職人技の軽やかさ、『カフェ・ソサエティ』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『カフェ・ソサエティ

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】ウディ・アレン

【主演】ジェシー・アイゼンバーグ

【製作年】2016年

 

 

【あらすじ】

 ニューヨークで父親の仕事を手伝っていたボビーだが、自分には向いた仕事ではないとニューヨークを飛び出し、映画プロデューサーの叔父を頼ってハリウッドへと向かった。そして叔父の秘書を務めるヴェロニカに一目惚れしてしまう。

 

 

【感想】

 1930年代のハリウッドとニューヨークを舞台にした映画。ただしゴテゴテと時代を作り込むようなことはせず、さらりと軽いタッチで映画を撮り切っている。全編から漂ってくるのは、ウディ・アレンらしさ。年一本のペースで新作を作り続けていると、余分なものをどんどん削っていけるのかもしれない。状況設定は必要最低限に、そしてとぼけた調子の会話をふんだんに盛り込み、ファンが待ち望んでいる世界を作り上げている。

 

 

 80歳を越えても、創作意欲や知性に衰えが見られない。シュワちゃんやスタローンのマッチョな体も凄いが、ウディ・アレンのハイレベルな知的活動も負けず劣らず驚異的。高齢者や、これから高齢者になる人にとって、この明晰さは励みになるはず。年齢に関係なく、第一線で勝負できることを静かに証明している。肩の力を抜いて、いとも簡単に映画を作る。キャストとスタッフが一丸となって熱い頑張りを見せる、邦画の現場とは対極にありそう。

 

 

 この映画では、ウディ・アレンをカバーしたようなジェシー・アイゼンバーグが、神経質で饒舌な主人公を完璧に演じ切っていた。ハリウッドとニューヨークで騒ぎを起こしながら、ラストではジンワリと切なさを浮かべていた。宴は必ず終わる、といった感じの寂しさ。喜劇に見えながらも、少し掘ってみると哀しさが滲むスタイルは、真似ようと思ってもできることではない。ウディ・アレンの軽やかな快進撃をまだまだ観続けていたい。