正義と善意は止まりにくい、『ザ・サークル』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『ザ・サークル

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】ジェームズ・ポンソルト

【主演】エマ・ワトソン

【製作年】2017年

 

 

【あらすじ】

 憧れのIT企業で働けるようになったメイ。最高の環境に身を置けることが、夢のように思えてならなかった。社長のベイリーは、新しいアイデアを次々と繰り出し、多くの社員から尊敬を集めていた。そしてある事件でメイは注目を浴び、社長からプロジェクトの推進役を任される。

 

 

【感想】

 世界をリードするIT企業の暴走を題材にした映画。モデルとしてはグーグルやアマゾン、フェイスブックやアップルを考えればいいのかも。世界最先端の技術と豊富な資金を駆使して、世界を力強く引っ張っていく。その勢いは暴走列車に例えてもよさそうで、果たしてコントロールが効くのか誰にも分からない。映画では、ブレーキを失い暴走する企業の姿をさり気なく、そして辛辣に見せつける。

 

 

 主演はエマ・ワトソン。あることがきっかけ社長の目に留まり、自らの生活をネットに公開する役目を担い、アイドル的な存在になっていく。世間の視線に晒され続ける役柄は、エマ・ワトソン本人と重なる部分がありそう。不特定多数の人間に注目され、あれこれと評価されるのは、相当なストレスに違いない。エマ・ワトソンの言葉や行動が、リアルに響いていた。

 

 

 そしてカリスマ経営者役のトム・ハンクスも、いかにもといった役柄を上手く演じていた。正義にしても、善意にしても、行き過ぎると厄介なものに変わってしまうようだ。映画では、説明責任や透明性が錦の御旗として取り上げられ、その旗のもとで多くの視聴者が暴走していく。正義や大義名分は、なかなか恐ろしい。怠け者の存在が、何だか大切で愛おしいものに思えてきた。もしかすると、怠け者は自動ブレーキ装置なのかもしれない。