衣食足らないと理想を語れず、『ブラック・ブレッド』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『ブラック・ブレッド

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】アウグスティ・ビリャロンガ

【主演】フランセス・クルメ

【製作年】2010年


【あらすじ】

 スペイン内戦が終結して間もない頃、山間の小さな村で暮らす11歳のアンドレウは、崖下で友達とその父親の遺体を発見する。警察は死んだ男と親しく、また共産主義者として村人から嫌われていたアンドレウの父親を逮捕した。狼狽する母親や親族たち。やがてアンドレウは、人間の醜悪な部分を何度も目撃することになる。


【感想】

 タイトルにある“ブラック・ブレッド”は黒パンのこと。黒いパンも美味しそうだなと思ったりもしたが、どうやら黒パンは貧しさの象徴らしい。日本風に考えれば、白米に対する粟といったところだろうか。この映画は、貧しさに光を当てている。後半になると、理念や理想よりも世の中銭や、といった声がはっきりと聞こえてきた。


 映画は残虐な殺人シーンから始まる。薄気味悪い森の中で格闘する二人の男。この殺人の意味はなかなか分からない。ようやく最後まで行き着いて納得できるという作り。かなり凝った映画だったとは思うが、きれいに技が決まったようには見えなかった。センスはあるものの、荒削りといった感じ。


 舞台は、は1940年頃のスペイン。山間の小さな村で起きる殺人事件で、住人たちの薄汚れた姿が少しずつ露になる。それを目撃するのが主人公の少年。ハッピーエンドなのかどうかは分からないが、少年の将来が不安になってくる。雰囲気としては、スペインの名作映画「パンズ・ラビリンス」目指しているようだったが、残念ながらイマイチ及ばなかったように思う。