【タイトル】『アルゴ』
【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)
【監督・主演】ベン・アフレック
【製作年】2012年
【あらすじ】
1979年11月、イランでイスラム革命が起こり学生らによってアメリカ大使館が占拠される。その混乱の最中、6人の大使館員が裏口から脱出しカナダ大使の公邸に身を隠した。だが6人を国外に脱出させる方法は皆無に等しく、革命軍に見つかるのも時間の問題だった。そこでCIAの人質奪還のプロであるトニーが捻り出したのは、映画製作を偽り6人を撮影クルーとして出国させる方法だった。
【感想】
ウソのようなホントの話しを映画にしている。娯楽を意識している映画なので、全部が全部ホントの話しということはないのだろうが、人質を救出するために映画製作を偽ったのは事実のよう。この映画のタイトル「アルゴ」は、撮られるはずのない偽りの映画のタイトル。「スターウォーズ」を真似たSF大作として、大々的にプレスリリースされたらしい。そしてこのプレスリリースが後々効いてくる。
映画を観ていて妙に納得したのは、アメリカが今もイランに対して怒りの感情を持っている理由。特に政府関係者にとってアメリカ大使館の人質占拠事件は、不愉快極まりない事件として記憶されているのだろう。イランに対する不信感は、今も拭えないでいるような気がする。とはいえ、イラン・イラク戦争中にアメリカやイスラエルはイランに武器を密輸していたというから、政治の世界は奥が深いというか底なしといった感じもする。
この映画は、テンポよくストーリーを絞り上げている。イランの民衆がアメリカに対して怒りを募らせ、脱出した6人に迫っていくのがヒシヒシと伝わる。もちろん映画の中ではイラン人を不気味な存在として描き、アメリカ側からの視点で語っている。理性のタガが外れたとき、人間はいとも簡単にダークサイドに落ちてしまうようだ。脱出劇としての緊迫感がラストに向かって凝縮していく。
そしてもう一方で、ハリウッドの映画製作のいい加減さやあざとさが、いい意味で光っていた。映画製作の胡散臭さを思う存分発揮している。スケールの大きいウソは、何だか気持ちがよかったりする。そしてこのスケール感が、良くも悪くもハリウッドの持ち味なのだろう。緊張の作り方と、リラックスのさせ方が心憎いくらいに上手い。ハラハラしながらも、安心して楽しめる映画だった。