濃い味付けで勝負、『臨場 劇場版』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『臨場 劇場版

【評価】☆☆(☆5つが最高)

【監督】橋本一

【主演】内野聖陽

【製作年】2012年


【あらすじ】

 白昼に起きた無差別殺人事件で、被告人は心神喪失が認められ無罪の判決が確定する。だが被告人を無罪へ導いた弁護士と精神科医が、何者かに刺殺される事件が起きた。検視官の倉野は、遺体の検死で不可解な点に気付く。やがてその疑問は、犯人を割り出す手掛かりとなる。


【感想】

 くっきりと分かりやすい映画だった。テレビドラマの成功を受けての映画化であり、テレビドラマのスタイルの踏襲が絶対条件だったのだろう。観客を振り落とすようなことはなく、懇切丁寧に繰り返し説明を施してくれる。典型的なストーリーと輪郭がありありと見えてくるキャラクター設定は、教科書通りで定型の枠組みだった。


 安定感は抜群と言えそうだが、反面驚きとは無縁に映画が進んでいった。予想を裏切らないことを重視しているのか、どこかで見たことのあるような話しが堂々と胸を張って繰り返される。さすがに軽く気恥ずかしさを覚えてしまった。映画では、予想を裏切られることを少なからず待ち望んでいたりするが、この映画は多分悪い方の意味で、予想通りに展開していた。


 ただ、実力派といわれる役者は揃っていた。舞台出身の俳優を好んで起用しているのか、舞台調の仰々しい芝居を何度も見ることができる。長いセリフを、長回しのワンカットで撮っていたりする。上手いのは確かだったが、映画としてのリアリティーはほとんど消え去っていた。演技の厚みと重さで勝負しているのだろうが、観ていて疲れてくる。しかも映画の中盤で犯人が判ってしまうのも辛かった。意表も突かれないし。