任な意見が付け足されていたのである。
そのニュースが語る日本の危機たるや、結局、安倍内閣が推進している
いわゆる『アベノミクス』が上手く機能しなかった場合において、物価上昇
に歯止めが利かなければハイパーインフレに突入してしまう恐れがある。
そうなれば、太平洋戦争直後に一度実施されたような預金封鎖なる措置
がとられる可能性がある。これは、即ち、現在のキプロスと同様な状況で
はないか?…という、こじ付けというか、推測の上に推測を重ねる幼稚な
論理展開の上に提起された問題であった。
本来、キプロスの財政危機と日本経済の関連を問題にするのであれば、
キプロス問題が、EU全体の足枷になって、ギリシャ危機と同様、日本が
再び円高・輸出不振の流れに推し戻されるのではないか、という不安に
その端緒があるはずだ。
また『アベノミクス』を批判するのならば、キチンと視聴者が納得できる形
で批判すべきある。ヨーロッパの小国の財政危機に絡めて、本件を論ず
るのは誤解を生むだけであって間違いである。こんな姑息な方法での批
判は、民主党だけにしていただきたい。今や、共産党でさえもこんな強引
な論法は採らない時代だ。
経済に疎い私が言うのも僭越だが、そもそも銀行預金に強制課税するな
どということは、法律的(財産権はほとんどの国において、EU加盟国では
殊更に保障されているはずだ。)にはありえないことである。それを敢えて
執行した背景には、それなりの論拠があったはずだ。
思うに、キプロスの銀行預金がなぜターゲットになったか。それは一つに
はギリシャ危機に際して、ギリシャ人は自らの資産を保全するため、大挙
してキプロスにその資産を移転したこと。キプロスの銀行が、タックス・ヘ
イブンとしてマネーロンダリングに利用された過去があること。また、ロシ
アの資金がその優遇税制を利用して流入しているらしい、など…。
つまり、キプロスではその経済規模に比して、銀行資産が不釣合いに膨
らんでおり、その資産の多くは、いずれは税的もしくは、なにがしかの負
担を負わねばならないマネーなのだから、この危機に当たって、協力しな
さいということなのではないだろうか?
(この推測に、私は自信が全く無いのだが…)
視聴者が求めるあるいは知っておくべき情報とは、このような一連の事実
群と、それらを繋ぐ因果関係である。したがって、ニュース報道に期待さ
れる使命とは、以上のように因果関係をもっと掘り下げることにあるべき
で、ただ闇雲に視聴者の興味を惹くであろう論点をくっつければいいという
ものではないと私は思う。(推測や仮定をするにしても、もっと蓋然性の高
い事象が、この世の中にはたくさん存在しているはずだ。近いうちにそん
な事を当ブログに書こうとは思っている。)
これが、我が国の報道機関の実態なのだろうか?
安藤優子氏・木村太郎氏ともあろう実績のあるキャスターが、かかる報道
に無頓着であったことに対し、私は大いに失望したのである。