継ぎはぎがちょっと目立つ、『岸辺の旅』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『岸辺の旅

【評価】☆☆(☆5つが最高)

【監督】黒沢清

【主演】深津絵里、浅野忠信

【製作年】2015年


【あらすじ】

 3年前に失踪した夫が突然部屋に戻ってきて、妻の瑞希に「自分は死んだ」と告げた。驚き戸惑う瑞希だったが、翌朝、夫と共に空白の3年間をたどる旅に出る。そして夫の空白の3年間を知ることになる。


【感想】

 死者が現実の世界に入ってくる話し。ジャンルでいえばファンタジーになるのだと思う。ただこの映画では、ファンタジー特有の甘さを控え、堂々とリアルな世界で押していく。死んだ人間が生きた人間の世界に入ってきて何が悪い、と言っている感じ。説明や小細工もなく、淡々とした足取りで話しが進んでいった。


 芸術度が高いといえばそうなのかもしれないが、不自然さが際立つ映画になっていた。もう少し非現実の世界の縫い込み方に、気を使ってもよかったのかも。特に、照明や音楽の使い方は、かなりわざとらしい。舞台劇のような急な暗転や、クラシックを多用した説明調の音楽は、ちょっと浮いていて恥ずかしさを覚えた。ギクシャクした流れは、どうしても気に掛かる。


 ただ主演二人の演技は安定感抜群で、自然な夫婦の姿を見せていた。場数を踏んでいるだけに、さすがといったところ。また深津絵里と蒼井優のシーンは、緊張感に溢れ妙にハラハラさせられた。芝居が真剣勝負に見えてくる。一方、エキストラの使い方は拙かったように思う。突然表れる素人っぽさは、大きなブレーキになっていた。安易に地元の人を使ってはいけないのかも。