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Flying Dutchmanのブログ

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前回のブログ─日本が誇るべき造形デザインで盛り込めなかった分野に、造船が

ある。
私は、最近知ったのだが、巨大タンカーの図体に相応するあの大きなスクリューも

最終的には専門の職工の手によって、理想的な形状に仕上げられるのだそうだ。

スクリューは、エネルギーの伝達効率に直接関わる船舶の最重要な艤装である。

その材質・形状は、速力を決定するのみならず、燃費性能までも左右する。また、

ひと昔前に国際問題にも発展したように、特に潜水艦においてはその静音性にも

関わる国家機密レベルの事項ともなりえる。
その重要部品の制作が、機械化・ロボット化が進んだ今日においても、なお人間

の感覚を頼りにせざるを得ない、とのことである。実験水槽やコンピューター・シミ

ュレーションで最良の解を引き出せるのだろうと考えていた私には、この事実は衝

撃的であった。認知科学・脳科学が進歩していても、人間の手のセンサーとしての

機能やヒトが持つ美意識などの領域は、未だに全てが解明されているわけではな

いようだ。
と、ここまで考えてきて、ふと不安になる。
と言うのは、ハイテク天下の現代においても、造船の分野には、先に述べたように

造船技術者の勘なり、経験なりに基づいて建造される工程が残されている。

とすれば、造船技術の進歩には優秀な人材の育成が不可欠なはずだ。
即ち造船先進国の座を得る為には、それこそ百年の長きに亘ってノウハウを蓄積

し、ヒトを育てねばならないことになる。しかしその反対に、技術が廃れる場合に

は、ほんの一世代で無に帰してしまうことを意味するのではないだろうか?


歴史を概観するに、海洋民族と呼ばれた集団は数多い。
古代のフェニキア、カルタゴ、そして「地理上の発見の時代」に先駆けて大西洋を

横断したといわれるヴァイキング…。では、彼らの造船技術の先進性は、現在何

処に継承されているのだろうか?
翻って日本の現状はどうだろう?、造船業が活況を呈していたのは、今や昔。

今や、造船王国の座は中国・韓国あたりが占めている状況にある。
造船業界の不振が、技術レベルの低下に繋がるという上記の推察が当たっている

とすれば、造船技術者の高齢化・技術の継承者の不足が、現場では悩みのタネに

なっているのかもしれない。
産業の空洞化が叫ばれている昨今、こんなところにも、いずれ顕在化してくる問題

がありそうである。