【タイトル】『ポルト』
【評価】☆☆☆(☆5つが最高)
【監督】ゲイブ・クリンガー
【主演】アントン・イェルチン、ルシー・ルーカス
【製作年】2016年
【あらすじ】
家族と絶縁しポルトガルのポルトでその日暮らしを続けるジェイクは、フランス人留学生のマティに惹かれ、夜のカフェで彼女に声を掛ける。そして二人は、そのまま店を後にした。
【感想】
予告編での映像がとても印象的だった。夜のカフェで、主人公の男女が初めて言葉を交わすシーン。店の喧騒やカメラの動き、そしてぎこちなく女性に近付く神経質そうな青年。全てが不自然で作り物めいて見えるが、それが手作り感に溢れ、美しく思えてくるから不思議。監督やカメラマンの非凡さを、見せつけられるシーンだった。
ただ本編の内容は一筋縄では行かず、娯楽映画とは一線を画す。さすがに製作総指揮にジム・ジャームッシュの名前があると、安易な方向には進まないのだろう。映画がラブ・ストーリーであるのは確かだが、時系列が一定せずどこに向かっているのか、どこに到着したのかなかなか分からない。ただこの映画が、芸術的な作品であることは十分理解できた。
そして映画の舞台となっているのが、ポルトガル第二の都市であるポルト。タイトルに据えるくらいなので、どんな風に街を映し出すのか楽しみにしていたが、スクリーンに映し出されるポルトは、とても21世紀の街には見えなかった。仄暗い路地が多く登場し、昔ながらのヨーロッパの町を眺めている感じで、全編セットで撮っているのではないかと思えてくる。新しさやスピードに、対抗して作った映画なのかも。