「ギャングスター・ナンバー1」も面白かった、『PUSH 光と闇の能力者』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『PUSH 光と闇の能力者

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】ポール・マクギガン

【主演】クリス・エヴァンス

【製作年】2009年


【あらすじ】

 アメリカ政府には特殊能力者を管理し、その能力を徹底的に利用する組織“ディビジョン”があった。キラは“ディビジョン”の実験施設から逃げ出し、運命に導かれるようにして香港へとたどり着く。香港では念動力を持つニックが、自らの能力を隠しながら生活していた。しかしこのままでは間もなく死に至ると予言され、運命を切り開くためキラを守り、“ディビジョン”と対決する決意を固める。


【感想】

 超能力もの。そんなジャンルがあるのか知らないけど、特殊能力を持った人間たちが攻防を繰り広げるというストーリー。普通、超能力者が主人公となる映画は、やや子供向けの内容に傾くことが多い。「X-MEN」や「ファンタスティック・フォー」などは、いかにもアメリカ製の味付けになっていた。分かり易くはあるけれど、正義の味方という主張がちょっとうるさくもある。


 その点、この映画では政府組織に対するアウトローたちの戦いが中心に描かれている。舞台も香港ということで、B級感もたっぷりと注ぎ込まれていた。アメリカを舞台にしていては、為しえなかった境地のような気がする。ハリウッド映画らしいカッチリとしたフォームとは決別し、自由度と作家性の高いアクション映画になっていた。


 やはり舞台が香港になるだけで、ダークな色合いが自然と高まる。そして細かな説明抜きに突っ走っていた。スケールは小さくとも、スピードとセンスに溢れ出て、ストーリーがどんどん加速していく。バカバカしさも何のその、信念の強さで最後まで押し通していた。とても潔い映画。観ていて気持ちいい。


 それと注目すべきは、天才子役といわれたダコタ・ファニングの成長ぶり。今までの可愛らしくしっかりとした役柄から、今回はパンクな少女に変貌していた。現場では相当にわがままな女優らしいが、これからが楽しみな女優でもある。スキャンダルは芸の肥やしなどとは言わず、何とか真っ当な女優の道を歩んでほしい。老婆心ながら、そんなことを考えてしまった。