泥に匂いがしてくる、『哭声 コクソン』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『哭声 コクソン

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】ナ・ホンジン

【主演】クァク・ドウォン

【製作年】2016年

 

 

【あらすじ】

 小さな村で猟奇的な事件が次々と起こる。警官のジョングは、ただただ翻弄されるだけだった。しかし一人娘が異常な行動を取り始めると、ジョングは必死になって事件の原因を探り始める。そして山の中に住み着いていた、一人の日本人に疑いの目を向ける。

 

 

【感想】

 予告編から、暗くて重そうなサスペンスを想像していた。不穏な空気が漂い、殺人事件が次々と起こる。國村隼の出演も話題となり、映画館はかなりの混みようだった。しかし映画は、想像とはちょっと違ったリズムでスタートする。生真面目一本で、ぐいぐい押すのかと思っていたが、主人公の太った警察官が笑いを振りまく。リアルといえばリアルで、韓国映画らしい泥臭さを醸していた。

 

 

 人と人との距離の近さが韓国の特徴なのか、濃密な人間関係がちょくちょく現れ、見ているとグチャリという音が聞こえてきそうだった。家族関係、職場関係、友人関係、そのどれもが密着している。香港映画にある乾いた関係や、日本映画にあるフワフワとした柔らかい人間関係とは一味違う。人間の粘度の高さが韓国映画の特徴であり、魅力でもあるのかなと思えてくる。

 

 

 この映画は濃い人間関係を見せながら、事件を幅広く蒔いていく。ただあまりに広く種を蒔き過ぎたせいか、ストーリーが上手い具合にまとまっていなかった。どういう結末がやってくるのか気に掛かったが、唸るような着地の仕方ではなかった。それでも次第に募る不穏さや、後半に増していく緊迫感には魅入られる。ノリのいい祈禱も新鮮で、土着の根の深さを見た気がした。